アンのように生きる・・・(老育)

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かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

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映画あれこれ

小説をちょっとお休みして、気ままなエッセーを書かせていただいてます。

今月はいつもブログで仲良くしていただいてる CHILさんのブログ
「かあちゃん あのね」
からこの季節にぴったりのハローウインの絵を紹介させてください。

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久し振りに父と映画を見ました。
昔から映画を一緒によく見ましたが、最近は一緒は珍しい

先日の旅の途中で 

「松たか子の演技がいいらしいよ・・・なんだっけ 太宰の作品・・」

「ヴィヨンの妻でしょ・・」

それじゃあ一緒に見ようじゃないか・・ということで池袋のシネリーブルへ

空いてるなあ・・水曜日レディース1000円の日にも

なんてちょっと興行成績を心配しつつ・・

しかし太宰治を私はあまり好みません・・作品というか生き様というか・・

そしてやはりその通りの作品・・

松たか子の演技は確かに惹きつけます。 広末涼子 浅野忠信の雰囲気は退廃ムードは漂わない・・

これはもっと退廃的な内容ですよね・・

そしてやはり作品内容に私は納得がいかない・・

でも、太宰治の作家魂は魅せつけられます。

不思議な鑑賞後の気分で父とはお茶も飲まずに別れました・・

親子で見る映画ではなかったかも・・あまりに退廃的・・ただヴィヨンの妻的な感覚を父から習ったようにもふと思うのです。

夫を盛りたてる妻になるべく育てられたかも????


その一方で夫に薦められてレンタルで観た 『ただ、君を愛してる

「今 会いに行きます」の市川拓司氏の小説「恋愛寫眞 もうひとつの物語」の映画化

市川さんの恋愛の感性とニューヨークを舞台にした女性カメラマンのとその恋人 友人とのかかわりがメルフェンティックに描かれていて・・私にとっての秀作でした。

お暇があったら是非ご覧になってください。

宮崎あおいさんの魅力に溢れていました。

彼女は篤姫以来好きですが・・良い映画にも出演されているんですね・・

邦画をもっとまめに見ようと思います。

今は 『アマルフィ』が見たいです。

何をするにも良い季節・・夜更けて映画を見るにも良い秋の夜長でした。
by akageno-ann | 2009-10-23 07:53 | エッセ- | Trackback | Comments(19)

秋を探して

小説をちょっとお休みして、気ままなエッセーを書かせていただいてます。

今月はいつもブログで仲良くしていただいてる CHILさんのブログ
「かあちゃん あのね」
からこの季節にぴったりのハローウインの絵を紹介させてください。

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そして愛犬小夏と秋を探して散歩しています。
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by akageno-ann | 2009-10-20 22:51 | エッセ- | Trackback | Comments(4)

秋・・たけなわ・・

小説をちょっとお休みして、気ままなエッセーを書かせていただいてます。

今日はいつもブログで仲良くしていただいてる CHILさんのブログ
「かあちゃん あのね」
からこの季節にぴったりのハローウインの絵を紹介させてください。

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「ひまわりのような人」でひまわりの絵を描いてくれた 4歳のりょん兄ちゃんのお母さんです。
手作りおもちゃのホームページも持っていらして子育てを一生懸命楽しみながらしていらっしゃいます。

12月には三番目のお子さんが生まれます。
益々忙しい かあちゃんですが・・「かあちゃん、あのね」のブログの更新も毎回楽しみです。

親子と言えば、今日は私の住む街のゴルフクラブで 日本オープンゴルフの最終日を迎えました。

観戦に行ったわけでなく、石川遼くんの白熱の最終ホールをテレビの生中継でみていましたが、石川親子のゴルフを中心とした教育も大変参考にさせてもらってます。

あれだけ注目されると本人も廻りも大変だと思いますが、どんなときも覗かせる謙虚な姿勢がとても好感が持てます。

ゴルフをやるわけではないし、試合もあまりみたことはないのに、今回はにわか仕込みでルールも知り
ほぼ4日間楽しませてもらいました。

そして今日最終日は小田さん、石川さん、今野さんの三人でのプレーオフ・・

魅せてくれました。

なんといっても石川遼くんの17番ホールは圧巻でした・・感動!

