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アンのように生きる・・・(老育)

少しご無沙汰しました。小説を書かせていただいてます。

かけがえのない日本の片隅から

LIVE 第二部 no.9 彷彿とする日々

病気の家族を持つと、それ以前の穏やかだった日々を心の底で感じ取ろうとすることがある。

だが、そこで絶望の淵に立たされているのではなく、その以前の日々に必ずや戻って行こうとする想いが強くなるのだ。

姉牧子が倒れてから日々は漫然と流れたようにも感じられた悦子だったが、彼女は仕事に穴をあけたことはなかった。

むしろ、自分が看護士であったことがこれほどまでに役立つことになるとは思えないほど、牧子のことを身の内に感じることができた。

牧子の娘直子のことも愛おしく思っていたので、第二に気になるところであったが、幸い直子の家族もしっかりとした家族形態を保ち、牧子の姑が直子の面倒をみていた。

牧子が悪いということは一つもないのだが、牧子の母は見舞いにきたその姑に対して

「ご迷惑をおかけして申し訳ないです。」といつも謝るのだった。

そのことが悦子はひどく悲しかった。

まだまだ日本の家族制度の中には因習のように嫁の立場が低いのだ、と悦子は実家のその母の態度を止めさせたかった。

だが自分は医療にかかわるものとして接することができる分、ある意味気が楽であることも感じられた。

病気になった者はもちろんのことだが、その周辺の立場が大きく浮き彫りにされていた。

直子はその祖母にあたる姉の姑と病院に来ることが多くなった。

急に少しだけ距離を感じた悦子だった。

                                 つづく→→☆
小説は来年に向けて続いていきます。今年もこちらへ読みにいらしていただきありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。

皆様のご健勝とご多幸をお祈りします。次回は元旦より連載します。

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さて、この子は誰?9月から癒しを与えてくれた友人の愛犬Ducky

ブログ「We love Ducky」 が、最終回を迎えます。 ご挨拶もしていますので、是非お立ち寄りください。

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by akageno-ann | 2010-12-31 01:07 | 小説 | Trackback | Comments(2)

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE 第二部 no.8 悦子の人生

悦子は少しだけ焦っていた。

二学期の学校が始まった牧子の娘直子がどんな思いで日々を過しているのか・・を考えた時に、この姉をこれからどういう方向に進めていけるのか、医療に携わる身でありながら、成す術が見当たらずにいた。

冷静になることは簡単であったが、その冷静さは明らかに取り繕ったものであったのを悦子自身もわかっていた。

本当はとても大変な病人を抱えたことは間違いないのに、なるべく大したことではないのだ、と思おうと家族皆が仕向けていたかもしれなかった。

だが実際は半身不随になる可能性の高くなった、このベッドに横たわっている姉牧子と大学受験に向かって進んでいるその娘直子をどうサポートできるのか?

誰もまだ実感として動いていなかった。

実家の両親はなるべく外の人を雇って姉の看病もしてもらった方がいい、と考えていた。

嫁ぎ先の佐藤家は 長男の嫁の突然の病に対して はじめは万全の態勢をとってくれていた。

しかし1ヶ月が経った頃、リハビリテーション病院を見つけてきた。

「とにかく、こういう脳卒中という病気は早い時期からのリハビリが大切ですよ。牧子さん自身にもやる気を忘れないでいただきたいのよ。」

そうプレッシャーをかけていた。

だが、そのときに受け答えする姉はまだそこに存在せず、本人の意志は尊重されることはまだ無理だったのだ。

医師の笹島に悦子はリハビリセンターの病院に移すことができるかを尋ねてみた。

笹島は

「その病院はまだできて2年しか経っていないので、実績はないのだよ。
だがそれゆえにしっかりとやっているところだよ。僕としてはお姉さんをそちらに移すのは賛成だよ。君も公私を分けにくいのは気の毒だと思っているよ。

