アンのように生きる・・・(老育)

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かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

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2008年 04月 28日 ( 1 )

インドと高知

インドを舞台にした日本人女性の生き方を綴る小説です。
1話だけでもお付き合いください。あらすじは下にあります。
この小説の冒頭は・・こちらへ

第136話

一概にインドと高知が似ているなどという会話は、その双方に失礼かもしれないが、美沙の印象ではその人の良さや、押しの強さ、豪快さは太陽の強さに比例しているように思えた・・・

怜子と美沙は成田で一泊して、旅の疲れを癒してから、翌日羽田までリムジンバスで移動して高知へ向かった。

成田のホテルの食事は二人で思い切り贅沢に懐石風のコースの和食を選んで、
心行くまで日本の食事を楽しんだ。
翌朝の朝食のビュッフェで、納豆と生卵を選んで二人は顔を見合わせた。

「デリーの冷凍庫に何ヶ月も入っていた納豆は豆がもう干からびてたわね」
と怜子が笑いながら語り、美沙も

「えぇ、この生卵とお醤油はこのまま飲めそうよ。我家の醤油は3年分あるなんて喜んでいる場合ではないですね。あれはもうたまり醤油になってしまって・・・むらさき、という別名のある本当のお醤油はこれだわ」
としみじみ眺めてしまっていた。

「あなたのところの煮物は美味しかったわよ。でもこうして豆腐や漬物につけて食べる時の醤油はインドにはなかったわねえ。」

そんなたわいもない、デリーの食の思い出話はつきない。

疲れを心配した怜子の体調もよく、比較的元気な姿で帰還した。
高知空港(現高知龍馬空港)にはあのまだ暑いデリーの怜子の家を訪れてくれた親友
堅田良子夫妻が車で出向いてくれていた。

「お帰りなさい、ようもんたね・・・」
と良子と怜子は先ず互いの肩を抱き合って、賑やかな土佐弁で無事を喜んだ。

以前の話はこちらへ

「ほんとにあんたには世話になるねえ。ありがとう」

そんな二人をようよう引っ張って、堅田良子の夫と、美沙との4人は空港の出発ロビーにある土佐料理の司(つかさ)という店に先ず立ち寄った。

時間も昼時を少し過ぎたところで、皆お腹を空かせていた。

もちろん4人はここの名物「鰹のたたき定食」を注文して、先ず高知の味を確かめることになった。

「美沙さん、本当に怜ちゃんをこうして送り届けてくれてありがとう。なかなかできることではありませんよ。ねえ怜ちゃん良い人に出会ってよかったねえ。」

そう話す良子に

「いいえ、私の方こそもう寂しくて、一緒についてきてしまったんです。高知は前にもお話しましたように、主人の母の実家ですし、こちらに親戚もあり、なんだか自分の故郷のようなんです。私はずっと東京育ちでしたから。」

美沙は旧知の人、良子に向けて話した。

デリーへわざわざ友人怜子の抗がん剤の薬を持って訪れ、その滞在の間何度か食事をしあった仲間はもうしっかりといい友人関係になっていた。
しかも良子がデリーを離れる日に、この病気と闘う親友を美沙に「よろしく頼みます」と
託していた。

ここでこうして土佐料理を一緒に食べて、怜子の実家に赴くことは不思議な出来事なのであるが、しかしこれも遠く以前から決められていた運命のようにも自然に思えてしまうのだ。

車は空港を出ると、敢えて海沿いを走り浦戸大橋を渡り、ほんの少しより道をして名勝桂浜に向かった。

怜子と美沙の歓迎の意味であった、と美沙にはあり難く感じられた。

風はさすがに冬の高知でも寒いので怜子には無理をさせられないと、長居はしなかったが、4人でみた太平洋の荒波と坂本龍馬の銅像は大きなエネルギーを与えてくれるように感じていたのだ。

幕末の志士として、この土佐の高知に留まらず、日本の未来のために働こうと東奔西走した坂本龍馬を4人のそれぞれがここで改めて偉大な人物として確認したようであった。

若くして暗殺されたにもかかわらず、日本の開国にも大きく尽力し、長い鎖国の時代を終えて江戸から明治への大きな時代の流れの中での彼の残した偉業・・その中身の濃さが具体的にわからなくとも、怜子はその大きな力が自分の中にもみなぎって、インドに渡ったと思えた。

歴史が好きでこの時代の本も学生時代から好んで読んだ。
海外での生活がしたくて、夫のこの在外教育施設の派遣に大いに賛同した自分を思い起こし、それは今こうして無事に戻ることによって達成感に変わっていたのだ。

「ありがとう・・」それは誰にというのではなく、しかし少なくとも今ここにいる3人へと、デリーにまだいる夫に対して発した言葉のようであった。

                                                  つづく


c0155326_21511334.jpg「annと小夏とインド」
更新しました。春の宵のコンサートです。

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by akageno-ann | 2008-04-28 21:38 | 小説 | Comments(22)