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「かけがえのない日本の片隅から」

老育

暑い夏だ。四季のしっかりしている日本にしては列島すべてが異常な暑さに見舞われている。
そんな中のなでしこジャパンの女子サッカーの快挙は同じ暑さに爽やかさを与えてくれた。

高校球児も被災地からも頑張り、ちょっとしたことにもめげそうになる、中年の自分に元気をもらえるようだ。

地域が40年前の新興住宅地だから、現在はどんどん高齢化が進んでいる。
皆に若い若いと言われる者たちも還暦の前後だ。

この世代は恐らくずっと若いのだから・・・と言われ続けるような気がしている。
それはそれで仕方のない時代だ。

そんな中、地域のことで家をも回っていたら、夕方になってそのうちの一人の年配の女性から

「痩せたんじゃない?あなたの後ろ姿を見ていたら、最近ほっそりしたと心配になって・・」

と言いながら、お手製の梅ジュースを一瓶くださった。

「いえいえ、太りすぎていたので、絞っているんですよ。痩せて見えたら成功で・・うれしい!」

そうおどけながらも その人の心に感謝した。

家族はそんなこと少しも心配しないのだから・・emoticon-0136-giggle.gif
若い人に元気でいてほしい・・と言った彼女は仲の良かったお嫁さんを40代で亡くしているのだ。

ご主人も早くに亡くなり、一人住まいで80歳を超えていた。

たまに尋ねるとそれは喜んで迎えてくれる。

坂の道を西日とともに回って歩いてくるのはしんどいはずなのに、温かい心が胸に響いた。

                                          つづく
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by akageno-ann | 2011-07-14 23:28 | 小説 | Trackback | Comments(3)
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「かけがえのない日本の片隅から」

老育

77歳という年齢はこの地域では後期高齢者と重なり喜寿を祝うという意味もあり、一つの区切りのと考えるのか、祝い金が出る。

毎年数十名の単位で増えていくこの年齢の方たちを見つめながら、恐らく自分はその年までは生きられないし、生きていなくていい・・と思っている。

日本の経済は逼迫する。

しかしこの年代の人々は戦中戦後の大変な時期を青春を奪われている。

その悲しさを秘めながらも精いっぱい生きてきている。

その上に子供たちを慈しみ、しっかりと育てている人々が多い。

めげることもあっただろうが、高度経済成長の中で前だけを向いて生き抜いてきている。

だから、しっかりと祝い、人生を静かに閉じるまでの手助けをしていきたくなる。

こうして戦争時代を生き抜いた人々のことを思い出し、苦労の少なかった自分たちの人生を置き換えて、みたくなる。

そうでないと、今の年を取った人々のことが、ただうらやましいからだ。

ひと時この人たちに「あなたたちは若い、若い人たちに先導してもらって・・」などと言われると辛かった。

自分たちは若い人たちに先導を頼めないような気がして・・

しかし素直に人に頼む・・という作業こそ、心をつなぐことになるのだと、少しわかってきた。

人に迷惑をかけない・・ということだけで暮らしてきたが、少しの迷惑や世話になることは、優しい対応につながる気がしてきた。

日々人と出会うことで、新しく知ることが多い。

明日はまたどんな日だろう。

日本の明日は明るいのだろうか?

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by akageno-ann | 2011-07-13 22:44 | 小説 | Trackback | Comments(0)
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「かけがえのない日本の片隅から」

老育

「苦労は買ってでも・・・」というが、しなくてもいい苦労を子供にはさせたくない。

そんな風に言った友人があった。

卑屈になったり、臆病になったりするからだ、という。
このように厳しい日本の経済状況の中にあって、必要以上に規制するような生活を子供たちにさせたくない、という中年の母親の気持ちが痛いほどにわかる。

日本が急に厳しい世情になった。

大きな災害を受け、まだその不安から抜け出せず、これからの状況を鑑みても、幸福感が薄い。
だが、その母親は続けた。

「今の子供たちはとても自由な生活をさせてきたし、苦労もなく、今現在もそのままに暮らせています。被災地の人々を思うと、この暮らしをありがたいと思うことが重要だけれど、子供たちは日々を楽しんで暮らしています。でも被災地の方たちのように、明日どうなるかわからない現状は同じなのです。せめて幸福である感覚はできるところまで保ってやりたい。そうすればその先に何があっても支えられ、また本当の意味で仕方がない、ということを感じられるでしょう・・」

そう聞いたとき、日本の太平洋戦争に突入する日本の状況を想像できた。

日本はあの暗黒の世界からここまで甦っている。

そこに期待するのだ。

だが、あまりに便利で快適な生活に慣れすぎてはいないか?

