介護・・・
第1章 その8
理子は感受性の強い子ではあったが、どこかのんびりしていてあまり闘争心を持つほうではない。
そういう子供に育てたいと思っていたのは美沙だった。
理子の祖母である信子は一人っ子の理子をかなりスパルタで教育しようとしたが、愛くるしい顔で『ばあばあ』と懐くので、結局かなり甘やかしていまっていた。
しかし、美沙は出産後非常勤講師なども辞めて、理子を育てることに専念した。
姑である信子は彼女自身が息子を保育園に預けながら教師を続けた人なので、美沙のその姿勢にはちょっと納得がいかなかったのだが、息子の翔一郎が美沙が家にいることを望んだので、何も口は挟まなかった。
最近は保育園の教育もしっかりしていて、子供たちが元気に育っている様子も知っていたので
あまり神経質に育てたくはなかったが、祖母である自分は外野に回らねばならないことも承知していた。
だが、理子は伸びやかな天性があり、そのまま素直に伸びていった。
一人っ子も多くなった昨今、それゆえの弊害があるようにはなかったし、美沙たちの40才に近い年齢になって授かった子の子育ては、意外にも穏やかでゆったりとしていたのだ。
美沙はその時を待っていたかのように、日常生活に焦りもなく、理子が眠っている時は傍らで読書したり編み物したり、時には一緒に昼ねしていた。
公園に出るようになってからは、近隣の自分よりも若い母親たちと盛んに交流し、それまで信子に任せていた近所付き合いを一手に引き受けていた。
やはり子供がいるというのは、家庭が豊かになる。
信子との嫁姑の関係も理子の存在だけで まったりとした空気に包まれていた。
理子はその二人の女性との日々の生活を 生まれでた時から自然に体得しているというのは、その後の暮らしに影響するようだ。
一見理想的に営まれているようなこの家庭でも、一つ大きな事件がおこればどうしても様々な歪が一時に出る。
特にしっかり者の理子の祖母信子は、一人息子で50才までを比較的順調に過ごしてきた翔一郎が脳卒中で倒れ、一瞬のうちにそれまでの生活が奪われたことを心の中に取り込むことができなかった。
理子は多感なティーンエイジャーになっていたが、祖母の悲しみを誰よりも理解できた。
母親の美沙は、理子妊娠当時、前置胎盤で不安と共に過ごしながらも元気に生まれでた理子の存在にずっと感謝してきた。
そして夫翔一郎の突然の悲しい変化にもこの理子の存在が最初から大きなものであったことを一番よくわかっていた。
その時から始まった、夫の介護であったが、娘の存在に感謝していた。
つづく
「小夏庵」ものぞいてくださいね。
皆様の声援のお陰で現代小説にも返り咲きました。
ありがとうございます。
by akageno-ann | 2009-01-11 22:58 | 小説 | Trackback | Comments(10)
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higeji-musume at 2009-01-11 23:13
CHILです。
父が倒れた時、私は特に何もできなかったのですが・・・
というか精神的に不安定になっている父にイライラしてしまったりと・・・ダメな娘です・・・、でも母は私がいてくれてよかった。と言ってくれます。
娘っているだけで、それだけで、力になれていたりするのでしょうかね・・・。
翔一郎さんには3人の女性が見てくれている。
それぞれの立場で・・・。
この「それぞれの立場」が人を支える上でいいのでしょうね(^^)
父が倒れた時、私は特に何もできなかったのですが・・・
というか精神的に不安定になっている父にイライラしてしまったりと・・・ダメな娘です・・・、でも母は私がいてくれてよかった。と言ってくれます。
娘っているだけで、それだけで、力になれていたりするのでしょうかね・・・。
翔一郎さんには3人の女性が見てくれている。
それぞれの立場で・・・。
この「それぞれの立場」が人を支える上でいいのでしょうね(^^)
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akageno-ann at 2009-01-11 23:22
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panipopo
at 2009-01-12 16:32
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annさ~ん、こんにちは☆
理子ちゃん、ちょっと親近感が湧きます。性格的に。。。もしかしたら、AB型!?^m^
美沙さんと信子さんの関係の潤滑油みたいな理子ちゃん。
翔一郎さんも、とってもかわいがっていた感じですよね。
これからの展開を楽しみにしています☆ 応援も!
理子ちゃん、ちょっと親近感が湧きます。性格的に。。。もしかしたら、AB型!?^m^
美沙さんと信子さんの関係の潤滑油みたいな理子ちゃん。
翔一郎さんも、とってもかわいがっていた感じですよね。
これからの展開を楽しみにしています☆ 応援も!
♪ やはり子育てにも個性が出てきますね。
おばあちゃんの信子さんは、美沙さんに孫を自分に預けて欲しいなあって気持ちがあったのかも。
基本 実家をずっと離れることがなかった翔一郎さん。
インドに向かったとき、そして今回の入院。
信子さんはやはり寂しい気持ちになったことでしょうね。
子供・・・孫の力ってすごいですね。
その存在だけで 家族に活力を与えることが出来るんだもの。
不思議な命のつながりに感謝ですね。
おばあちゃんの信子さんは、美沙さんに孫を自分に預けて欲しいなあって気持ちがあったのかも。
基本 実家をずっと離れることがなかった翔一郎さん。
インドに向かったとき、そして今回の入院。
信子さんはやはり寂しい気持ちになったことでしょうね。
子供・・・孫の力ってすごいですね。
その存在だけで 家族に活力を与えることが出来るんだもの。
不思議な命のつながりに感謝ですね。
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ann
at 2009-01-13 22:13
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ann
at 2009-01-13 22:14
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cacaoponさん、子供、孫の力のすごさは子供のいない私はものすごく感じてます・・だからこそ子供の威力を書いてみたいです。
こどもの持つエネルギー優しさをとても感じることができます・・
それに気づきつつ接していきたいと思ってます。
こどもの持つエネルギー優しさをとても感じることができます・・
それに気づきつつ接していきたいと思ってます。
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crystal_sky3 at 2009-01-14 00:25
こんにちは♪
まとめて読ませていただきました^^
理子ちゃんは翔一郎さんと美沙さんのお子さんだったんですね。
なんだか急に親近感が沸いてきました。その後の美沙さんと
翔一郎さんの関係はどうなったんだろう・・・って思っていたので、
読み進めていくうちにお二人の存在が明らかになって驚きました。
これからも楽しみにしています!
まとめて読ませていただきました^^
理子ちゃんは翔一郎さんと美沙さんのお子さんだったんですね。
なんだか急に親近感が沸いてきました。その後の美沙さんと
翔一郎さんの関係はどうなったんだろう・・・って思っていたので、
読み進めていくうちにお二人の存在が明らかになって驚きました。
これからも楽しみにしています!
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fmutu
at 2009-01-14 11:13
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annさん、こんにちは!ほほえみ地蔵見ていただき感じていただけて嬉しいですm(__)mありがとうございます!皆様の様子で お父さまが今まで ご家族を愛し大切にされてきんだなぁーと思いました。素敵な ご家族ですね(*^_^*)
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akageno-ann at 2009-01-22 09:14
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akageno-ann at 2009-01-22 09:15