アンのように生きる・・・(老育)

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かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

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終わらない夏

第123話
納涼七夕の会は日本と同じように7月におこなわれることになっていた。

暑さは和らいだとはいえないが、人間の体感温度として高温に慣れるということはあるようだ。

北川は教務主任として学校の周りの設備のことを全て把握していなければならなかった。

その中で毎日行う気温のチェックは、校内の庭におかれた百葉箱の中の温度計によった。

五月中旬の最高温度は摂氏49度まで体験している。

この7月においてもこの年は日中42度を温度計は示している。

その日は学校付近が一時停電で、その上学校の自動発電機ジェネレーターの調子も悪く
子供たちも教員も午後はぐったりしていた。

それでもなんとか授業を終えて、スクールバスのエアコンの効いた空気の中で皆仮眠を取りながら家路についた。

北川が家にたどり着くと妻の声はせず、サーバントのファトマが出てきて

「マダムスリーピング」という。

この暑さで調子が悪いのか?と不安になった。


「大丈夫?」すぐに寝室に行って北川は怜子に声をかけた。

「ごめんなさいね。なんだか疲れが出たのね。」

「無理するな、今日は学校も停電で子供たちもつかれきってた。」

「暑い日は本当に大変よね。まだまだ続くものね。この暑さは。私も大分楽だから
起きるわね。」

その声を聞いて北川は安堵してシャワーを浴びに浴室に消えた。

シャワーを浴びながら、このまま怜子が元気を取り戻せば、大したことにはならないだろうと
さして心配はしなかった。

その夜の食事も元気に食べた彼女だがアルコールは控えていた。

脇の下の小さなしこりは大きくはならないが、触るとにぶくごつりと反応し、ほんの少し痛みがあった。

怜子はあまり気にしないようにした。

大きくなれば、また本当に悪いものであれば状況が変わってくる。

その時は先に日本に帰ろう。

そう決心したら気持ちがふっと楽になった。


翌週は納涼大会が学校の小さな校庭で行われた。

もとは個人の家だったというこの校舎の敷地は個人にしては広いが、学校としては手狭なものだった。

そろそろ日本人学校の新築工事の話も出始めていたが、このこじんまりとした環境は目が行き届いて安心だった。

盆踊りの練習も教員の地域性が出てなかなかにバラエティに富んでいた。

太鼓は北陸地方の教員が土地の鬼太鼓を真似して子供に指導し、当日は保護者が協力して縫った半被にはちまき姿で、集まったインド人の客たちも大喜びしていた。

踊りは東京音頭と炭坑節、櫓の上にインドの子供も乗せて指導しながら楽しむという催しには
インドの人々が音感が良く、踊りもうまくてびっくりさせられたり、鳥を80羽ほどさばいて竹串に刺し、炭火を用意して焼き鳥にすると、飛ぶように売れて人気があった。

この夏の祭の呼び物はなんといってもバザーだった。

こういう場所で暮らしていると、不要なものはないはずだが、それでも各家庭様々な不用品が拠出されて互いに物品交換になるのか・・と思いきや
インドの人々が日本のその品を珍しそうに眺めて買い求めていったりした。

日本人同士はどうしてもだしの素や醤油が出されるとあっという間に買い手がついた。

インドの人々は靴下、ストッキング、セーターの類はこの暑さの中でも貴重品としてすべて買われていった。

その売り上げは学校の備品の修理などに充てられた。
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                                         夏とともに・・つづく

「annと小夏とインド」
更新しました。

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あらすじと物語の周辺
インドで出逢った、美沙と怜子は年齢の差を越えて意気投合し、日本時学校の教員夫人として駐在生活を続けていた。二人の共通点は『赤毛のアン』の熱心な読者であったことと、高知出身の怜子、夫の母親が高知出身の美沙、そして何より、デリーで一番のご近所同士だった。
8歳ほど下の美沙を可愛らしい後輩として面倒をみる怜子は子宮癌を患いながらも果敢に病気と戦って、1年をデリーで過ごし、次第に元気を取り戻しつつあった。

美沙はそんな怜子の心の支えになり、また彼女自身を慕って朝な夕なを共に過ごしていた。
怜子は最後のデリーの猛暑の夏を、美沙には2年目の夏休みを共にヨーロッパに渡って
避暑をしながらエネルギーを貯えていた。

