アンのように生きる・・・(老育)

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かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

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<   2010年 10月 ( 10 )   > この月の画像一覧

犬のいる生活を中心にしたお話を書かせていただきました。
ここ一ヶ月容態が不安定だった叔父が亡くなりました。
舅の弟で素晴らしい人でした。
優しい人で「捨て猫もほっておけないで餌付けしてしまったんですよ、手術もね・・」
と話したときがお元気だった最後の会話だった・・と ふと思い出しました。
病身の兄を大切に思いよく見舞ってくださり、嫁の私を誉めて励ましてくださいました。

家庭でもそういう方だったのでしょう。妻である叔母はそういう家庭人として優しかった叔父の夫としての思い出を熱く語りました。
恐らくはとても意気消沈している心を奮い立たせての言葉のようでした。
冥福を祈りつつ、思い出を大事にしていきたいです。

最終回になりました。お付き合いくださりありがとうございます。
少し時間をかけて追記てきに最終回を書かせていただいてます。

かけがのない日本の片隅からpart2
犬のいる生活 最終回 その街も成長する

動物と人間との関わりは自分で作ろうとしなければ起こらないと思う。

例えば拾い犬をする、動物の保護団体から里親として動物を引き取る、そういうことは初めて動物を家庭に入れようとするときに、かなり大きな覚悟を必要とすることがある。

幼い頃に動物と暮らす経験のあった者はさほどではないかもしれないが、大人になってから動物と身近に触れ合うという経験をする人々も決して少なくない。

子どもがいる、とか老人がいるから、とか動物アレルギーだったり、いろいろな問題があって、新しく迎えることへのある種の不安があるのだ。

飼ったものが少し獰猛だったりすることもないわけではない。

一度飼ったら絶対に最後まで面倒をみるという覚悟も大事だと思えるし・・

だが、先ず大事なのは第一印象。

石元夫人が最初にハナを飼ったのは、とにかくハナが可愛い表情の犬ですぐに愛おしさがもてたのだった。

一生懸命世話をし、飼っていくうちに、なくてはならない存在になることは前にも話したが、そんな状況の家庭を他でも随分とみている。

三世帯同居の家庭では世代を超えて皆飼い犬を可愛がり、その犬のことで会話が盛り上がるという。

夫婦喧嘩や兄弟喧嘩をしていると怖がったり心配して家の隅に行ってしまう犬もいたり、家出してしまうものもあると聞く。

その犬の意思表示によって家庭内が何となく上手く収まるのだ、石元夫人は思うのだった。

犬に限らない、犬は飼うということにマナーを守ったりしつけたりというプロセスがいいのだ。
散歩もあっていぬ仲間が増え、最近はブログを通しての犬の会話が増えている人もいるのだ。

自分の犬の可愛さ自慢をするのも楽しいようだ。

人の犬の様子を写真で知って、癒されたり亡くした犬の思い出を楽しめたりするという話もある。

ここの土地は山も川もあって、犬の散歩には持ってこいの場所だった。

石元夫人は最初犬の散歩をしている人たちをみて、「大変でしょう、毎朝毎夕の散歩は」と他人事に思いながらも羨ましさもあったのだった・・

ハナは捨て犬であったために避妊手術もされていなくて、子供を産んだ形跡もない、と獣医師に言われていた。

そのせいもあるようだが、内膜症を患っていた。出血もあって病院に駆け込んだこともあり、我慢強い犬であったが、医師によると痛みがかなりあるという。

手術をすることも言われていたが強い全身麻酔が心配だといわれ、優柔不断に過していたのだ。

そうこうするうちにハナは食欲が落ちてぐったりするようになった。

痛みに耐える姿もあるので病院に連れて行くと、「このまま膿を搾り出します、」と言われた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ハナのその時のうめき声を石元夫妻は決して忘れることができなかった。
弱っていたハナ・・その処置のお陰でハナの病状は快復したのだったが、ハナはあまりの痛みを耐えたせいか少し恐怖感を覚えさせてしまったようだった。

その後半年後にハナは痴呆のようになって石元夫人のこともわからなくなってしまった。
哀しくて心が塞いだが、こうなってしまったことさえもあの時の痛みを味あわせてしまったという後悔とこれまでに愛らしさで家族を癒してくれた思い出が蘇り、愛おしくてしかたがない。
石元一家は家族全員がハナを見守ろうとしていた。