悦子はこの水先案内をしてくれている、笹島のことがいつも心にあったことにも気づかされた。

                             つづく→→☆
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by akageno-ann | 2010-12-24 00:55 | 小説 | Trackback | Comments(6)

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE 第二部 no.7 牧子の人生

人は時々大きな間違いを犯す、大病をした人をみてまるでそこでその人の人生が終わったかのように判断してしまうことが稀にあるのだ。

悦子は病院に勤めているせいか、そういうことをしばしば目にしたり耳にしたりした。

その度に心で呟くのは、『そんな哀れんではいけない、病気をされてもその方の人生はそのまましっかりと続いているのだから・・』と。

今回の姉牧子の病気はとてつもなく大きな出来事だった。

一瞬にして牧子の人生が終わってしまいそうなほど・・そのことがわかってから悦子は葛藤というよりも心の混乱を来した。

そんなときにふと優しい手を差し延べてくれるのは医局長の笹島だった。

笹島はすでに50歳を越えていて、医師としても優秀であり、医局の中で、誠に人格者であった。

悦子はその笹島を敬愛していた。
笹島は7年ほど前に妻を心臓病で亡くしていた。

そのことを踏まえて更に医師として頑張る姿は スタッフの心を見事に一つにしているようであった。

「片山君、お姉さんは元通りにならなくとも、お姉さんの潜在する能力がまた必ずや開花することがあると思う。それはそれで君のお姉さんの姿なのだからね。」

笹島はそう言って、混乱している悦子の頭の中を整理してくれていた。

苦労している人の気持ちのわかる発言だった。

悦子はその言葉に癒されていた。

姉牧子が目ざめた日にも笹島はその病室を訪れて、姉の様子を看てくれた。

「お姉さんは若いのだから、ダメージが大きかった分時間はかかるが、本人のやる気によってもっともっとよくなっていくからね。これは普通の患者の家族には信じられないことかもしれないが、君はわかるね。」

その笹島の言葉はそのあともずっと悦子を支えることになるのだった。

                                  つづく→→☆[#IMAGE|c0155326_0211134.jpg|201012/21/26/|mid|425|284#]
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by akageno-ann | 2010-12-21 00:16 | 小説 | Trackback | Comments(5)

かけがえのない日本の片隅から
LIVE 第二部 no.6 生きる力

悦子はたくさんの患者と二十年近く出会い拘わってきた。

ようこそ自分はこの職業を選んだものだ、とこの頃になって、向いているかも知れない己の性格を自己分析してみたりしている。

姉牧子を自分の勤務する病院に迎えて看護するようになってから、看護士であったことをこれほどよかった、と思ったこともない。

冷静に第三者的に看ている自分をわかっていたし、それが今たった一人の姉妹の姉の事に、ただ悲しみでなくて、一人の患者として携われる幸せをかみ締めている。

そうでなければ、ひたすらに哀しみ絶望感に打ちひしがれ、ろくな看護もできなかったと思う。

悦子がそこに居る、というお陰で、牧子の娘の直子、また牧子たちの両親も、不思議なほど冷静な心で過せていたかもしれなかった。

家族の一大事はだれかこうして家族の中の一人が冷静にことを処すことで、時間は止まらずに済むのだ。

その一役をだれが担っていくか、神様はどうもそういう人材の登用が上手でいらっしゃるらしい・・・

牧子は二週間目に一度しっかり目覚めた。

それはちょうど悦子が勤務を終えて、彼女の病床に一人の妹して尋ねたときだった。

いつものように、手足をさすっていると、牧子は突如目覚め、

「えっちゃん、ごめんなさい」と

一言であったが、明瞭に言ったのだった。

                                  つづく→→☆[#IMAGE|c0155326_23282055.jpg|201012/15/26/|mid|768|1024#]

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by akageno-ann | 2010-12-16 23:27 | 小説 | Trackback | Comments(3)