心の鍛えは必要だ、と敢えてここで提言しておきたい。

今の70歳代以上の人々は戦後の艱難辛苦を味わっている。

今こそ、その時代を思い起こし、若い人々を支えてもらいたい。

もてる力を「年をとったから・・」と簡単に引退をしないでもらいたい。

老育は老いてなお育ちゆく、というよりも老いつつまた人を育ててほしいのだ。

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by akageno-ann | 2011-07-12 23:09 | 小説 | Trackback | Comments(0)
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「かけがえのない日本の片隅から」

老育

自転車で怪我をした女性は高齢で一人暮らし、1年前にご主人を亡くされたという。

一瞬見せた寂しげな表情はあったが、きわめてしっかりとした対応に救急隊員も安堵していたかにみえた。

その後を心配したが、病院を訪ねたりしたら気を遣わせることになるから、そのまま数日を過ごした。近隣の人々も後になって救急車の理由を聞きに来たりしたから、皆遠巻きに心配されていた。

一週間が過ぎたころ、外出から帰宅すると、玄関に中年の男性と杖を突いた女性が立っていた。

タイミングよく今いらした、という。

正に先日の自転車の人だった。

笑顔で近寄ってくるその足は軽く引きずっていた。

「まあああ・・大丈夫ですか!?」一瞬私は彼女の快活さから誰?と思ったほど印象が違ったが、その足取りで分かった。

「あの節は、本当にありがとうございました。」

やはりしっかりとした声だった。

白塗りのセダンの車からお嫁さんも出てきて、にこやかな挨拶があった。

立派な菓子折りをいただいてしまった。

骨折には至らず、筋違いで数日の入院で済んだという。

うれしそうだった。 お嫁さんが預かっていた自転車に乗って帰って行った。

あの日駆けつけてくれた近所にもそのことを話、お菓子をおすそ分けした。
それほどたくさん入っていた。

それから数日してちょっと気になって、彼女の住む住宅地と名前から家をみつけて訪ねてみた。
田舎からのものがあったので、ほんの少しお土産を持って。

訪ねあるくうちに、ご主人ご存命の時は、染物屋さんだったそうだ。

立派なお宅で庭が見事だった。その佇まいがあまりにきちんとしているので、彼女のあの日の姿とぴったり重なった。

そして息子さんのもとにいらしたのか、雨戸がしっかり立てられていた。

ふとほっとした。

またもうしばらくして訪ねてみよう、と思った。

自分の生活をたった一人であれだけきちんとしている様子が垣間見れて、とても学ばされた。
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by akageno-ann | 2011-07-10 01:06 | 小説 | Trackback | Comments(1)
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「かけがえのない日本の片隅から」

老育


その日、私はコーラスのレッスンを終えて、暑い日差しの下、遅めの昼食の準備のために家に向かっていた。
公園の前に差し掛かったところで、一人の女の人が自転車をちょっと降りた、という形で佇んでいた。笑顔がみえた。私の方を見ている。思わず会釈をした。

「あの、すみません、救急車を呼んでいただけませんか?」

「え?」

突然の言葉に私は驚いて近づいた。

「どうしたというのですか?」その人はまるで自転車をちょっとおりて一休みしているような形だったのだ。私は一瞬不信に思った。

「ここまで病院の健康診断をしてきて、坂を下る前にちょっとスピードをゆるめて片足をついタラ、そのまま足がぐにゃりとなって、このまま動けなくなったんです。多分骨折をしたのかもしれません。」