その家族の気持ちの中に次第に新たな結束力が生まれているのも確かなものであった。

季節が少しずつ変化する日本の四季は秋から冬に向かい、様々な動物たちも冬支度を始めている。

それとともに人もまた新しい時を迎える準備をする日々を過している。

この街は遅い台風の訪れに雨に降り込められた犬たちをほんの少しの雨の降り止みを見計らって一斉に外へ出る。

犬たちは雨具を着ているものもいる。

大切にされている犬の様子をみていると何故かほっとする時代の流れがここにはあるような気がしていた。
                           part2 犬のいる生活  了


お読みいただいて本当にありがとうございました。
物語はフィクションです。
犬を飼うとき読んでおくといいサイト→日本警察犬協会HP「犬との共生に必要なマナー」

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ハロウイン
by akageno-ann | 2010-10-30 23:19 | 小説 | Trackback | Comments(13)
pcが突然発熱しつつダウン・・風邪症状のようで・・慌ててメーカーのサポートに連絡すると、ファンにほこりがたまった為の障害でしょう、とわかりました。
メンテナンスをしなくてはなりませんが、応急処置を聞くと空気を送って埃を飛ばす方法があるようで・・やってみますと・・うまく起動しました。
しかし何年も使っているとオーバーホールは必要ですね。

小説の方も最終章に入っています。あと少し犬のいる街の生活の話にお付き合いください。

かけがえのない日本の片隅からpart2

最終章 犬のいる生活 その4

アフガンハウンドは四肢のほっそりとして毛足の長い美しい犬だ。

鑑賞としても好む人がいるようだが、元々は狩猟犬であるから、目的の獲物を追いかけてし止めるという本能があることを忘れてはならない。

ハナが玄関前でけたたましく吠えて家の中にいた石元夫人を呼んだ。

滅多にそのような吠え方をしない犬なので、石元夫人も何事か?と飛び出してみると、大型犬の2頭が勢いよく絡んでいる。

少し小型のシェルティがアフガンハウンドに咬まれているような格好だった。

そこに息を切らせて走ってきた二人の飼い主がそれぞれの犬を捕まえようと必死である。

石元夫人もどうしたらいいか、悩んでしまっているうちに2匹はなんとか引き離された。

しかしシェルティの飼い主の男性の手は血で赤く染まっていた。

石元夫人は急いできれいなタオルをもってかけつけた。

「どうぞどうぞこれで止血してください。」

名前を知らなかったが犬の散歩中に出会ったことのある人で顔見知りだった。

アフガンハウンドの方の飼い主は初老の女性で深くうなだれていた。

「貴方にはこの犬の散歩は無理でないですか?」

止血しながらシェルティの飼い主は少し怒ったように言った。

「でもそちらも綱を離しましたよね。」

アフガンハウンド側の飼い主もなかなかしっかりと反論した。

幸い犬も人間も大怪我にはならなかったが、双方の言葉のやりとりは深刻なものになった。

石元夫人もこの夫人の体つきをみても大型犬の一人での散歩は無理だと感じられた。

しかもどうやら子供のころから躾がなされていなかったのだ。

シェルティの方は咬まないことをしっかり学んでいたせいか、また本能的なものなのかひたすら耐えていた。

その姿は飼い主にはとても愛おしく辛いことだったのだ。

結局双方はそのまま喧嘩別れになってしまった。
                                  つづく

物語はフィクションです。
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More TEAMIE ア ラ カルト
by akageno-ann | 2010-10-27 10:20 | 小説 | Trackback | Comments(8)
今夜は指揮者バーンスタインが振るウイーンフィルハーモニーのマーラーの交響曲第五番をNHKBShiで聞いています。
ミーハーな私としてはその指揮中のお顔がリチャードギアに似ているなあ・・とまたちょっと惚れ惚れしているのです。指揮はもちろん音楽性第一だと思いますが、その人間性が魅力を更に際立たせますね!心地よく、今日の小説始めます。024.gif