第二部 no.5 生かされる

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE 第二部 no.5 生かされる

牧子の病状ははかばかしくなかった。

なかなかに目覚めないのだ。

娘の直子は面会時間をフルに使って 「ママ~~ママ~~」と声をかけ、手足をさすり目覚めて欲しい思いを日々ぶつけていた。

子供のように周りを憚らず大きな声で呼ぶので、時折立ち寄った悦子がそれを注意するほどだった。

悦子は直子の気持ちがわかり、その呼びかけは聞こえているよ、と言い、そしてもっと耳元で・・と促した。

トーンの下がった直子の声を後に目覚めた牧子は確かに聞こえていたと言った。

その牧子が目覚めるまでに12日がかかった。

12日はまことに長いようで短い・・そんな期間だった。

すぐに目覚めれば四肢のリハビリも早く積極的にできるのだから、看護士としての悦子もそこにはかなりの焦りがあった。

自分が中心にやってやりたいが、職場である病院での特別な行為は憚られた。

しかしその代わりを姪の直子にさせることにしていた。

私学に行っていた直子の夏休みは9月の第1週まであったので毎日毎日病院に来て、母親の目覚めるのを待っていた。

恐らくその力こそ、牧子が目覚める為に必要なものであった、と悦子は思った。

医学の力以外に働くエネルギーは愛するものの愛するゆえの力が働くのだ、と確信した。

目覚めた日に、悦子は勤務日ではなかった。

家で過していると、泣きながら直子が

「ママが、ママが目が覚めました。」

そう電話してきた、と思ったら

「またすぐ眠ってしまいました。」と今度はメールが来た。

そんな繰り返しが続くのだ、と悦子は今までの経験から思ったが、いてもたってもいられず病院に向かった。

その時の心はただ姉牧子を思う妹としての悦子だった。

                               つづく→→☆
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by akageno-ann | 2010-12-15 23:28 | 小説 | Trackback | Comments(4)

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE 第二部 no.4 生きるということ

牧子は生きられるということがわかった。

その夜の手術は執刀の脳外科医本田が手術室から牧子を乗せたストレッチャーをもう一人の医師と共に手術着のまま、手術室から現れたときに その生命のつながれたことがはっきりとわかった。

「手術自体は成功しています。命の危険性はかなりなくなりました。詳しいことは別室でお話します。」

そのように本田医師は待っていた牧子の家族を談話室に招いた。

時刻は翌日の未明4時だった。

カテーテル検査を行い、その診断が手術が可能だとわかって、手術室に入るまでに有に一時間以上の時間が経ち、家族は一刻を争うこの事態に気ばかり焦っていたのだが、医師や病院のスタッフは実に冷静に一つ一つを確認しつつ、手術を行った。その時間経過は5時間以上に及ぶのだった。

手術着の帽子だけを脱いで、術前と術後の牧子の脳のレントゲン写真を見せながらの説明も、外科医として、完璧な手術ができた、という感動からか、疲れも見せることなく、坦々と、だが力強く牧子が今生きていることを知らせてくれた。

「しかし、まだまだ予断の許さない状態ではあります。一番問題なのはいつ意識が戻るか、です。今の状態では1週間になるかもっと長くなるか、わからないのです。
こんこんと眠り続けあるひふっと目覚めることがあり、しかしその時に言葉が発せるか、また記憶がしっかりしているか?という問題は別なのです。」

悲惨な情況を物語る医師の話だが、その日の牧子の家族は、とにかく今牧子が生きていることが、またこれからも生きていくことが確認できた喜びで夢うつつだった。

家族は牧子の夫の佐藤真一郎、娘の直子。 そして牧子の父親の片山悟であった。

病院に駆けつけたときは牧子の母よし子もいたのだが、父親の悟が体を心配して妻よし子は一旦家に帰していた。

いずれ長い闘病生活になるであろう娘の面倒を一番みなければならないのが母親のよし子だとわかっていての配慮だった。

その想いの通り、牧子の手術は成功したが、これからいつまでになるかわからない長いトンネルが用意されていたのだった。

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by akageno-ann | 2010-12-12 23:08 | 小説 | Trackback | Comments(8)