秋らしい爽やかな空気の中で良いスポーツなんですね・・

昔インドでちょっとだけゴルフの打ちっぱなしの練習してました。

あそこはボールボーイが本当に少年で・・・ブッシュの中にもボールを捜しに一生懸命入ってくれてたことを思い出しました。

そこには春先だったかしら・・孔雀の子供が一生懸命尾を振って・・羽を広げる練習をしていました。
懐かしい風景を思い出しました。
by akageno-ann | 2009-10-18 23:45 | エッセ- | Trackback | Comments(4)
ひまわりのような人
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                                                      タイトル画 M.N

最終章

堀田恵子の病室に田部夕子が訪れたのは晩秋の夕日がまぶしく病室の窓から差し込む時間だった。

その日は休日で病棟もひっそりとしていた。
日ごろは心電図のモニターがあちこちに置かれて、それによって管理されながら心臓病の患者はウオーキングなどのリハビリを行うのである。

この病棟には心臓疾患の患者が多く、食事を普通食で摂れるせいか 皆明るい雰囲気で病室に滞在していた。

当初恵子は心臓疾患を疑われてこの病室に入ったが調べていくうちに内臓機能が大きく低下し、腸壁からの出血も多く重大な貧血を起こしているようだとわかった。

とにかく安静を心がけさせられて、一月は心配の連続で過ぎて行った。

やはり一番心配したのは夫の紘一郎であったが、やがて疲労に寄る一時的なものだと判断されて、手術の必要もなく、造血剤と点滴によって安定してきた妻の恵子の様子に心からほっとしたのだった。


もっと自由にしてやらなければ、妻を自分の母と同じように早くに亡くしてしまうことだった・・と心から猛省をしていた。

「恵子、どうしたの・・随分と痩せたわね。」

日ごろ体のことで太った痩せたの会話が好きでない恵子だったが、夕子のこの心配する心は素直に受けとめられた。

「どうしたのか・・自分でも鬼の霍乱だと思っているの・・急に体中が痛くなって、発熱してどうしても体が動かなかったの。今までそんなこと一度もなかったので・・ふと自分はこのまま命を落とすのかもしれないと思ってしまったのね。」

夕子は驚いて、ベッドの傍ら近くに進んで恵子の手を握った。

「でも大丈夫よ。よく寝たのよ。初めて安眠剤ももらってそれはそれはよく眠れるの。食欲も最近はやっと出てきたわ。多分私自身が決めた相当な休養を必要としてそれを取ったんだと思うの。」

恵子の声にはいつもの張りはなかった。
夕子は胸の詰まるような思いを隠しながら

「鬼の霍乱と自分でいうのね・・貴方は・・まあよかったわ本当に・・主婦って大変なのね~~
私、結婚していたとしてもあなたのようにはできなかったと思うわ。」

恵子は笑って首を小さく振り

「そんなことない、私は家族に振り回されることが好きなのよ。ただ最近は寄る年波で思うように自分の行動ができなくて・・いたずらに時間をかけて行動したりいらいらしたりしてたから・・自分の許容量を越えたのね・・残念だわ・・」

夕子はすぐに

「私たちのことも心を砕いてくれたものね・・」

と黒田とのことを示唆した。

「それは楽しかったわよ・・で、その後いかが?」

恵子は笑って夕子を促した。

「そうちょっと良い感じかも。でも勇気はないのよ結婚なんて・・今さら・・
うちは両親の介護も近いように思うし・・」

夕子は弾んだ声ながら現実を直視するようなことを言った。

「夕子、でもね~~結婚は一度はいいかもよ・・・良い人に廻りあったのだったら・・
私はのろけるつもりはまったくないのよ・・でもねこうして病気になって死ぬかもしれない・・と思ったときに自分の作った家族があったことは大きかった。特に夫が随分と友情を示してくれたしね。これが年老いた親だけとなるとちょっと不安・・・」