かけがえのない日本の片隅からpart2

最終章 犬のいる生活 その3

犬を飼う時の覚悟は その犬の大きさによっても随分違うもののようだ。

小 中型犬の場合は、割合にすぐに決心がつくようだが、大型犬を飼うことにはかなりの覚悟が必要だった。

石元家の親族にかつて大きなアフガンハウンドというアフガニスタン原産の狩猟用の犬を飼った者がいた。

毛足の長い、スマートな大型犬で、顔が細く小顔なのも特徴であった。

こういう大型犬を飼うときはかなりの専門的な知識を持って実践するか、もしくは訓練所に預けて一定期間きちんとしたプロの訓練士による訓練を受けなくてはならない、と言われていた。

だがその親族は、ある映画でアフガンハウンドの姿形への憧憬を持ってしまい、どうしても飼いたいと家族に願って買ったのだった。

しかし、あまりしっかりした知識を持たずに手に入れて、自分の気持ち一つで育て始めたが、思った以上に獰猛さのあるその犬の習性にじきに気づかされる羽目になった。

狩猟犬というルーツはやはり血の中にしっかりと植えつけられていて、小さなチョコチョコ動く子どもがどうも苦てだった。

始めのうちは細く小さい体のその犬は、散歩中に彼の気の進まぬその方向に行くときにだだを捏ねてもさして問題はなかった。

だが、あっという間に成犬となり、手足ものびて美しい容姿になった。
それと同時に狩猟をするという使役犬としての責任感を持っていたのだった。

ある日の散歩中に事件は起こった。

                             つづく

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More TEAMIEのこと
by akageno-ann | 2010-10-23 23:38 | 小説 | Trackback | Comments(10)
小説を書いています。

かけがえのない日本の片隅からpart2

最終章 犬のいる生活 その2

ハナは毎朝石元一家のひとりひとりを見送るようになった。

玄関の横の石畳みの端にちょこっと座って、ひとりひとりに頭を撫でられるのを待つのである。

関心のなさそうな態度をとっていた、次男坊に一番懐いているようで、彼が玄関を出ると最近では猫のようにゴロンとなって、おなかを見せ、彼にはおなかを触らせるのだ。

次男は照れながらも、そうしていて本人が癒されているようだった。

しゃべることを億劫がっていた彼はハナに独り言のように話しかけるようになったのだ。

末っ子の長女はどうも軽く見られているようで、ハナは彼女に対して毅然として座り頭を撫でられてもその格好を崩さない。

長女の方もそれで充分のようで、実にさっぱりとした付き合いをしていた。

長男には随分と丁寧に伏せをするハナだった。

そして家長であるここの家の主人が現れると、ハナはこれ以上ない、というほど尻尾を振るのだ。

最初の頃はそれでも主人はハナに一瞥するだけで、決して触ることはなかった。

だが、ある日前を行く長女への態度とあまりに異なるハナの主人に対する平身低頭する姿に、ついにほだされていた。

ハナは彼の靴の匂いをよく嗅ぎ、時には足元に擦り寄るようにして近づいていた。

それは決して媚を売るのではなく、家長としての主人への敬愛の念だ、と石元夫人は思っていた。

ハナのそういう努力は涙ぐましいものがあった。

そして三ヶ月ほどで、彼女はこの家のアイドルになった。

                                    つづく
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by akageno-ann | 2010-10-20 22:57 | 小説 | Trackback | Comments(5)
小説を書いています。

かけがえのない日本の片隅からpart2

最終章 犬のいる生活その1

石元家の柴犬のハナはここのところ足元もふらつくようになり、腰を支えてやらなければよく歩けなくなった。石元夫人は無理に散歩させるのも可愛そうだと思い、家の前の公園に出して日向ぼっこをさせるようにしていた。

初めはその惨めな姿のハナを人目にさらすのはかわいそうな気がしていたが、介護をすればするほど愛着はさらに湧いて、ハナと共に公園に佇んでいるときが一番穏やかな時間であることを感じていた。


