アンのように生きる・・・(老育)

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かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

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掛け違える釦

日本の関東の夏はあっという間に終わりを告げるのでしょうか?

朝方はもう肌がけを胸まで引き上げるような涼しさを感じました。


小説を書いています。
夏の長い暑いデリーで駐在する日本人の生活を描いています。
人物はフィクションですが、インドやその周辺の生活は風物詩として
描いています。

たくさんの世界中で頑張っている日本人への敬愛をこめて
また世界の素晴らしさと そこから見直す日本の良さについても
描いています。
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筆者ちょっと高知へ帰ってきます。

高知はこの小説のもう一人のヒロイン北川怜子が子宮癌の闘病をしながら
間もなく日本に帰国する美沙に会えるのを楽しみに待っています。

北川怜子と美沙にまた焦点を充てながら・・・夫婦や友情、そして様々な愛情に
ついてもう少しお付き合いをいただきます。

今日から自動更新を試みます・・写真など愉しんでいただけましたら嬉しいです。

第198話

片山美沙は夫翔一郎をネパールに送ってからベッドに横たわって発熱した体に
不安を感じている。

まさか妊娠ではないと思いながらも、もしそうならば今度こそはしっかりと育てたいという
思いもあるのだ。

シャンティがベッドルームをノックした。

「マダム、ジャパニーズスクールマダム、カム」

なんとも日本語的な英語に呆れながらも

誰だろう・・と・・・重い体を引きあげて部屋着のまま玄関にいる来客を迎えた・・

よう子だった。

久しぶりの訪問だ。

「まあ、美沙さん如何?」

「よう子さん、どうして?」

「いえ、お一人で、どうしていらっしゃるかと思って今娘をキンダーガーデンに送ったので
寄ってみたの。」

美沙はこの訪問者が自分への大きな好奇心できているのはわかっていたが、
気も紛れることだと思い、歓迎してシャンティにお茶をたのんだ。

よう子は日本の有名な栗落雁を土産に持ってきた。

「ゴメンナサイネ、こんな格好で。なんだか熱っぽくて・・
風邪ではないと思うのだけど・・移したらいけないから少し
離れて座るわね。」

そう美沙はよう子を今に通した。

「お疲れが出たの?片山先生は元気でネパールにいらしてるんでしょう?」

「ええ、大丈夫だと思うわ。」

「デリー3年目にしてこの夏の終わりに疲れが出たのだと思うの。
ここまで大きな病気もせずにほっとしたのかもしれないわ。」

よう子も大きくうなづき

「そうね、うちもお陰さまで子供も私たちも元気に過ごせてよかった。
山下さんの家ではデング熱もなさったりお子さんが骨折したり大変だったものね。」

山下家は同期に赴任した教員一家である。

三組の中では夫人の文子が一番大人しく静かに暮らしていたが、この夏の間に
かかったデング熱という蚊が媒体となって高熱を発する病にかかって少々大変な
思いをしていた。

幸い子供たちに移ることもなく過ぎたので皆ほっとしたが、高熱のあとの文子の
窶れは大きかった。

彼女には元気な男の子が二人いて、赴任当初に家の大理石の床で転んで
下の男の子が骨折をするという不幸もあった。

「もう今さらデング熱の季節でもないのだけど・・疲れかしらね・・」

よう子も少し不安そうになってきた。

「美沙さん、私たちここでの暮らしはお互いにいろいろな変化があって大変だったけれど
最後はまた仲良く一緒に帰国しましょうよ。」

病を得て美沙のだるい体にはその言葉は優しく聞こえた。

「ありがとう・・ご心配かけます。最後まで愉しまなくてはね。」

「片山先生、寂しそうよ。美沙さん、少し日本人会で活躍しすぎじゃない?」

「とんでもない。 常に主人と一緒よ。」

「でも、あなたの音楽活動はどうしても目立つと思うの。
それに先日帰られた深井さんとはどういうおつきあいだったの?」

来た来た、彼女の詮索はここにあった。

「一緒に旅行したのはとても軽率でしたね。
あのとき主人が調子を崩して私と深井さんたちがアジャンタの秘境を
旅したからでしょう?」

「いえ、ただ先生があの頃から元気がなくなったように思ったの。」

「そうなのかなあ?夫婦としてそうねえ・・私たち何か心が離れているのかしら?」

美沙はそこで正直な思いを吐露してしまった。

                                             つづく

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ネパールの絵葉書から・・老夫婦





片山美沙は夫翔一郎の在外派遣教員としてのインドデリー赴任に伴い、中学校教員という職を辞して渡印した30歳前半の女性であった。

子供もまだおらず、デリーで始まった異文化の中での暮らしは戸惑うことも多く、一緒に渡った夫の同僚教員の家族との交流から始まった暮らしであったが、子供のいる家庭とそうでない家庭のここでの日々の違いから、1年早く同じ立場でここに居住していた、高知県出身の北川怜子(さとこ)の家と近くであることから、次第に親しく交流するようになった。

