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第１章　その７

私は平成生まれ、両親は昭和の戦後生まれだ。
祖母は大正の終わり頃に生まれたそうだ。

祖母のふるさとは高知県、でも若くして東京に出て、その後結婚してその近県のT県に住んだ。祖母は定年まで小学校に勤めていたらしい。

祖父は定年まで勤めたが退職後病気で早逝した。

だから私は祖父をしらない。音楽が好きな人で当時の男の人には珍しくピアノやギターが上手だったとよく親戚の人の話題になった。

父はおばあちゃん似で絵がうまい。でも歌わせれば歌も上手だった。
ただ病気してから、ちょっと音程が取りにくくなっていて、私とよく小学唱歌を元気に歌う。
それもリハビリなのだ。

一緒に歌わないと口があまり開かない。
最初さすがに私は照れたけれど、今は週に２度ほどいくリハビリの施設の人と一緒に私も歌うことがある。

学校が休みだったリ、早く終わって迎えにいったりすると、父はもちろんだが、施設に来ている他の利用者の人たちも喜ぶ。

みんな人との交流を待っているんだと思った。

Oさんというおじいさんは、普段は怖い顔して結構文句を言っているのに、私が行くとにこにこするような感じがする。

スタッフの人もそう思っているのか、「Oさん、理子ちゃんが来ましたよ。」
と、決まって声をかけるのだ。

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そう、私は片山理子といいます。

父は片山翔一郎、母は片山美沙です。

両親は私の生まれる前に三年間、インドで暮らしていました。
父がそこの日本人学校に勤めたからです。

でも私はその時のことをよく知りません。

最近になって、母がいろいろな思い出話を父にするのを聞いて、少しずつわかるようになってきました。

とても面白い経験だったのだそうです。

父も最初はあまり反応しなかったり、『僕は行ってない』なんて言ってたけど、
最近は随分母と笑いながら思い出話をするようになりました。

不思議なことに父はその頃あまり絵を描かなかったらしく、母は『今こそ描いたら？』

と奨めています。

私もその絵を見たいと思っています。

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父は今、自分の過去と現在をつなげるような作業を頭でしているのかもしれない。

でもあまり難しいことで悩むのは嫌みたいだ。

とても平和主義になった父を母はちょっと物足りないみたいだけれど、

「あれだけ、色々と前向きに頑張ってきたのだから、もしかしたらこれからはこうしてゆっくりのペースで良いのかもしれないわね。」

そんな風に母は言っていた。

私はこの両親の歩んできた軌跡に興味がある。

つづく


「小夏庵」ものぞいてくださいね。

皆様の声援のお陰で現代小説にも返り咲きました。
ありがとうございます。