デリーの残暑は長く厳しい、その中でサーバントたちとかかわりながら必死に生活する。

この小説の冒頭は・・こちらへ
Commented by crystal_sky3 at 2008-04-04 10:40
インドの夏は49度までに上がるんですね。
日陰に行くだけで大分温度差を感じるのではないでしょうか。
フロリダは湿度が高いので、雨上がりのむっとした暑さはたまりません^^;
バザーはやはりみんなが楽しみにしていることですね♪
意外な掘り出し物があったりと私も子供の靴やら本、食器などを買ったことがあります。
怜子さんのしこり・・・気になりますね。
早く検査を受けたほうがいいのに・・・。
でも、自分に聞かせながら不安を消し去ろうとする気持ちもよくわかります。

応援です★★

Commented by akkunne at 2008-04-04 11:00
何時もありがとう~
ポチ君にきたんだよね~(笑)
Commented by akageno-ann at 2008-04-04 14:46
クリスタルさん、ありがとう
今日はインドの夏を妙に思い出す日です
むわっとしたあの空気をちょっと感じたのです・・
何故かわからないけど・・
日本人のやることをとっても興味深くみていて
好意的に受け取ってくれたことも・・・懐かしいです。
Commented by akageno-ann at 2008-04-04 14:47
akkunneさん、だいじょうぶ?
無理しないでね・・
Commented by panipopo at 2008-04-04 15:12 x
想像がつかないぐらいに暑くなってしまうんですね~!
そんな中での授業を受け持つ先生方にも頭が下がりますが、子供たちも偉いですね。こんな経験をしたら、きっと忍耐強くなるに違いないと思いました。頭がボ~っとするのを集中するのは根気もいることですものね。

櫓も組み立てたっていうのが素晴らしいです。
おそろいのはっぴ姿も想像するだけで、お母様たちの苦労があったんでしょうね。きっとインドの皆さんも感動したことと思います。

う~ん、怜子さん、きっと静観するタイプの思慮深い方なんでしょう。私とは大違いだな、って苦笑い☆ 脂肪が固まっているだけかもしれませんものね。うちの夫の首にもしこりがあって、大騒ぎ(私が=騒々しいオンナなので)で、病院へ。。。そしたら、脂肪の塊で、全然放っておいても問題がないと言われました。(汗!)こんなふうであれば良いと願ってます。でもこれもすべてはLet it beですね。
応援してます♪
Commented by まーすぃ at 2008-04-04 15:17 x
温度の高さや湿度の高さは、ほんとに人の体だけでなく、精神的にも疲れさせる、ということがあるのかもしれませんね。

でも、子供達本当に偉いですね。そして教えてくださる先生方にも尊敬の気持ちでいっぱいです。

怜子さん、心配ですが、看護婦さんだったし、これぐらいは大丈夫、と判断されているのでしょうか。

バザーはこちらも同じように、食べ物が一番に売れていきます。

我が家でたまにガレージセールをするとインドの方が沢山来てお買い得品をゲットしてくださってとても嬉しいです♪ 応援ポチ
Commented by akageno-ann at 2008-04-04 16:04
panipopoちゃん、想像を超えた日がありました。
そんな日にメタルフレームのサングラスをかけて外出した私
こめかみが熱せられてひどい目に・・
インドの人はゆっくり動き出歩いてませんでしたね・・笑
インド人は踊り好きですね・・上手だし・・すぐ真似してたわ
静観・・・どうしても紺屋の白袴になってしまうかも・・
Commented by akageno-ann at 2008-04-04 16:05
まーすぃさん
インドの人々がお買い得品ゲットのお話・・アメリカでも
と!びっくりして笑いました。
いい人たちですよね・・ほんとに
私の友人のインド人夫人もきれいなお菓子の缶も売ってほしいって
言われて。もちろん差し上げたら喜んでくれました。
Commented by kaseno-sanpo at 2008-04-04 19:11
気候の違いも慣れるのに大変ですよね。
ぽち。
Commented by ちかた at 2008-04-04 19:46 x
インド映画をみると、リズム感の良さに驚きますよね。
炭坑節に東京音頭、私も子供の頃踊りまくってました・笑