その言葉を冷やかしには受け取れなかった夕子がそこにいた。

「そうかあ恵子が身を持って語ってくれるその言葉はちょっと心に落ちたな・・」


秋はこのまま冬に突入するかのような深い夕日を落として病棟を暗くして行った。

同時に病室の電気を点けて、二人は互いに少し年をとってきたということを感じていた。

まだまだ考えることはたくさんあるのだ・・と何も言葉にしなくとも二人は互いのこれからくる人生の後半のことを考えていた。


「友達も大事よね・・本当に・・・」

そう二人は再び手を取り合って、固く握った。

先ほどの夕日はすっかりと闇をつくり、人生の黄昏も近いことを二人それぞれの心に去来させた。

部屋にはカレンダーのコスモスの写真が可愛らしくそして美しく二人の心を捉えていた。

             「ひまわりのような人」                  了




ここまでのご高覧に感謝します。
このひまわりのような人は今回で終わりますが、11月からこの続編
「コスモスのように」が始まります。
登場人物も引き続き堀田恵子 田部夕子を中心とした人々になります。
また見守っていただけたら嬉しいです。
                         筆者Y.N.
by akageno-ann | 2009-10-16 14:52 | 小説 | Trackback | Comments(6)
ひまわりのような人

終章

堀田恵子は生きられることがわかった。

それほど体力が損なわれ、内蔵の出血がみられ、一時は相当に衰弱した。

恵子自身が自分の命はここまでではないか・・と悟った時期もあったのだ。

病院側から夫紘一郎に病状が伝えられた。
原因不明・・・・腸壁から出血が見られ、そのために強度の貧血になっているという所見。

内蔵の検査を細かく行うので1ヶ月の入院をすることを言い渡された。

その間の点滴による治療はその時の恵子の体によい影響を与えたようだった。

ビタミンCの不足による壊血病が昔はままあったようだが、今は栄養も十分な食生活が営まれ、それを守る家庭の主婦の力も大きく評価を受けるようになっていた。

医学的には先進医療にあてはまらないような恵子の病状だったが、入院は彼女に大きな休息を与えた。

長い間の舅との暮らしも知らず緊張感に包まれ、気遣いが思うように相手の心に届かず互いにストレスを感じているようなこともあったはずだ。

恵子はいつも比較的辛そうな顔を見せなかったから、夫も子供たちも、ましてや舅には全く彼女のことを思いやることが少なくなっていた。

恵子は自分でその答を出した。

病は結局恵子自身の出した休養宣言だった。


「思えば、親父の体は自然こちらが気にして無理しないように、またさせないように気をつけて、随分肩代わりすることも多いのに、この年になて身体がきつくなった自分たちの代わりは取りあえずなかったね。悪かったな・・家庭の事をそのまま君に頼みっぱなして・・」

紘一郎は早く恵子が入院することになってほっとしている。
あのまま家庭にいたら、またすぐに動き出してもっと重症になっていたのかもしれない。

「貴方にいつもひまわりのようでなくて良い・・と言ってもらって・・すごくほっとしたわ!
泣き言も愚痴も素直に言えるし、何より今いくらでも横になっていたいのよ。」

そう恵子は微笑んで紘一郎に話していた。

病院では個室を頼んで、二人は静かに過ごす時間を大切にしていた。

ふとドアがノックされた。

「どうぞ・・」

紘一郎が答えると看護士ではなくだれか見舞い客のようだった。
ドアは静かにゆっくりと開けられた。

「こんにちは・・田部です。」

夕子だった。

「まあ、タコちゃん、来てくれたの。どうしてわかった?」


「今朝ねちょっとお宅へお電話したら沙耶ちゃんが出てくれてね。最初は母がだれにも言わないで、っていうけれど・・といいつつ、私がむりむりどうしてもお母さんにお礼を言いたいからって頼んだら、ここを教えてくれたのよ。知らなくて、ゴメンナサイ・・お世話になったまま連絡しなくて。」