かけがえのない日本の片隅から
LIVE 第二部 no.3 ママは死なない。

母親の名を呼び続ける 娘直子の声がしばらくの間 救急救命室の前の待合室から聞こえていたが、その声もかき消されるほど牧子の病状に対する処置が慌しく行われた。

直子も途中からその患者を姉だとは思わないようにした。

それは意外にたやすいことだった。
逆に言えば その方が自然だった。
その患者の姿は姉のようでは全くなかったのだから。

幸いにもこの病院には心臓外科 脳外科 消化器外科の医師が常駐し、そのほかに麻酔科 各医療機器の技師が24時間態勢で常駐していた。

従って カテーテル検査もすぐに行うことができ、牧子の病状が単純な脳血管からの脳内出血であることが判明した。つまり蜘蛛膜下出血のような危険性はないことがわかった。

だが、風呂場で倒れた時のダメージが大きくて、そのために起こった脳内出血の量が多く、その血液が既にゼリー状に固まり脳内の圧迫が大きくなっていることがわかっていた。

危険な状況はまだまだあり、脳内の血液の固まりを除去する緊急手術が行われることとなった。

病院では更に自宅待機中の脳外科の医師の出勤を要請した。

こういう日は、また他にもどのような救急患者が搬送されるかわからない。

そしてここの病院は手術室は複数あり、まだまだ受け入れることが可能であった。


手術が行われると決まった時点に 牧子と悦子の両親がタクシーで到着した。

少しいつもより年老いて見えたのは、時間が遅かったという理由だけではない。

それでも両親は毅然と構えていた。

その頃には娘直子もすっかり落ち着き、祖父母にあたる二人に

「おじいちゃん、おばあちゃん、大丈夫!! ママは絶対助かる。ママは死んだりしないから。」

と、勇気付けているようだった。

そしてそのことを直子同様悦子も強く感じていた。

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by akageno-ann | 2010-12-07 23:02 | 小説 | Trackback | Comments(4)

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE 第二部 no.2 牧子と直子

片桐悦子の携帯電話がなったのはそのときだった。

勤務中に私用の携帯電話に出ることは殆どないのだが、その日は小刻みに脈打つ心臓の鼓動を感じながら、それでもしっかりとした声で悦子は応えた。

「はい、何かあったの?」

その落ち着きのある声に相手もしっかりとした口調で話し始めることができた。
悦子の母であった。

「えっちゃん、仕事中に悪いわね。 今牧子が倒れてそちらの病院に救急車で運ばれている、と佐藤さんから連絡があったの。詳しいことはわからないけれど、直子も一緒に救急車に乗り、佐藤さんは自分の車を運転してついていっているって・・・」

母もこういうときであるのに、比較的落ち着いている。

「わかりました、第一報は入っていて、名前まで確認していなかったけど、お姉ちゃんに間違いないわね。今待機中です。お母さんどうします?来れますか?」

その問いに母は即答した。

「今、お父さんがタクシー呼んでくれたから行きます。」

「気をつけて、こちらは万全のことをしますから、急ぎすぎないで、安心して来てください。では」

悦子はそう言って電話を切った。

近くにいた若いスタッフは心配そうにそれをみつめ、次の悦子の言葉を待った。

「ごめんなさい、私用の電話です。やはり運ばれてくるのは私の姉のようです。よろしくお願いします。」

「はい!」

スタッフのキリリとしたその返事に悦子はこのときほど救われたことはなかった。

時刻は夜の9時を少し廻ったところだ。

夜の空気が澄んでいるせいか、かなり遠いはずの救急車のサイレンの音が聞こえる。
それは空耳ではなく、確実にこちらに近づいている、姉の病状が大したことでなければいいのだが、この病院を指定するところが悦子の不安を募らせていた。

