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気持ちの拠りどころ

第2章 その7

父の介護で大変なのは、実は父の周辺の人々とか変わり方であった。

私は娘の立場だから、毎日顔を出すだけで周囲からは「いい子」の印象で受け入れてもらっていた。

でも母は常に父の治療とリハビリの総監督で医師や介護福祉士、ケアマネージャーという父の為に様々な計画や立案してくれる人々と話し合い関わっていなければならなかった。

介護をする・・という特殊な仕事に関わる人たちは総じて、親切で慈愛に満ちている。

特に最初は物腰の柔らかさやこちらの話をよく聞いてくれる点でも申し分ない。

だが三ヶ月ほどたった頃、ケアマネージャーとの話し合いでは少々様子が変わってきた。

母は「申し訳ありません。」と深々と頭を下げることがしばしばあった。

そうすると、不思議と言いすぎた、と思うのか、それ以上いわれることはなかった。

そう、父が結構スタッフにわがままを言うようになったのだ。

私には甘えるが、わがままは言わなかった。

むしろ私は父はよく頑張っていると思うのだ。

今までの父が本当に弱音を吐かない人だったから、こうして突然の病を得た今、少し休ませてあげたかったのだ。

つづく

小夏庵ものぞいてくださいね。

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by akageno-ann | 2009-01-28 20:31 | 小説 | Trackback | Comments(9)

Commented by cacaopon at 2009-01-29 11:31 x
♪ まずは無事に生還したことを喜びたいのですが その日から リハビリの試練が待っているのですね。
そうかあ 子供返りのような事が起きたりするんですか

絵が上手な翔一郎さんだから 結構手先も器用だったんだろうなあ。
それが 言葉も作業も 自分の思うようにはかどらないと やはり 焦りは感じますよね。
自分に対しても 家族に対しても。

それを冷静に見守る事が出来る理子ちゃん。 
確かに子供って とてもクールな目線で家族を眺める事がありますね。私自身 そんな子供だったように思います。

親は どうしても 感情的に子供を見てしまう・・・

なかなか冷静に とはいかないものです。 えへへへ~。 

美沙さん 介護、頑張ってますね。 ほんと 頑張りすぎなくらいに。
Commented by higeji-musume at 2009-01-29 15:31
CHILです。
ちょうど父のブログのほうを更新しました。
まさに看護士の手を焼かせていた頃の話です。

美沙さんが謝る姿に、私の母の姿が重なりました。
でもそんな妻の姿に本人は気づかないないんですよね。
翔一郎さんも、気づかないというより今は気づけない・・・
気づいても自分を止められない・・・
脳の病気は本当にこわいです・・・。
Commented by panipopo at 2009-01-29 19:29 x
ann姉さん、介護のことって難しいんですね。
きっと翔一郎さんも、自分の体が思い通りにならないことに対してのいらだちもあるだろうし。。。美沙さんもできた人ですね~!いつもながら、感心してます。さすが、大人の女性って感じだけれど、心がいつも張りつめた状態なんでしょうね。ちょっと疲れが出やしないかと、心配。。。

こういうときに頼りになる人が欲しくなる気持ち、よ~くわかります。
Commented by さりすけ at 2009-01-30 11:51 x
これからどうなるんだろう。本人とそれを取り囲む家族や介護の人たちの人間模様、もっともっと読みたいです!
Commented at 2009-01-30 17:12
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by akageno-ann at 2009-01-30 20:53
cacaoponさん、理子は私の中の子供像・・というのではなく
我が子でない子供の様子からいろいろ感じたことを書いて見ました。特にこの時期の女の子の感情は大人以上のものが垣間見られることがあるようです。それは自分の少女期のことを思い出しても、今より鋭かった・・と思えます。
人はそれをおませ・・といいますが、実際はそれが本当の感情なんですね・・
Commented by akageno-ann at 2009-01-30 20:54
CHILちゃん、一緒に書いていける幸せを感じています。
こういう病気をもった家族を持つものにわかる思い、人々に
知らせていきたい・・と思うのです。
だれもが色々な意味で関われるし、関わって欲しいという気もあります・・もちろん義務でなく自然な流れで・・娘の存在は大きいですね・・
Commented by akageno-ann at 2009-01-30 20:57
panipopoちゃん、介護の感情って双方の行き違いが結構あって、わかっていてもなかなか添っていけないことがありました。
でも、こうして書いていくととても客観的になれていいんです。
ここへ書いてくださる感想が、またどれだけ自分の想像を膨らませてくれていることか、感謝でいっぱいです。
Commented by akageno-ann at 2009-01-30 20:58
さりちゃん、私もまだ暗中模索のことがあり、でもだからこそ閑雅ながら進んで生きたいです。そしてそれは真っ暗闇ではなく、いつもなんらかの光が感じられます。
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