ゆっくりだけれども、夕子はそんな風に少しの間の無沙汰を詫びた。

紘一郎は見舞いの礼を言って、ゆっくりしてください・・と言ってその病室を出た。


「タコ・・ありがとう。最初は本当に誰にも会いたくなかったけど、回復して今は退屈してたのよ。そして貴方のことも気になっていたわ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この項つづきます
by akageno-ann | 2009-10-13 23:27 | 小説 | Trackback | Comments(2)

小説 その29

ひまわりのような人
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                                                      タイトル画 M.N
終章の一つ前

恵子はそのまましばらく床についてしまっていた。
更年期という言葉では片付けられない何か深い疲労から来る病が彼女を襲っていたようだった。

そのことを一番気にしていたのは舅だった。
もう随分前に彼は妻を同じような病状のまま早逝させていたのだ。

その後に入れ替わりのように息子紘一郎の嫁としてこの家に入ってきた恵子のお陰で家庭的に明るさを取り戻したので、次第に妻の存在の重要さを忘れてしまっていたのだ。

慣れというのは怖いものだ。

ふと、妻の亡くなった時のことを思い出した。

まだ退職前で勤続30年の表彰もされた直後、家も新築して心は充実していた時期だった。

「どうだ、すごいだろう」
といわんばかりに新築の家を妻にプレゼントするつもりで寸暇を惜しんで建築現場に足を運び、仕上がり具合をチェックしていた。

心が浮き立って、会社でも仕事はスムーズに運び退職後は悠々自適で趣味の園芸でも夫婦で楽しもうと思っていた矢先に、妻はあっという間に脳内出血を起こして帰らぬ人になった。

しばらくの間頭痛をよく訴えていた、妻のことを、単なる更年期障害だと軽く考えていた。
家族のだれも大事に考えていなかった。

ある日、彼女は夕食の準備をしようと冷蔵庫の扉を開けたところで倒れていたのだ。

夕刻に帰宅した息子の紘一郎がそれを見つけて、救急車で病院に運んだが、数時間後に息を引き取った。

呆然として涙も出なかった。
新築の家にはついに一歩も足を入れないままだった。

紘一郎ももちろんそのことはつぶさに思い出せる。と、いうよりも決して忘れられない光景だった。
母は病弱な雰囲気があって、頭痛を長く訴えていたが、自分の妻の恵子は殆ど風邪も引かない健康体の女性だと、ある意味すっかり楽観的に考えてしまっていた。

この人を死なせてはいけない、だが子供たちにそんなに心配させてもいけない、ひまわりのような人が家庭で倒れるとこんなにも皆の心が不自由になるのだ、とつくづくと感じさせられていた。


自分は父親の二の前をふむことはしない、とここで大きく決心をしていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その頃、恵子の友人 田部夕子と黒田は心楽しい日々を過ごしていた。

