アンのように生きる・・・(老育)

akagenoann.exblog.jp

かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

ブログトップ | ログイン

日本人であることを背負う

小説をかいています。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
本日も応援クリックよろしくお願いします。

第187話
「愛情は先着順だと、ぼくは思っている。」

バラサブにそういわれて『そんなことはわかっているのだ』と心で反発しながら

深井亮介は日本行きの飛行機にいた。

しかし、バラサブの計らいで日本出張を命じられた深井であったが、家族をしっかりと見据えて
こい、という思いを理解していた。

バラサブは真剣に深井の将来を心配していた。

時代は確実に会社組織の中に埋もれて企業戦士として生き抜く時代から、個人の人間らしい家庭生活を守りながら社会人としての地位を確立する時代に移っていくであろうと、定年退職を間もなくに控えたバラサブはここデリーでの支店長をひとつの花道として与えられたと思っている。

だが、家族・・とりわけ子供たちの受験という大事な時期を妻一人に家庭を任せ、いくら生活費を稼いでいるとはいえ、心はかなりかけ離れていた。

自分がこのデリーの大役を果たして戻ったときに家族はここでの苦労は何一つ知らないのだ。
そしてその思い出話をする相手もなく暮らすのか?

それは身震いするほど寂しい構図だった。

だからこれから自分の子供の成長を共に妻と担い、日本での会社経営に地味ながら着実に関わっていくことこそ、新しい生き方ではないか・・・・

共にデリーで苦労な生活をして、ストイックに仕事をして、唯一の娯楽としてのホームパーティやテニスで若い深井が女性として成熟期を迎え、家庭婦人としても完成度の高い片山美沙に静かに魅かれていったとしても、それは自然のことのような気がしていた。

恐らくバラサブ自身ももう少し若いときであったら、このデリーでの退屈な自分の時間に、素敵な日本女性が現れたらストーカーの如く惹かれてしまうかもしれない。

人生のタイミングがもう一つ上手く合わないと、折角の若い人々の人生を台無しにしてしまう、ということを上司として管理能力を問われるのだ。

『愛は先着順』などと嘯く自分は、語彙力の不足に他ならない。

しかし、どんな言葉を羅列したところで、今一人で傷つき日本へ向かう機内にいる深井の心には届かないこともわかっていた。

自分で解決し、自分で答を見つけ進みだすしかない。

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

片山美沙は深井が日本へ出張していることを知り、また近々本帰国になることを聞かされて

アジャンタの旅の深井の逞しさを思い出した。

あの石窟院の特別な空気の中で素直に身をゆだねるように小高い山を登り
紀元前の風景を共に見たことを、何故か一生の思い出だと思っていた。

                                               つづく

c0155326_23364587.jpg

日本人会運動会での応援
クリックよろしく056.gifお願いします→人気ブログランキング
にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
こちらもおついでにクリックお願いします。
060.gif

「annと小夏とインド」
こちらも是非お立ち寄りください。







片山美沙は夫翔一郎の在外派遣教員としてのインドデリー赴任に伴い、中学校教員という職を辞して渡印した30歳前半の女性であった。

子供もまだおらず、デリーで始まった異文化の中での暮らしは戸惑うことも多く、一緒に渡った夫の同僚教員の家族との交流から始まった暮らしであったが、子供のいる家庭とそうでない家庭のここでの日々の違いから、1年早く同じ立場でここに居住していた、高知県出身の北川怜子(さとこ)の家と近くであることから、次第に親しく交流するようになった。

怜子夫妻にもやはり子供はなく、怜子自身は日本で看護士という職を退いて夫に伴われてきえいたことにも互いに共通点を見出していた。

しかし、怜子は1年目の終わりころに、子宮癌が発覚し、一時日本に帰国して手術し、抗がん剤治療を行っていた。

怜子は抗がん剤治療の半ばでその薬をインドに持ち込みながら、再びデリーに戻ってくるという強靭さをみせた。

北川、片山両夫妻は互いに打ち溶け合って、デリーの暮らしを二分するように、喜びも暑さによる苦しみも共に分かち合うのだった。

美沙の二年目の夏は二夫婦はヨーロッパに旅に出て、さらに親交を深めたかのようであった。

デリーの暮らしは厳しい暑さと戦いながら、インドの人々の文化やしきたりを学び、その中で強く生きていかねばならないことを美沙も、怜子もそれぞれの立場で感じていた。

とりわけ美沙は最初の酷暑の中で早期流産をしていまい、心と体に少なからず打撃を受けていた。

二人の女性は偶然同じ、互いの愛読書「赤毛のアン」のシリーズ本を心の支えに、インドの暮らしを自分の中に取り込み、時に心揺るがせながらも勇気を持って生活していく。

生まれ育った環境も、年代も違う二人の日本女性が、厳しい環境、異文化の中で、次第に寄り添おうとする姿を、そして癌という病のためにまた確実に別れが迫っている二人をインドの風物と季節のうつろいと共に描いている。