ハナを拾って育てるようになって、家庭内の多くのことが変化したのだ。

どれほどかハナの存在が家族の絆をもう一度繋いでくれたことか・・今改めて思い出のように浮かぶのだった。

初めこのハナを拾って育てるときに家族は、特に子供たちと随分話し合いを持った。

三人の子供のうち真ん中の男の子は動物は好きだが、世話はできない・・ときっぱりと言った。

「散歩する時間はないよ」とけんもほろろの言いようであった。

長男と末っ子の長女は気楽に「いいよ!」と言ったが、石元夫人は結局のところこの犬の一番の世話役は自分であること承知していた。

ハナは静かに石元家の家族になった。

最初はしぶしぶ承知したこの家の主人には無視されていた。

主人は幼い頃に犬に追いかけられたトラウマから全く解放されていなかったのだ。

しかし夫人が最近何か苛立っている様子をみて、多感な時期に入った子どもたちとの関係も複雑になっている彼女を直接手助けすることもできずにいる自分の夫としての負い目をここで少しでも解消できるかもしれない、という計算も実はあった。

ハナは幸いしにて大人しい犬で、無駄吠えをすることもなく、実に穏やかにその家に入ってきた。

                                       つづく

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犬はこうしてベッドの上にあげてはいけない・・というのは大事なことのようです。

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玉手箱 ミンミン亭にて
by akageno-ann | 2010-10-16 22:35 | 小説 | Trackback | Comments(20)

最終章のその前に・・・

小説はお陰さまでまもなく終章に入ります。
その前に今日はお話させていただきたいことがあります。

丁度今夜、最寄り駅まで車で所用があり出かけますと、駅前のティルームの閉ざされたドアの前に
「ありがとうの会」のお知らせがありました。

このお店の店主が先月天国に旅立たれ、その方のお別れ会が行われると伺っていたのです。
その会は「ありがとうの会」ということのようです。

店主のあの笑顔が目に浮かびます。
先月末 療養中の従妹を見舞う私の両親をこの駅に迎えに出ました。

本当はいつもここのティルームで 美味しいハンバーグをいただいてから従妹の滞在先に行く、というのが私たち親子の恒例でしたが、先月よりお休みのままのこのお店のご主人の容態を心配していました。

昨年末あたりからどうもご病気を押してお店に出ていらっしゃるな、と感じていたのですが、いつもにこやかでご病気のことも私たちに話されて、「実は癌なのですが、今はこうして抗がん剤を点滴しながらも日常生活ができるんです。私は入院よりこちらを選びました。その方が気持ちが元気でいられます。」そうおっしゃって、私たちに手作りのハンバーグなど提供してくださってたのです。

私はこちらのケーキも大好きで、「アンの贈りもの」という名前のりんごのケーキがあるんですよ!
ご夫妻で「赤毛のアン」のファンでいらして・・お店もその風情があるんです。
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この写真はカナダのプリンスエドワード島の映像です

お店の前にはご主人が尽力されて建てられた可愛い教会もあります。

第二の人生を人への奉仕と祈りを持って過されようとする気持ちが伝わりました。

この8月はあまりの暑さですし、おやすみされるのはお体に障らなくていい、と思っていました。
時々通りかかると、お孫さんとビニールプールの前に座られて楽しげにしていらしたし・・


しかし、9月になってもお店はお休みのままでした。気になっていたので、その日偶然お店の前に佇んでいらした奥様がいらしたので、思わず声をかけました。

「ああ・・アンさん、お話しなくてはいけないと思っていました。主人は9月はじめに亡くなったんです。たった2日だけ家で寝込みまして、そのまま家族に看取られました。最後まで全くわがままを言わない人でした。もう少し困らせてくれるとよかったんですけれど・・」

静かに語られる奥様の言葉にかける言葉もすぐには見つからずにただ泣いてしまいました。
ご本人の遺志のまま密葬されて、
でもこのお別れの会をするとおっしゃっていたので、必ず伺います、と申しました。

コーラスのグループでもクリスマス会は必ずお世話になっていたので、そのことを皆にお話しました。皆口々に寂しさを語り合いました。

何しろ女一人でふらりと寄りたいお店でした。
美味しいし、居心地がいいし、ふと一人で寄って、アンの関連の本やターシャチューダーの絵本など読めたんです。

良い本を惜しげもなくそこに置いて、皆と共有する時間を作ってくださってました。

寂しくて仕方ないです。両親もとても悼みました。まだ60台だったんです。

でも最後まで皆に安らぎを与えてくださった方です。
ご家族にも!もちろんのこと・・

お孫さんとも和やかに過されてました。

お幸せな人生ですね。そして天に召されたのですね。
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せめてお花をお届けしたくて、ブログの友人のmarimariさんのトピアリーを選ばせていただきました。故人のお写真の前に飾ってくださる、と 優しい奥様の微笑が有り難かったです。

