アンのように生きる・・・(老育)

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かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

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魅惑の街ウダイプール

美沙がシンガポールにいた頃、ウダイプール、レイクパレスホテルに北川怜子は高知からはるばる遊びに来てくれた友人夫妻と共に二夫婦で滞在していた。

怜子が子宮癌の手術で一時帰国し、治療後デリーに向けて高知を発つ前に読み耽っていた本があった。
舞台美術家妹尾河童(せのおかっぱ)氏の著書「河童が覗いたインド」という旅のスケッチとエッセイがふんだんに盛り込まれた本である。

病院のベッドでも驚くほどインドが恋しかった。
デリーは今の病状の怜子にとって過酷な気候風土の地であるのに、まだ1年丸まる滞在もできずに、ろくにインドのことを知ることもできないまま、こうして実家の高知に戻ってきてしまったことが、悔しかった。

「絶対に戻りたい、」戻ったらきっと旅をして訪れたい場所が、妹尾氏の本の中でも特に心惹かれていた、ウダイプールのマハラジャの宮殿だったという「レイク パレス ホテル」であった。

湖に浮かぶそれはエキゾティックで贅沢な空間だと、イラスト入りで紹介されていた。
妹尾氏もまたこの有名ホテルに宿泊するのに苦労されていて、およそ2日間を要して、現地の他のホテルから移ることができたという。
そのくらい世界中の婦人たちから人気のスポットであった。

この短い休日に国内線を使って飛び、2泊で帰ってくることもぎりぎりできる場所柄であった。知り合いになった、P旅行社の日本語の堪能なスタッフに早くから頼んで何とか2泊予約してもらった。

しかし、妹尾氏と同じように、ホテル側は一応当日は泊まれないようないうことがあるが、決して諦めず、その旅行社の作ってくれた書類を見せて、ねばるように言われていた。
そんな気持ちで、このホテルまで、湖を渡し舟で渡った。

c0155326_22443444.jpgだが、案ずるより・・で、乗り込んだ四人は丁重に迎えられた。
「インドですんなりことが運ぶと、なんだか気が抜けた感じだわね。」
と、怜子は笑いながら友人の堅田良子に話しかけた。

「すごいとこやね~~。・・きゃーあっぱいね~(きれいという土佐の幼児語)ていいたくなるわ。」
と良子は素直に目を輝かせた。

「あんた、ここはねぇ、007の『オクトパシィ』の撮影も行われたとこなのよ。」

「怜子はくわしいねぇ。」と良子はお茶目に怜子の肩を叩いた。

「そうなんよ、入院中ずっと河童さんの本を読んでたから。」

「怜子は映画好きやものね。」

そんな会話をしながら、ゆっくりと案内された部屋はかなり立派であった。
インドの宮殿ホテルの調度品はなかなか立派な物を揃えていた。

スタッフの丁寧な応対もまた、良子は気に入ったらしく
「私マハラジャ気分味わって帰ろう・・」
と、すっかりマハラ二という妃のように気取っている。

道中の疲れをとらないといけない、ということで、先ずはそれぞれの部屋で仮眠した。
一応順調にここまでやってこれても、インド国内旅行はエネルギーも費用もかなり必要だった。
だがホテルのサービスは続き、お茶も運ばれれば、風呂のバスの使い方の説明もあり、女性にはエステティックもあるからと、忙しい。

