アンのように生きる・・・(老育)

akagenoann.exblog.jp

かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

ブログトップ | ログイン

2008年 04月 13日 ( 1 )

キーマカレー

第127話

気候は10月のディワリの祭が過ぎると、急激に気温が下がり、特に朝夕が本当に凌ぎやすくなってきた。

駐在する日本人たちはほっとする時期である。日本人会は日本人小学校の運動会と併せて盛大な運動会を行った。

大使夫妻も出席されて、綱引き、玉入れとどこから調達するのか日本と同じように道具は揃っていた。

学校が中心ではあるが、企業人たちが様々に協力し、会社の伝をつかって子供たちのために道具類を寄付してくれたり、と和やかなムードが出来上がっていた。

美沙は、子供たちと一緒に家族ぐるみの競走に参加し、怜子は救護班として子供や大人の擦り傷などを手当てしていた。

この日思いがけない怪我をしたのは、美沙だった。


最後の目玉400メートルリレーで人数が足らなくなり、若い美沙に白羽の矢がたった。

美沙も中学校教員として、経験も多く走ることも嫌いではなかったので調子にのって出場した。
しかしその日はかなりの種目に出ていて足に知らず疲労があった。

アンカーにバトンを手渡すところで勢い余ってひざから転んでしまったのだ。

膝の痛みはその晩になってさらに腫れ、美沙は怜子に言われた通り、一晩中氷で冷やした。

翌朝、怜子はさっそく電話をしてきて、

「美沙さん、大丈夫?傷見せにきてね。」

と、心配してくれていた。 
美沙はこういうときにすぐに甘えることができるまでに怜子に親しんでいた。


「グッドモーニング、マダム」とファトマに迎え入れられて

「おはようございます。すみません。お世話になります。」
と、怜子のいる部屋に入って行った。

「どうなの?冷やした?」


「はい、お陰さまで腫れは引いたんですが・・・・」

と、言いながら膝を見せた。

「あれあれ、やっぱり水がたまったわね。少しのあいだしゃがむのが辛いわよ。」

なるほど言われたように、しゃがむ格好がしにくくなっていた。

「もう老体でしたね。あんなに調子にのって走るんじゃなかったです。」

「でもあなたの若々しい姿は眩しかった。主人なんて美沙さんかっこいいなあ、っていうのよ。」

美沙はドキッとした。

「いやだ、あんなにぶざまに転んで、みっともない、って主人には言われましたよ。」

「片山先生、貴女の伸びやかさを妬んでいるかもね。貴女はああいう場でも人気があるもの。」

「そんな人気なんてないです。なんでも顔を出すからでしゃばりなんだと思います。」

一生懸命否定している美沙自身は心が浮ついていたかもしれない。

「若い人はいいな、って思ったわ。」

「何をおっしゃいますか・・・そんなに違いませんよ。」

そうお茶らけようとはしたが、その寂しい怜子の横顔に

「怜子さん、体調大丈夫?」

と、美沙は思わず聞いた。

「実はね、ちょっとリンパ腺の脇にぷつぷつとできものが増えて、気になっているの。」


美沙は、このときひどく嫌な予感がした。

「怜子さん、検査に日本に行かないといけませんよ。」

「大丈夫、看護士よ。私」

「でも、無理しますよね。ご主人だってそれを心配していらっしゃるんじゃないでしょうか?」

「主人何か言ってた?」

ここで初めて怜子は美沙に問いただそうとした。

「はい、自分には遠慮するから、もし体の変化を話されたら言ってほしいと・・」


怜子は少し寂しそうな顔をしたが

「ありがとう、心配してくれたのね。」と素直な顔になった。


その日のお昼はキーマカレーを作るから一緒に食べようと誘われて、美沙は朝からずっと怜子の家に滞在してしまった。


キーマカレーはデリーではよくマトンのミンチを使っていたが、怜子たちは鶏肉を使って作っていた。そしてファトマには得意料理で、チャパティを焼いてもらって一緒に食べた。


「このカレーは日本のカレーパンに良いんじゃないかしら?
ピロシキよりずっと美味しい気がするわ。」

そういう怜子の食欲には不安はなかったが、美沙は北川にこの変化を話さねばならないと思っていた。


                                         つづく

「annと小夏とインド」
小夏の動画を見てね・・

c0155326_23241168.jpg
今日も応援のクリックをお願いします。
現代小説、インド情報どちらかひとつクリックしていただくだけで
ポイントになります。いつも感謝です。
にほんブログ村 海外生活ブログ インド情報へ
にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ

キーマカレーの作り方はこちら
by akageno-ann | 2008-04-13 23:18 | 小説 | Comments(16)