その日から今日まで、故人に何かお礼の気持ちを書きたかったのですが、このブログも興味を持ってくださっていて、様々に趣味が似ていたので、こうして書かせていただけて私の心の重さが少しだけ融けたようにも思います。

いつまでも覚えていたい癒しの空間を6年間作っていただいて、それはちょうど私の従妹の療養の期間と重なりました。

従妹が突然脳内出血で倒れてから、というもの初めは何も言わずただこのお店で様々な見舞いの人々と待ち合わせたり、もてなしたりしていましたので・・

しばらくしてから、私の情況をお話しましたら、それはそれはいつも、暖かい気持ちで迎えてくださって、本当にありがとうございました。

あなたのそのお気持ちを引き継いでいきたい、と思います。

どうぞ安らかに・・・
by akageno-ann | 2010-10-13 23:01 | エッセ- | Trackback | Comments(19)

天国へ旅立つ犬

小説を書いています。

「かけがえのない日本の片隅から」part2
第3章 人と犬の関係 その8 天国へ旅立つ犬
由紀子はこの土地に移り住んで二年が過ぎようとしていた。

最初の一年は仕事で往復しているだけで、ここでの家庭生活をさして楽しめるように思えなかった。

子どももいないので、同年代の女性と親しくなることもなく、職場や学生時代の友人と食事したり旅行したりすることを楽しみとしていた。

夫は夜勤のある仕事なので、すれ違うことも多く、しかしそれもまた生活上は良い距離になっていて一緒にいるときは互いに労わりあう心も深くあった。

だが、チャチャや今度引き取った、トトと一緒に散歩することで、随分と犬を通した友達がができた。おどろいたことにはここに長く住む若い人々の中には子どものいない人も多くて、犬のいる生活を楽しんでいるようだった。

そんな中で一つだけ大きな哀しい出来事があった。

コーギー犬のコウちゃんの死に遭遇したことだ。

少し足の短いコーギーは顔は柴系で可愛らしく穏やかな性格のようで、チャチャとも随分親しかった。
コウちゃんのお母さんは年配の人だったが、息子さんがいて結婚したてのようだった。

彼はコウちゃんをことのほか可愛がりよく散歩していた。

ある日、公園の東屋であまりに長い時間佇んでいるので、由紀子は声をかけた。

「コウちゃんどうかしたの?」

そんな風に親しく話をするようになっていたのだ。

「癌になってしまったんです。」

由紀子より少し若いその若者は小さな声でそういった。

「え?それはまたなんということなの・・」

由紀子は言葉を失った。まだ若いコウちゃんがそのような病に冒されているとは思いもよらないことだった。

「今、抗がん剤を打ってはいますが、気休めなんです。

こうして随分歩くのが大変になっているんですよ。

薬を打ったあとはやはり苦しそうで、ぐったりしてますし、様子を見ながら看取ってやらねばならないと覚悟はしてます。しかし、なんでこんなことになるのか、わからない。母もがっくりしてるんですよ。」

彼はそう言って、肩を落とした。

由紀子はまだ犬を飼いはじめたばかりで、犬の死というものは全く遠い話だったのだ。

犬は亡くなると虹の橋を渡り、そこから天国に行けるのだ、という物語を読んだことがある程度で、家族として愛おしく思っていたものの死を覚悟している様子にふいに胸を衝かれた。