救急救命室のサイレンがなって、患者が間もなく到着する旨を知らせた。

スタッフ4人がすぐさま受け入れ態勢をとった。

悦子は身内であるが、ここは彼女ならば冷静に対処できるであろう、と事情を知った医師も彼女の肩を軽く叩いただけで何も言わなかった。

余計な安心感を持たせるような不遜なことも言わなければ、哀れみの言葉もかけない。

悦子はここのスタッフの本当の思いやりを知ると共に、皆医学の道を邁進している素晴らしい人々であることをひしひしと感じることができた。

慌しくストレッチャーは運ばれ、最初に聞こえた声は


「ママ、ママ、ママ・・」と叫ぶ 牧子の娘直子の声だった。

胸に響くその声に、悦子は直子を抱きしめてやりたい衝動はあったが、

「直ちゃん、大丈夫、しっかりお母さんを呼んで励ましてやりなさい。」

と、厳しいような声で言った。

直子もまた、その悦子にすがろうともせず、大きく頷いて母親の牧子を呼び続けた。

牧子は日ごろの快活な彼女ではなく、顔を苦痛で歪めて、全身にかなり痙攣を起こしているようだった。

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by akageno-ann | 2010-12-03 23:00 | 小説 | Trackback | Comments(2)

これまでのお話

片山悦子は姉牧子の妹としてのんびりと目立つことのない幼少期を過した。
その保護されたような暮らしに不満を持っていたわけではなかったが、他家へ嫁いだ姉が殆ど実家を振り返らなくなって、実の両親への愛情の薄さに寂しさを覚えていた。
その想いがそのまま彼女を結婚から遠ざける一要因にもなっていた。
しかし姉やその家族、とりわけ姪にあたる直子への愛情は深く、自分も進みたかった音楽の道へ直子を導いたのも悦子だった。

意外にもそのことに熱心になった姉牧子に再び姉妹としての心がつながり喜んでいる悦子だった。

かけがえのない日本の片隅から
第二部波乱万丈な人生の幕開けno.1 忘れられないその日

片山悦子は43歳の夏を迎えていた。看護士としても責任ある立場にいて、病院は三箇所目になっていた。ここはあきらかに引き抜きによって招かれた病院だった。

関東にありながらも交通の便が悪く、最初この病院にこれだけの優秀な医師を集めてもどれほど患者が廻ってくるかは疑問視されていた。

だがこの時代口コミの紹介は病院探しの患者サイドには場所の不便さなど関係がないようであった。
また医院や医師の紹介状が必要であることもかえって信憑性があり初診の申し込みは引きも切らない状態にあった。

悦子の勤務体制も新人看護士の指導もあり、日々多忙を極めていた。

その夜は夜勤であり、ここのところ絶える事のない急患の搬送が必ず今夜もある、と覚悟して勤務についていた。

第一報は専用電話による連絡だった。

「年齢48歳 女性 脳梗塞または脳内出血による意識障害とみられ、体全体に痙攣があるもよう。そちらの病院に看護士の家族がいる、と言っています。」

皆スタッフは凍りついた。仕事としての病人への対処はどんなに慣れていても、自分の家族となるとまた違う意識が働き人によってはかなり臆病になる者もあるのだ。

その中でそれを聞いていた悦子は ふと同い年の姉 佐藤牧子のことを思った。

「受け入れます。」と電話で悦子は即答した。

誰であれ、今夜の最初の急患であった。

他のスタッフに医師の手配、緊急手術の可能性もあるので麻酔医師への連絡などを手際よく支持した。

『もしも自分の家族であっても冷静に対処しよう・・』

そう決意を持って急患の受け入れ準備に入った。搬送に40分を要するという。
距離的にも姉である・・と思えた。

そのとき、携帯に連絡が入った。

                                  つづく


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by akageno-ann | 2010-12-02 12:08 | 小説 | Trackback | Comments(4)