三年の任期をあと数ヶ月で終えようとしていた北川夫妻に、訪れた試練、それは怜子の癌の再発の恐れと早期帰国の決断を迫られた。

怜子という一人の強い意志を持つ女性の力によって支えられていた片山夫妻と怜子の夫北川の葛藤、死を決意したように一人で日本に帰ろうとする怜子本人の思いをもって
終章に入る・・・・・・
そしていよいよ怜子は日本の実家高知県に帰る。
病気を心配して美沙は自分の健康診断をかねて同行する。

一人でまたデリーに戻った、美沙はいよいよ最後のインド生活の年を迎えようとしていた。

そしていよいよ3年目に入っていく。
この小説の冒頭は・・こちらへ
トラックバックURL : http://akagenoann.exblog.jp/tb/9349931
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by さりすけ at 2008-08-02 03:01 x
そうですか〜。バラサブさんもそういう目で深井さんを見守ってくださってたんですね。なんというあたたかい人。今回でとてもファンになってしまいました。本当に人生って自分ひとりの気持ちしか直接わからないんだけど、まわりにいる人々の思いや自分の思いが交差しながら助けたり助けられたりしながら展開されていくんですね。

深井さん、がんばれ!私もカスピアン王子は憧れとしてとっておきますから。(って関係ない?)
Commented at 2008-08-02 06:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-08-02 06:31 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-08-02 06:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ぱにぽぽ at 2008-08-02 10:38 x
バラサブさんの「愛は先着順」という言葉に感動しました。
でも、そんなふうになかなか言えないですよね。すごい度量のある方だと思います。

ここにも日本人の単身赴任のお父様たちはたくさんいて、とっても哀愁が漂ってます。
もちろん職場ではきびきびと働いているのかと思いますが、週末にテニスを一緒にするときに、みな食事内容を聞いてもかわいそうだと思いますよ。
みなすごく家族のために働いているけれど、子供の手が離れて、悠々自適の奥方たちも、こちらには1度も来たことがないという方々も多いです。
なんだか、こうやって家族や夫婦の絆がもろくなっているのかな、日本の家庭は、って思っちゃいます。

家族や夫婦の関係は当事者しかわからないけれど、やはりお互いに努力する必要がありますよね。
こうやってバラサブさんのお言葉、まったく同感です。
深井さんもそれはわかっていると思います。
もちろん美沙さんの気持ちもわかります。やはり人間だから、好意を持つのは自然なことかな、って思いました。
で、翔一郎さん、もう少し妻を労わってあげてほしいです!愛情表現でも。
Commented by akageno-ann at 2008-08-02 10:39
さりちゃん・・感想嬉しかった
ありがとう・・・・
ファンになる人物を描けた事がうれしい・・
Commented by akageno-ann at 2008-08-02 10:41
鍵コメ二つのE様
ありがとうございました。私の友人に同じNameの方が
いましてそちらにメールしてましたら違うということで・・
びっくり・・よろしかったら今度鍵コメにURLなどお知らせください
感激してます。素敵な感想に!
Commented by akageno-ann at 2008-08-02 10:41
三番目の鍵さん・・はい!行ってきます。
ありがとう
Commented by akageno-ann at 2008-08-02 10:44
ぱにぽぽちゃん・・現地リポートもありがとう