確かに、コウちゃんの腰は重くなり、前よりも歩みが遅くなっていた。

コーギーはもともとがゆっくり歩くので発見が遅れたのだという。

しかし、小さな体は病魔に侵されるのも早く、病気発覚から二ヶ月で癌は進行してしまっていたのだという。


最後の日までしっかりと面倒をみてやりたい、というその家族に、由紀子は感動した。


あまりかける言葉も見つからず、それからしばらくは散歩中も遠巻きに挨拶するだけだったが、コウちゃんの最後に近くなった時期は乳母車に乗せて、家族が散歩していた。

そしてある雨の夕刻、黒塗りのワゴン車がその家の前に止まり、小さな柩が運び込まれていた。

傘をさして偶然通りかかろうとした由紀子だったが、その異変に気づき、立ち止まると、家族と犬友だちのニ、三人が佇んで手を併せていた。

由紀子もすぐに事情を察してその柩の前に用意された祭壇に向かって手を併せた。


皆黙っていたが、静かに降る雨の音にかき消されるように、小さな嗚咽がそこに聞こえた。

                                   この章 終わる


登場人物 出来事は架空の物語です。次回は第4章 終章に入ります。
いつもご声援ありがとうございます。
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玉手箱の開店の様子
by akageno-ann | 2010-10-11 23:56 | 小説 | Trackback | Comments(12)

ワンちゃん天国!

小説を書いています。

「かけがえのない日本の片隅から」part2
第3章 人と犬の関係 その7 ワンちゃん天国

由紀子の話はなかなかに興味深い、感動的な話だった。

ネットでトイプードルのことを調べていたら、偶然あるブリーダーの経営破たんによって夜逃げ同然にその施設の犬たちは置き去りにされていて、動物愛護団体が主体になって犬たちの里親を探している、というニュースを目にしたというのだ。

トイプードルを飼いはじめて1年足らずで由紀子夫妻は 犬の存在が自分たち夫婦の絆も深めていることに気づいていた。チャチャの人懐こい性格は朝夕の夫婦の短い時間の会話を豊かにしていたのだ。

チャチャは初めこそ小さいので、可愛くて握りつぶしそうな感触など神経を使ったが、すぐに慣れて、夜はケージの中できちんと一人寝ができる犬であった。

ネットの写真で、一匹のチャチャと同じ毛色の痩せ細ったトイプードルを見たとき、由紀子は問い合わせだけでもしたい、と切望した。

メールでのやりとりから1ヶ月という時を要して、先方から里親としての認可が下りた。

その一ヶ月は決して長いものではなく、由紀子夫妻の気持ちの高まりにも充分な時間があった。

比較的近い場所であったので、その犬舎まで車で夫妻は迎えに行くことにした。

そして、最初の対面で由紀子は思わず涙してしまった。

同じ年くらいのこのトイプードルのあまりにみすぼらしい姿に、自然な同情を寄せていたのだ。

同じ犬種 色 大きさは長いこと放置されていたせいで痩せ細り、チャチャよりも小さかった。

何より不憫だったのは、新しい飼い主との対面におどおどと・・いいの?いいのですか?という風に不安いっぱいの目を向けられたときの印象をずっと覚えているだろうと思った。

しばらくは家の中で食事や水をしっかりと与え、栄養剤にあたる補助食も与えた。
しかし家に戻ってからその新入り君はすぐに馴染む気配を見せたことは由紀子夫妻の喜びであった。

この土地は犬を飼う人々が多く、散歩中の出会いも楽しい。

小学校からの帰り道の女の子たちはチャチャをみつけるとすぐに寄ってきて、触らせてくれ、と屈みこむ。

そこにもう一匹の可愛い新入り君がいれば、大人も子供も駆け寄ってその事情を聞く。

ある少女が思わずにつぶやいた。

「おばさん、ここはワンちゃん天国だね」

その明るい言葉にとても励まされた由紀子だった。

                                 つづく

 ★登場人物と設定などは全て架空のものです。写真は物語のワンちゃんと関係はありません。

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玉手箱
by akageno-ann | 2010-10-08 22:44 | 小説 | Trackback | Comments(11)

