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私の中のマシューカスバート

アンの養父マシュウは大変内向的な性格で生涯独身で妹のマリラと農場を営みながら暮らしを坦々と続けていた。そして不運なことに最期は心筋梗塞というあっけない週末であったが、優しい最愛の養女アンに看取られて生涯を閉じたのです。

私が愛読していたこの「赤毛のアン」の物語を40才を過ぎてから、改めて自分の心の中に深く位置づけるようになったあるきっかけがあります。

私は若い頃石州流の茶道を習っていましたが、その師匠は素晴らしい女性でした。
1昨年92歳の天寿を全うされたのですが、そのご主人にあたられるK先生のことを
お話します。

とても高名な数学者でいらっしゃいましたが、私にとっては茶道の師のご主人ですので、
あえてお名前はイニシャルにさせていただきます。

10年ほどお茶の手ほどきを受けた後、私は年に何度か遊びに伺わせていただくという
気楽なお付き合いを後年させていただいてました。

お話も大好きな素敵な師でしたが、その頃書斎でお仕事されていらっしゃるK先生が
お茶の時間に同席されるようになりました。

難しいお話ではなく、よく学会などのついでにあちらこちら周られる国内外の旅のお話が多かったです。

私のインドの話、旅の話をお聞きくださり、大変興味を持ってくださっていました。

そんなわけで、私も図々しく当時エッセーを書いていた同人誌を差し上げたりしたのです。

そんな平成8年の1月9日に次のような感想文を見事なタイプと直筆のサインとで頂戴しました。(以下抜粋)

「・・・『こだわりの街にて』のケヴェックシティを中心としたカナダ紀行は私にとって圧巻の随筆でした。シティ到着前夜トロントのホテルからご覧になったナイヤガラ瀑布の天地を揺るがす壮大な景観に、高揚した気持ちで寝付かれなかったとのお話については、私も1968年7月の紐育州ロングアイランド半島所在の州立大学で開催される日米会議に出席するため、初めての海外旅行というので、warming up のため1週間ほど早く出発して、ハワイ、ロスアンジェルス、ボストン、ニューヨークへと乗り継いで行く途中、ロスからバッファローへ飛んで、そこからバスでナイヤガラ瀑布見物に出かけました。
しかし、その時パスポートの携帯を忘れたために、レインブリッジを渡ってカナダ側から見物できず、外国人用の重い雨コートを頭から全身をすっぽりと包んで滝壺近くに近づくにつれて距離に反比例して、霧が濃く立ち籠めて一寸先も見えなくなり、霧に濡れるだけがお土産になりました。
貴方のトロントからのお話はその意味から大変羨ましく存じました。

お目当ての街ケヴェックで泊まられたシャトーフロントナックという長い名前のホテルの部屋の佇まいについての描写は、「とてもしっとりとして美しく女の子の見る夢」のようであったと述べておられますが、私たちには「この女の子は貴方自身」と想像しました。

そして、この女の子の思いは、ケベックシティを流れるセントローレンス河口から広がるセントローレンス湾に浮かぶプリンスエドワード島の「赤毛のアン」の話に発展するのですね。
これは貴方自身「アンの話に憧れた少女時代を思い出して」と述べておられますので、上記の私たちの想像は正に適中ですね。

私は前から「赤毛のアン」という有名な小説があることは聞いておりましたが、そのストーリーはどのような内容のものであるかは、全く知りませんでした。
この度、貴方の文に刺激されて、百科事典や世界地図、そのほかを調べて次のように勉強をしましたので、一生徒として、その結果を箇条書きに申し上げますので、採点をお願いします。」

と、いうお便りに添えて、「赤毛のアン」についてのレポートが添えられていたのです。

そのお便りを感動して読ませていただいて迎えた夕刻、実家からの連絡で
その手紙の書き手であるK先生の訃報に触れたのです。

人生の中の不思議が七つあったとすれば、このエピソードは正にその中の1つです。

次回はまたそのレポートをここに写して見たいと思っています。

お読みいただきありがとうございました。
アニメサイトよりいただきました。
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by akageno-ann | 2008-12-19 11:45 | 小説 | Trackback | Comments(13)