だが、四人はかなり興奮気味で特に二人の女たちは仮眠もそこそこに、ホテルのロビーで元気な土佐弁のおしゃべりが始まった。

「こんな外国で思いっきり土佐弁丸出しでおしゃべりできると思わんかった。」
良子はすっかり気持ちが寛いでいた。

「私もここへ来たいとずっとねごうちょったがよ、けんど良子貴方とこれるなて、夢のようだわ。」

「まあ、ありがとうね、よう一人ではこれんとこでしょう。」

「そうやね、あたしたちも二人だけやったらこんかもしれん。」

「で、どうする?インドでこのまま生活続けるの?」
良子は単刀直入に怜子に問うた。
怜子は明るく即答した。

「そう、同じ死ぬんやったら、好きなことしておきたい。」

同じ病院勤めの良子には、気楽にそれを否定する気持ちは持ち合わせていなかった。


参考文献 妹尾河童『河童の覗いたインド』新潮社刊
登場人物は全て架空です。

 つづく
Commented by elliottyy at 2008-02-05 22:41
現代小説5位!!インド情報1位!すごいね!!
頑張ってる~~。
でも納得よ!
続きが気になるもん~。(笑)
Commented by akageno-ann at 2008-02-05 23:28
elliottyちゃん、あなたのブログからも見に来てくださってる方がいるようです。応援ありがとう
今のところ書きたいこといっぱいあって・・楽しいです。よろしく・・
写真も入れたよ。
Commented by まーすぃ at 2008-02-06 03:17 x
怜子さんは、インドに戻らなければならない気持ちでいっぱいだったんですね。元気を取り戻して、こうして、故郷の親友とともに有数のリゾートに…。どんなに素晴らしく輝いてる風景が目に映ったことでしょうか…

どうせなら…好きなことを…という、言葉で、泣きそうになりました…。


次が読みたいけれど…でも、ハッピーエンドであって欲しい…そう願っている自分がいます。


このまま怜子さんの時間が止まればいいのに!と思わず心に思いました。


Commented by akageno-ann at 2008-02-06 07:37
本当に・・このゆったりと流れるデリーの時間の中で怜子の時間をできるだけ伸ばしたい気持ちで書いています。
まーすぃさんの感想にこちらが感動してます。
あなたのブログへGO~~~
Commented by panipopo at 2008-02-06 07:51 x
まるで別世界のようなところに立つホテル。中もさぞかしマハラジャやマハラニをもてなしてくれるようなサービスなんですね。
怜子さんもこのゆったりとした時の流れに身も心も任せて、楽しい時間が少しでも持てたら、と思いました。

応援ポチっ☆

Commented by akageno-ann at 2008-02-06 07:53
panipopoさん、同時にあなたの美味しいお菓子のブログへまたお邪魔してました。こういうパレスであなたのデザートがいただけたら最高です。インドはお菓子は甘すぎるほどですが、レイアウトはかなり懲ります。応援ありがとう。
Commented by 揚羽 at 2008-02-24 21:17 x
こちらの書き込みは初めてです。

久々に覗かせていただいたら「インド情報1位」じゃないですか。
すごいですよ!

それにストーリーにドキドキしました。
インドのエキゾチックな雰囲気と物語がミックスされて
とっても魅力的な設定だと思います。
あまりPCに接続しないので、なかなか見られませんが
また次を楽しみにさせていただきますね。
Commented by akageno-ann at 2008-02-24 21:35
揚羽さん・・・ここへもほんとにありがとうございます。
お名前見つけてものすごく嬉しかったです。
気楽に読んでいただけるように書いてます。
たまに覗いていただけたらありがたいです。
皆さんのお陰で書けてます。どうぞよろしく。
Commented by G at 2008-02-25 18:04 x
「そう、同じ死ぬんやったら、好きなことしておきたい。」
同感です!そして覚悟を問われる言葉ですね!
Commented by akageno-ann at 2008-02-25 18:13
Gさんのブログも目が離せません。
何度も伺って読ませていただいてます。
Commented by G at 2008-02-27 02:15 x
 国内ではあまりやらないけど、僕値切り交渉すきです♪相手と楽しい時間に良くなります。
 「OH!たかーい!」
 「じゃあ、あなた、いくら?」
 「50000Rp」 まずは1/10位から^ ^
 「お店がつぶれてしまうよ!400000Rp」
 「わたし、それじゃ、にほんかえれないよ!」
 現地の人も下手な人は高い買い物するみたい。

 多少高いのはよいとして、言われた値段で買ったり、法外なお金ばら撒く日本人いますが、こちらには小額でも彼らには半月ぶんの給料だったりします。無知や好意でしたことが彼らの貨幣感覚を狂わせます。現地の人にとっても後で行く日本人にとっても困ったことですね・・
Commented by akageno-ann at 2008-02-27 07:57
全くそのとおりです・・Gさん
インドの日本人観光客のそういうところを見ながら
自分もまた日常生活で失敗の数々・・
今は懐かしい思い出です。
by akageno-ann | 2008-02-05 22:41 | 小説 | Comments(12)