恵子が自分に気にせず二人で楽しい時間をたくさん持ってほしい、と言ったのをあり難く受け取って、そのままに その頃は一々恵子に連絡もせず二人の時間を育くんでいた。

今正に、夕子は黒田の前でひまわりのような女性として成長していた。

女性は愛情をかけるものの前で本当の光を放つようになるのかもしれなかった。

その夜、二人はイングリッシュパブでゆったりとカクテルを楽しんでいた。

若いバーテンダーは夕子の前でグラスに炎をともし、その炎をゆっくりとリキュールの入ったグラスに移し、夕子の美しい顔の前にかざした。

「きれいだな・・」

「ほんと素敵な炎ね。」

そう答える夕子に 『いや、君がだよ』と言う言葉は口にしなかった。

そんな青臭い言葉はもう二人には似合わなかった。

しかしゆっくりと互いのグラスを傾けて笑顔で見詰め合っているうちに、心は溶けていくようだった。

「今度、少し遠出しないか?」

「ええ、秋も深まって東北はどうかしら?私 学生時代に廻った十和田湖と奥入瀬渓谷の紅葉が忘れられないの。」

そうだった、あの頃は女友達と二人で旅をしたものだった。
あの時の友人もとっくに結婚して今は音信普通になってしまっていた。

周遊券を学割で買って、民宿に泊まって・・と思い出した。

「私ね、その学生時代の旅で宿の近くのスナックでお茶を飲んでいて所謂ナンパされそうになったわ!」

黒田は 『ほう?』という興味を向けた。

「友人がとてもチャーミングでね、彼女の方に声をかけていたんだけど、そちらも二人連れでね・・そんなに悪そうな人ではなかったけど、その軽さが嫌ですぐに丁重にお断りして宿に戻ったの。」

少し酔ったらしく、夕子は口が軽くなっていた。

「私はそういうときも全く心を許すことのできない性格で、怖がりだったんだと思うの。でもね今は黒田君に会ってほんとに素直になれるのよ。あのときその若者は八甲田山の紅葉をみせてあげる、と言ったんだけど、もちろん行かなかった。だから八甲田に連れて行ってほしいわ!」

「じゃあ、それは1泊しないと無理だよ」

すかさず答える黒田に、夕子は甘えるように肩を寄せた。



恵子はその頃、病の床で 偶然にも夕子と黒田の夢をみていた。

c0155326_0204781.jpgつづく(小説はすべてフィクションです)

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小夏庵ものぞいてくださいね
右の絵は間もなく4歳のりょん君の作品です。
by akageno-ann | 2009-10-07 23:31 | 小説 | Trackback | Comments(4)

小説 その28

ひまわりのような人

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                                                      タイトル画 M.N
その28

恵子は38度ほどの熱が出て、久しぶりの熱のせいで頭が朦朧として夢をみた。

そういう時の夢は脈絡がないようでいて、実は現実に起こりそうなできごとにうなされるのだった。

そこに出てきたのは舅だった。

自分が起き上がれなくて食事の仕度ができないのを困っているのに、舅は

「何をしているんだ、気持ちがたるんでいるから、子供たちも道に迷うんだ。」

というようなことを実に冷ややかに話すのだった。

子供たちはもちろん沙耶のことで、沙耶は中村との恋愛の終結を思い悩み、家を出てしまったようだった。

何もかもが、自分を責めているようで、切なくて苦しくて寂しい思いで心が凍りつくようだった。

その思い心をどうしようもなくて、もがき声を出す恵子がいた。

「いや~~~~~~~・・・・・・・・」

声を押しつぶしたようなうめき声でそう叫んだ恵子は、自分の声に目覚めた。

「どうした?大丈夫か?」

ベッドの上から夫の紘一郎が覗き込んでいた。

「はああ・・夢をみていたのよ・・とても辛くて・・」

少し起き上がろうとしたら、初めてのように目が廻った。

「無理をしてはだめだ。なんの熱かわからないけれど、風邪ではなさそうだな。大丈夫だよ家のことはみんなでやってる。」

「お義父さんはどうされてる?」

「自分で買い物に行って、みんなの弁当を買ってきたよ。君のお粥もレトルトを買ってきてるよ。」

先ほどの夢でうなされたのはその義父のせいだなどはいえなくて、ただ自分を恥じ入っていまった。

寝室のドアがノックされて、娘の沙耶がお盆に食事を乗せて持って入ってきた。

「沙耶ちゃん、悪いわね。」

「このお粥、おじいちゃんが買ってきたのよ。私には粥は炊けないだろうって・・今は電気釜でたけるのにねえ・・」

家族の優しさが心に沁みた。

何故あのような夢をみたのだろう?