そうなのね・・・それぞれの家庭の事情ありますね・・
しかし相対的にみて・・持つ感想というのがあります。

日本の家族のあり方をとっても心配することも
ありました・・
心配されることもありましたし・・

海外に出ると余計に顕著になることがあります・・
さてそろそろ翔一郎の登場です・・
Commented at 2008-08-02 14:56
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by CHIL at 2008-08-02 15:09 x
人に惹かれる気持ちは、恋愛関係なくてもありえることなんですよね。この先、深井さんとの再会があるのか、美沙さんの心の中にひとつの思い出としてしまっておくのか・・・それはわからないですが、「わからないまま」がいいような気もします。
深井さんが美沙さんに惹かれる気持ちはよく分かりますが、こうやって年上のバラサブさんの計らいによって家族の下に帰っていったこと、私は内心とてもホッとしています(^^)
昔「マディソン郡の橋」という映画が流行りましたよね。年配の女性から支持があったようですが、当時私はまだ結婚前の学生。少々潔癖な考え方でこの映画を否定してました。この主人公達が自分の親だったら・・・どんなに嫌だろうと。映画に感情移入しがちで、とても不快に思った若かりしの私・・・(^^;)
今あの映画を見たらどう思うでしょう。そしてもうちょっと歳を重ねたら・・・。今はちょっと大人になったから、そんなこともあるのかも・・・?なんて(^^)ウフ
でも私には小さい恋人達がいるので、今はこの子達に勝るものは何もありえませんが(*^^*)
・・・長々とすみません。この小説の愛読者です♪
Commented by まーすぃ at 2008-08-02 15:29 x
私もタイミングってあると思います。

中島みゆきの歌で。。。♪長い〜髪〜を、お下げにしていた頃に〜あなたに会えれば良かった〜彼女よりも少しは〜やく〜♪というのがありますが、若い頃、これから出会う人に期待している人の気持と、もう色んな人に出会い尽くした(といったら変ですが)男の人を見る目を養って来た女性ほど、気持のまっすぐな、素敵な男性に出会った時に。。。もう少し出会いが早ければ!と思う事があるのではないでしょうか。。。

と。。。今日はちょっと、優等生じゃない(バッドガール的な)コメントになりました。。。笑。

お互いに惹かれ合っていても、一線を越えるか超えないか。。。それって大きな意味があるんだと思います。

超えないからこそ、一生胸に刻まれる恋心ってあるんではないでしょうか。。。


Commented by akageno-ann at 2008-08-02 22:12
CHILちゃん
わからないまま・・そうなんですファジイな感じがすきです。
マディソン群の橋・・読みましたし。見ました映画を
そしてロバートジェームズウオーラーの作品では『スローワルツの川』がインドを題材に入れていてもっと印象深かったです
何故かすごく泣けたことを思い出しました・・・
もう随分前です。
思い出させてもらって感謝です。

昔読んだものをきっとイメージの中に持っているのかもしれません・・
小さな恋人・・そうですね。
美沙もそういうときが必要なんだと思うの・・
Commented by akageno-ann at 2008-08-02 22:16
まーちゃん・・
すっごい大人の女性ですね。

男性はうんと若いときにはちょっと世間を知っている人、女性として完成度の高そうな人に憧れ、また自分の家庭が出来上がったときや、年をとると、少し若いエネルギーに触れたくなったりがあるようですが、女性は確かに純粋なものに弱いと思います。

深井は美沙の何に一番深く惹かれたのでしょうか?

そこのところをもうちょっと掘り下げようか?と思ってます・・
Commented by crystal_sky3 at 2008-08-03 00:39
なんだかとってもドラマチックな展開になってきましたね。
きっと深井さんは日本へ帰るのだろう・・・とは思っていましたが、
上司はやはりしっかりと分っていたんですね。。。
今の企業戦士はおそらく家庭よりも仕事を優先順位においている
ことが多いと思いますが、深井さんへの上司は家庭の大切さをちゃんとわかってらっしゃる稀な存在だと思います。
おそらく大半の人はそれをわかっていながらどうしようもなく
仕事に流されていると思うんですよね。
きっと深井さんはこれでよかったんだ・・・と思えるときがくるんじゃないでしょうか。
Commented by akageno-ann at 2008-08-03 06:42
クリスタルさん、そうなのでしょうか・・今の人々もまだまだやはり
仕事優先・・私の友人のご主人は結構家族を優先された方があって、感動させられることがありました。
もちろん寂しそうな単身赴任もあったけれど・・
ご本人たちはそうでもなかったのかもしれません。
ホームパーティは多かったです。
そのときにお話したことは日本ではありえなかったバラエティに
富んだものでした。

>>おそらく大半の人はそれをわかっていながらどうしようもなく
仕事に流されていると思うんですよね。・・・・
きっと深井さんはこれでよかったんだ・・・と思えるときがくるんじゃないでしょうか。

ほんとにそうですね・・ありがとう
by akageno-ann | 2008-08-01 23:32 | 小説 | Trackback | Comments(16)