怜子夫妻にもやはり子供はなく、怜子自身は日本で看護士という職を退いて夫に伴われてきえいたことにも互いに共通点を見出していた。

しかし、怜子は1年目の終わりころに、子宮癌が発覚し、一時日本に帰国して手術し、抗がん剤治療を行っていた。

怜子は抗がん剤治療の半ばでその薬をインドに持ち込みながら、再びデリーに戻ってくるという強靭さをみせた。

北川、片山両夫妻は互いに打ち溶け合って、デリーの暮らしを二分するように、喜びも暑さによる苦しみも共に分かち合うのだった。

美沙の二年目の夏は二夫婦はヨーロッパに旅に出て、さらに親交を深めたかのようであった。

デリーの暮らしは厳しい暑さと戦いながら、インドの人々の文化やしきたりを学び、その中で強く生きていかねばならないことを美沙も、怜子もそれぞれの立場で感じていた。

とりわけ美沙は最初の酷暑の中で早期流産をしていまい、心と体に少なからず打撃を受けていた。

二人の女性は偶然同じ、互いの愛読書「赤毛のアン」のシリーズ本を心の支えに、インドの暮らしを自分の中に取り込み、時に心揺るがせながらも勇気を持って生活していく。

生まれ育った環境も、年代も違う二人の日本女性が、厳しい環境、異文化の中で、次第に寄り添おうとする姿を、そして癌という病のためにまた確実に別れが迫っている二人をインドの風物と季節のうつろいと共に描いている。

三年の任期をあと数ヶ月で終えようとしていた北川夫妻に、訪れた試練、それは怜子の癌の再発の恐れと早期帰国の決断を迫られた。

怜子という一人の強い意志を持つ女性の力によって支えられていた片山夫妻と怜子の夫北川の葛藤、死を決意したように一人で日本に帰ろうとする怜子本人の思いをもって
終章に入る・・・・・・
そしていよいよ怜子は日本の実家高知県に帰る。
病気を心配して美沙は自分の健康診断をかねて同行する。

一人でまたデリーに戻った、美沙はいよいよ最後のインド生活の年を迎えようとしていた。

そしていよいよ3年目に入っていく。
この小説の冒頭は・・こちらへ

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Commented by panipopo at 2008-08-23 17:41 x
遊びに来ました。応援もね☆

ann san no shousetsu, ima wa yomudake de gomen nasai... kaettara mata chanto komento shimasune.
Commented by CHIL at 2008-08-23 21:27 x
美沙さん、心の言葉の吐露・・・熱のせいでしょうか・・・。
よう子さんとどんな会話になるのかしら・・・。
annさん高知からお戻りなるのを楽しみに待っています♪
是非楽しんでいらしてください(^^)
Commented at 2008-08-23 23:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by まーすぃ at 2008-08-24 16:13 x
なるほど。。。夫婦の長い歴史の中には山あり谷ありで。。。結婚当初には予想もしなかったような、すれ違いや価値観の違いだってありうるし。。。

こういった心の動きは、結婚している夫婦には特に共感できる部分があるのではないでしょうか。。。

応援してます!!
Commented by crystal_sky3 at 2008-08-25 03:57
よう子さん、仲良くしましょうね・・・といいつつ、ダイレクトに深井さんとの関係を聞いてくるところがよう子さんらしいですね。
美沙さん、大丈夫でしょうか?
夫婦は一緒にいながらも、もしかしてお二人は上手くコミュニケーションがとれてなかったのかも?男の方って女性よりうんと寂しがりやなところがありますもんね・・・。
高知からのお帰りを楽しみにしてますね♪
また色々お話、聞かせてください★
Commented by さりすけ at 2008-08-26 02:55 x
annさん、高知で楽しくすごしておいでかな?よう子さんの親切っぽく近づいてきて、詮索するところは本当に私たち女性のもつゴシップ好きな面がよく表されていると思います。読むと嫌だな〜、こんな人と思うのに、自分もしょっちゅうこんな風なんじゃないだろうかと思い反省もします。annさんの小説はいろんな人間模様が垣間みれてとても興味深く、自分を振り返るきっかけにもなっています。これからも楽しみに更新を待っています。
Commented at 2008-08-26 17:36 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-08-26 22:49 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by akageno-ann at 2008-08-27 14:59
みなさん、いない間にもこんなにメッセージありがとうございます。
高知はなんとも様々なことを思い出させてくれました。
飛行機の旅も・・
また書いていきます。
どうぞよろしくお願いします。
by akageno-ann | 2008-08-23 12:39 | 小説 | Trackback | Comments(9)