きっと被害妄想が自分の中にあったに違いない。

そして今発熱した自分は何もできないのだ。若い頃はちょっとの熱くらいでこんな風に寝込んだことはなかったのに。

「沙耶、母さんの代わりができるな。」

「ええ、大丈夫よ。いっぱい心配かけちゃったし、お母さんの心臓がオーバーヒートしたのかもね。」

紘一郎は静かに話しかけてきた。

「恵子、君は我が家のひまわりのような人だが、いつも大きな花を咲かせていなくていいんだよ。
少し黄昏て、秋に向かう人生もあるんだ。何もかもうまくはいかないが、君のお陰でおおよそは事がうまく運んでいるじゃないか?子供たちもなんとか頼りなげでも自分でせいかつしてるからさ。」


その夫の言葉を聞きながら、心の緊張がほどけて、また深い眠りに落ちて行ったようだった。
c0155326_0204781.jpgつづく(小説はすべてフィクションです)

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by akageno-ann | 2009-10-05 17:53 | 小説 | Trackback | Comments(4)

小説 その27

ひまわりのような人
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                                                      タイトル画 M.N
その27

季節は次第に秋が深まっていた。
この季節は音楽にしろ演劇にしろコンサートや舞台が多く、人々は観覧の楽しみを得る。

今、このときに恋をしているものは芸術的なものに鋭敏になるようだ。

黒田は田部夕子との週末のデートを心から楽しんでいた。

一ヶ月に二度ほどの逢瀬は一つ一つ大切にその場所の設定を考える。

その過程までも愉しむのだった。

どこへ連れて行っても楽しそうな笑顔を見せる夕子の存在は今の黒田が一番求めている癒しの空間を十分に埋めてくれていた。

そして黒田はその夕子に対して温かく包み込む気持ちを持っているという自負があった。

10月の夕暮れは陽の落ちるのがいきなり早くなり、池袋の芸術劇場の前で6時半に待ち合わせていた黒田と夕子が出会えたときは静かな夜の帳が降りていた。

今日のコンサートはT交響楽団によるブラームスのピアノコンチェルトと交響楽というなかなか手篤い内容のプログラムだった。

その日は偶然にも有名な指揮者が突然に亡くなるという悲報が入って、指揮者は急遽その指揮者の冥福を祈るべく、バッハのG線上のアリアを先ず演奏し、聴衆は黙祷を捧げた。

長い追悼の言葉をあらわすよりもずっと美しい弔意の表現だと夕子は感動していた。

黒田はこのチケットは自分の姉夫妻の会員券を譲ってもらっていた。

その席は1階の8列目の真ん中で、オーケストラの音がそこに集まるように重厚に響いているようだった。

やがてブラームスのピアノコンチェルト1番が奏でられた。

中堅の女流ピアニストの衣装は真紅のシンプルなドレスでほっそりとした体躯からは想像もできないような情熱的な演奏が進められていた。

そして叙情的な旋律はそのとき二人の心を大きく揺り動かしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

同じ夜を恵子は自室のベッドの中で過ごしていた。

娘の沙耶に初恋のような中村との恋愛に終止符を打たせようと発言した2日後に、恵子は本当に久し振りに高熱を出して眩暈を起こした。

沙耶はその短い間に大きく恵子の心から離れて行っていた。

その距離感を激しく感じた恵子は不覚にも病に倒れてしまった。

ベッドの中で眠りにつくと虚脱感でいっぱいになり、知らず涙が流れた。

舅の世話だけが気になったが、どうしても体が動かなかった。

そのまま深く眠ってしまったようだった。

c0155326_0204781.jpgつづく(小説はすべてフィクションです)

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by akageno-ann | 2009-10-03 00:55 | 小説 | Trackback | Comments(6)