そのよどみない言葉に携帯電話を持っていた私はすぐにダイヤルしようとしたが、電池が殆どなくて、目の前の自宅に急いで受話器を取りにいった。

舅にも状況を話したが、いつもの私のお節介だと思ったらしく冷ややかな反応だった。

とにかく救急車だ。その人は名前と年齢と住所をしっかりと話してくれた。

救急車がくる少し前に、ガスの計測をしていた若い女性が声をかけてくれて、救急車に手を振ってくれた。7分できてくれた救急隊員は親切だった。

事情を簡単に説明したら応急処置のあとに指定した病院に向かった。

家族は遠方で昨年ご主人を亡くし一人暮らしだという。

すぐに連絡をとるようにいった。自転車をしばらく預かることにした。

内科の病院の帰りだというから本人が保険証もしっかり持っていたようだった。

77歳だといった彼女のしっかりとした姿は見事だった。

ただあまりにしっかりとしていたので、通り過ぎた車は何台もあったらしいが、車を止めるほどの異変を感じなかったのだ。

心配したが、救急隊員は私たちに礼をいい、彼女もまた感謝の言葉を何度も言って車は走り出した。

その間に近所の人々も心配して出てきていた。

                                     つづく
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by akageno-ann | 2011-07-07 23:22 | 小説 | Trackback | Comments(1)
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「かけがえのない日本の片隅から」

老育

人の思いは究極の時にほとばしり出るらしい。
今回の政府のM大臣退任のニュースに、裸の王様の話を思い浮かべた。
還暦を迎えながらも身に着けておかねばならなかった精神が備わっていなかったのは、その人とその周辺の方たちの責任がある。
だが、一番大切なのはそこまでの生い立ちに謙虚になるべきシチュエーションが少なかったのだろう。
言葉は発してしまうと、強い印象の残る部分のみが堂々巡りする。

何が悪いのか? 追い詰められた人間は心が雑になる・・・

あまりに大変な場面に上に立たされると完全に考えが空転して、悪態になるのではないか?

一般人までもこうして考えをめぐらす今回の復興への道の遠さ・・
日本の行く末・・・

目をそらさずに心を全開にして進んでいきたい、と個人的にも思いを強くしている。

人のふりみて・・とはまことによく言ったものだ。

窮地に立たされた場合の自分を想像すれば、人を単純には避難できない。

今の日本が立ち直って行く為に、東北の人たちが黙々と生きることをしている日々、それを感じて
謙虚に生活していかなくてはならない。

この大震災から日本が豊かな国に戻るには相当の時間がかかりそうだ。

年老いた人たちもまだまだ元気で知恵を授けてほしいし、動ける人は老若男女かかわらず、できることをしていこう。

人を批判する暇に進めなくてはならないことが多すぎる。

老育はすでに遅し・・されどここからが正念場だと思う。

                                     つづく
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by akageno-ann | 2011-07-05 23:30 | 小説 | Trackback | Comments(1)

老育  若い人との絆

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老育

地域のきずなの見直しが昨今ずいぶんと言われるようになった。
3月11日の大震災以来、地域の力の大きさは皆が少なからず感じている。
そんな折の地域の役員の輪番が回ってきて、何も役員に名を連ねなくともよかったのだが、皆が役員決めに押し黙る瞬間を黙っていられない性格のものは後悔覚悟で挙手してしまう。

それは祖父母のいや曾祖母からの受け継ぎのような気もしている。

人がいい・・というか 要するにお節介なのだ。

曽祖父は小さな村の村長だった。

村に人々の細かなことに目を配っていたのはその妻の曾祖母で、のんびりと穏やかな村長をしていた、と聞く。

祖父は中学校の教員だったから、そのまま村の教育委員会に長く籍を置いて、子供たちの育成を見守っていた。

そんな教え子たちに支えられる老後も幸せだったのかもしれなかった。

女に生まれた私は 何かの代表になったりするのは心臓に負担が来るほど、いやなのだが、労力を惜しみたくない、とは思う。

できることはなんとかしていきたいが、そんな風に役を引き受けると、人々の中には好きでやっていると、必ず思うらしい。

そんな思いを最近は素直に口でできるようになった。

するとどうだろう・・

そんな共感を得られることもままあるのだ。

皆 つらい思いを心に秘めて、仕方がない・・という気持ちから  少しでも何かの役に立ちたい、という気持ちが育ってきている。

そんな中に新しい人との縁と絆が生まれてくるのを感じることもある。

先人の辿った道を振り返りながら、若い人々の新しい能力に触れながら、まだ育てることのできる自分の力を見直す時期かもしれない。
                                       つづく

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友人が東北に心を寄せる自分に南部鉄の箸置きなどプレゼントしてくれました。
その優しさが身に染みてます。


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by akageno-ann | 2011-07-04 00:16 | 小説 | Trackback | Comments(1)

かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。


by ann