Commented by さりすけ at 2008-12-19 13:47 x
K先生はとても謙遜で素敵な方だったのですね。本当にそれがひしひしと感じられます。人生の中で宝石のような方との出会いがいくつかあるとすれば、本当に姉さんにとってのその出会いはそうだったのでしょう。人が情熱を持ってかくものは、やはり読み手にもその感動を与えるのだと今回も感じました。これからも楽しみです。
Commented by ka-chan-anone at 2008-12-19 16:12
CHILです。
人と人との出会いって素敵ですね。
手紙を受け取った日に訃報が・・・なんて、すごい偶然を感じます。
すごい偶然と言うのは、「必然であった」と思うんです。
annさんとK先生の出会いが・・・つながりが・・・そうさせたように感じます。
annさんの中で永遠に続くつながり・・・。

アンとマシュウが出会うべくして出会ったように(^^)
Commented at 2008-12-19 22:01
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by crystal_sky3 at 2008-12-20 08:30
私もマシュウという人そのものが大好きでした。口数も少ないけれど、温かい気持ちでアンのことをいつも見守ってくれて、マニラがちょっとキツイことをいっても、まぁ、いいじゃないか・・・とやさしく諭してくれる。
アンがこの二人に出会ったのも運命だったのかもしれませんね。
マシュウがアンと出会えたことによって幸せな人生を過ごせたと同じように、きっとK先生もannさんとの出会いによってアンの世界を知ることが出来て、きっとお幸せだったのではないかと思います。
Commented by k-coco at 2008-12-20 17:07 x
ann さん。こんにちは!
深く感銘を受ける文章ですね。
K 先生の「一生徒として...」の文面の中に優しさが溢れていて
感激しました!
日々、人から学ぶことが多く...
私も出会いの不思議さを感じながら、出会いに感謝!
大切なお手紙になりましたね。

ご報告が遅くなりましたが、「原書で親しむ anne の世界」
松坂さんの発音がとてもキレイで
素敵な景色を観ながら私も勉強しています。^^;
アンとモンゴメリの人生が重なって...
一緒に旅している気分になりとても楽しいですね。
ann さん ありがとうございます!
Commented by ann at 2008-12-20 20:09 x
さりちゃn、読んでいただいて感謝です!
こういうお話はとっても個人的なのですが・・でも私にとっては
大切なことなので・・わかっていただけて嬉しかった!
Commented by ann at 2008-12-20 20:10 x
CHILちゃん、素敵なコメントでありがとう
この方のことをまた10年ぶりに思い出せてよかったです
なくなる直前にアンに思いを馳せていただけたことが嬉しいことでした。
Commented by ann at 2008-12-20 20:11 x
鍵コメちゃん・・なんでも話せてうれしかった・・ありがとう
Commented by ann at 2008-12-20 20:12 x
クリスタルさん、マシュウそのものを書いてくださってありがとう・・
若い頃はそんなに思わなかったのに自分が彼の年に近づいてきて
いいお年寄りだと思うようになったのです・・
アンのような子供とも出会えているような気がしてます。
Commented by ann at 2008-12-20 20:14 x
K-cocoさん
本当にユーモアのある方で、生徒になって新しい学習をされることが大好きな少年のような方でした。
松坂さんとのアンの英語の勉強愉しいですね・・私この前も見てたのですが・・風景ばかりに目が行ってしまいます・・
Commented at 2008-12-21 03:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ke-ko617 at 2008-12-21 21:57
私のブログにお立ち寄りくださりありがとうございました。
上記の記事。興味深く読ませていただきました。
次回のレポートも楽しみにしております。

私にとっての「赤毛のアン」は
昔、テレビでやっていたアニメです。
細かい内容は忘れてしまいましたが、
アンが友達とお茶会をしたような気がしますが・・・
子供心に「お茶会」という響きに心をときめかせた覚えがあります。^^
Commented by ann at 2008-12-21 23:32 x
Ke-ko617さん、ようこそお越しくださってありがとうございます。
感激です・・そうです。アンはお茶の時間をとても大切にしていました。
あなたのブログを拝見しているととても文学的で創造的です。
これからもどうぞよろしく・・
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