その6 ハナの病状

小説を書いています。

「かけがえのない日本の片隅から」 part2
第3章 人と犬の関係 その6 ハナの病状

ハナはまだそれほどの年ではなかったが、繁殖機能に問題があり、子宮内膜症と判断されていた。

子どもを生まないまま成長すると起こることが多い、と医師に告げられ、既に手術の機会を逸しているので、よく観察してやるように言われていた。

石元夫人は女の子であるハナのその病状が気の毒でたまらなかった。

こうして動物を保護する上にはきちんと体のことを小さなときから考えてやらねば可愛そうなことをすることになるのだ、と本でも読んでいた。

ポリープもできやすく、簡単な手術で胸あたりのしこりを取ったことがあるが、そのときのあまりの我慢強さに獣医師がおどろいたほどだった。

しかし、そのときに石元夫人は近くのその獣医師から、最近開業して評判のよい、少し離れた地域の動物病院にかかりつけを変えることにした。

家畜を多く看る医師とペットとして看てくれる医師との意識の差を感じたのだ。
痛みに耐えさせるよりも、痛みの少ない処置をしてほしかったのだ。
ハナは懸命にこらえたし、その後良くなったのだが、ずっとあとになってこのときの痛みに対する恐怖心が彼女に植え付けられてしまったことを思い知る時がやってこようなどと、思いも寄らなかった。

痛みというのは心身共に大きなダメージが残るのも、犬も人も同じなのかもしれない、と石元夫人は思っていた。

ハナは拾い犬であったが、石元家の大事な家族で、このしこり切除の手術ももう少し慎重にやってもらえれば、と感じたのだった。

そんな折に、トイプードルのチャチャの家の由紀子はもう一匹茶色の同じプードルを連れて歩いていた。

すかさず石元夫人は玄関から、歩いている由紀子に声をかけた?

「え?もう一匹増やしたの?」

「はいそうなんです、里親なんです、今!」

声をかけた石元に喜んで応える由紀子の事情をさっそく聞くことにしていた。

 ★登場人物と設定などは全て架空のものです。                                                                                            つづく


今日はこのハロウインの粘土フラワーアレンジメントの作家のご紹介させていただきます。
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従妹の療養室に飾りたくて、ネット販売でいただきました。
入金後すぐに丁寧なラッピングでお送りくださって、二人の療養中の方のお部屋を
楽しくしてもらいました。良心的なお値段で、優しい手作りが心を和ませてくれます。
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MARIGARDEN のmarimariさんの作品です。

そしてこのお花のお店は→☆
ご興味のある方は是非覗いてみてください。016.gif
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久しぶりの浅草へ
by akageno-ann | 2010-10-05 00:07 | 小説 | Trackback | Comments(4)

その5 ハナの嫁入り

小説を書いています。

「かけがえのない日本の片隅から」 part2
第3章 人と犬の関係 その5 ハナの嫁入り

中川家にもとても可愛がられているハナは、時々一緒に招かれて、お宅へ連れて行くことがあった。

キタロウはハナが自分の水入れから水を飲んでも、何も怒らず、そこにハナがいることが当たり前のように過ごす時間があって、拾い犬をしたことで、こうした穏やかな人間関係が保たれていることを、中川家も石元家も喜んでいた。

家族同士の気楽な夕食の中に、静かに睦み会う犬が傍らにいることの幸せは 犬を飼っている者でないと、理解できないかもしれない。

もともと中川家のキタロウは二代目のスコッチテリアで、丁寧に育てられ、気持ちの穏やかな躾の行き届いた犬であった。

拾われた犬のハナは人懐こい性格は皆に愛されたが、トイレの躾がしっかりできていなくて、自分の家の廊下などに時々粗相してしまうことあった。

根気強く教え込むことで他家では決してそのようなことはないのだが、まだまだ自分の家では何か甘えがあるのか完璧ではなかったが・・

しかし中川家での夕食は楽しいものだった。

2匹の犬は互いに犬の餌を与えられて、ひとしきり遊ぶと、キタロウは自分のケージに入って眠そうにしているし、ハナは そんなキタロウを見て、そろそろお暇の時間と玄関ホールに行って、飼い主の立ち上がるのを今か今かと待っているようだった。

「そろそろハナも眠いようです。今夜も楽しい時間をありがとうございました。」

と、頃合いの良い時と見て、石元夫妻は立ち上がった。

その夜の食事は和食であった。 活きの良い刺身や手作りの天麩羅、中川家自慢の寿司が主の手によって握られていた。

四人ともそこそこに酒を嗜むので、年の差はあっても楽しく盛り上がっていた。

                                                     つづく

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ミンミン亭の紅茶レッスン
by akageno-ann | 2010-10-01 23:46 | 小説 | Trackback | Comments(17)