看護婦さんだから、ご自分で判断してしまったのかも・・・。
でも横になるということは体調が悪いということですね・・・。
Commented by ママ at 2008-04-04 20:54 x
└(・∀・)┐ズンズン┌(・∀・)┘チャッチャッ
またまた来ましたよぉ~。
今から㌧㌧(;≌益≌) ノ|颯|㌧㌧㌧㌧
します~★
Commented by akageno-ann at 2008-04-04 22:17
風さん、気候って日本も最近厳しいですよね。
Commented by akageno-ann at 2008-04-04 22:18
ちかたちゃん「インド映画」みたの?
踊るマハラジャなんてすごいでしょう
そしてムービースターはとてもハンサムですよね
女性は彫りの深い美女で・・
看護婦、医師でも自分のことってどうなのかな?
Commented by akageno-ann at 2008-04-04 22:20
ママ・・寝かしつけられなかった?
颯さんに・・??
Commented by バブ at 2008-04-05 00:48 x
↓で私の感想文を素晴らしいなんて褒めてくださり、ありがとうございます(^^*)
annさんの意図とは違うとらえ方をしていないかなと毎回心配しつつ、結局感じたままを書いています。
どこを褒めてもらったんだろう?
自分ではよく分からないですね(^^;)

最近は決定的な表現が必ずどこかに出てくるので、できるだけ後ろの行を見ないように、少しずつ少しずつスクロールしながら読んでいるんですよ。

それにしても、怜子はどうして病院に行こうとしないんでしょうね。
今ここで北川と離れるわけにはいかないという思いがどこかにあるのかもしれませんね。

毎回ドキドキしながら応援しています!
Commented by ロッキン at 2008-04-05 02:41 x
インドの夏・・・想像もできない夏なんだろうなと感じました。
ただでさえ暑いインド、そこで精神的な打撃を受けている今・・・ と思うと、胸が張り裂けそうです。

怜子さんのしこりがとても気になります・・・ 早く病院に・・・と思ってしまうけど、怜子さんの気持ちもよ~くわかります。

今日も応援してますね。
Commented by CHIL at 2008-04-05 06:09 x
インドは気温40度越えは当たり前なんですね・・・。
玲子さんの病状がとても気になります。

夫についてインドまで来て、魅力ある夫の側に居たいという気持ちがあるだろうに、病状が悪化したら先に日本に帰ればいいと考えたらホッとする・・・なんて・・・、ちょっとわかる気がします。玲子さん夫と美沙との事いろいろ考えたり、インドの暑さにだったり、疲れが出てきているんですね。
そして病状も悪化しているように思えます・・・心配です・・・。
Commented by akageno-ann at 2008-04-05 06:52
バブちゃん、私も感想書くとき心配するタイプです・・笑
でも、ここでは心配しないで・・様々な読み取り方をしてもらえることが嬉しいのです。小説は前にも書いていましたが、こうして生の声を聞かせてもらうことが次へのステップにとっても影響します。
それが書かせる気持ちにつながるの。
あなたの感想もお話の源になることもあるの・・
どうぞよろしく
Commented by akageno-ann at 2008-04-05 06:55
ロッキンさん、あの頃、ここを訪れた友人がいいました。
「ここの夏は息をして生活しているだけで偉い!!」って息をして仕事をすることが最初はきつかったんですね・・私もそういう感じかわりました。
病院にいけばすぐよくなるというのでもないことを知っていたんですね。その感じ私もわかるです。
早めの治療は必要なんだけど、必要以上にがんじがらめになることもわかっていたんだと思うの。
Commented by akageno-ann at 2008-04-05 06:57
CHILちゃん、そうなのよね・・残すもののこと・・考えますよね
単身赴任させることへの不安もあるんです。きっと・・・
そしてね・・私のこれからの課題・・インドにいったからそうなったとか思いたくないんですよ・・これはどう表現していいかわかりませんのでよく考えて書きますね。
Commented by ママ at 2008-04-06 10:49 x
ポチポチしました~。
コメント書けないようだからこちらで(*´^ิ益^ิ`*)ニタァ
Commented by ann at 2008-04-06 20:26 x
ママ感謝してます。ありがとう。
by akageno-ann | 2008-04-04 08:16 | 小説 | Comments(22)