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子供のもつエネルギー

第3章 その1

平田めい子は二週間とあけずに翔一郎の病院に顔を出すようになった。

必ず事前に美沙に電話を入れて時間を合わせてリハビリ病院にやってきた。

その都度に小さな花籠だったり、お菓子だったり・・と見舞いの品を携えて。

「あまり気遣いをしてはいけないわ。大事なおこづかいでしょう?」

美沙は喜びながらもそう辞退したが、めい子はちゃっかりと

「でもいつもご一緒にお食事ご馳走になってしまう私ですよ・・」

と舌をだした。

理子も一人っ子なのでめい子の存在は次第にうれしいものになっていたのだ。

無理のない形で一緒に食事やお茶をして3人の会話は打ち解けていった。

「お母さんたちはお元気なの?」

美沙はメキシコの日本人学校で校長として赴任している、めい子の両親平田夫妻について聞いてみたかった。

デリーでは親しくしていたにも関わらず、美沙自身に子供がいなかったせいか、平田よう子は次第に美沙から離れていた。

美沙がそれなりに輝いていた時代で、同年代のよう子は美沙の思っていた以上に嫉妬心があった。

今になってみると美沙はそのよう子の素直さが懐かしく思い出される。

当時幼かっためい子がそのときのままに自分を慕ってくれていることに、母としてのよう子の複雑な思いもわかるようになったのは、やはり娘理子の存在だった。

家庭内で姑信子との間にたって、それなりにそれぞれに自然に甘えて可愛がられる理子をみていると、子供の持つエネルギーの大きさを感じずにはいられない。

子供を型にはめることなく誰にも愛されるように育てておくことの重要性も今あらためて感じていた。

つづく

 「小説及び使われる絵や写真の無断転載はお断りいたします。
    よろしくお願いします。」

小夏庵ものぞいてくださいね。

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by akageno-ann | 2009-02-15 08:05 | 小説 | Trackback | Comments(8)

Commented at 2009-02-15 20:08 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by akageno-ann at 2009-02-16 08:28
鍵ちゃん、ありがとう。
Commented by CHIL at 2009-02-16 14:02 x
よう子とめいこ、美沙と理子、4人がともにインドで過ごしていたら、
また別の関係が築かれていたのかも知れないけれど、
その時その場所でどう出会うか、それも運命で必然でおもしろい。
・・・ものなのかもしれないですね。
子どものエネルギー、愛すべきパワー、・・・これを奪うような大人&親にはならないように接しようとは思っています。
が、私はすぐにしかめっ面の怒りんぼ母ちゃんです(^^;)

今朝の朝日新聞の中面に「GLOBE」という世界の動きの特集が
はさまれていました。その中でインドの事が!!
思わず写真に見入ってしまいました(^^)
街のど真ん中を歩く牛、子ども達の輝いた表情。
annさんの小説を通してとても身近に感じてしまっているインドの
写真たちに心がワクワクしてしまいました。
インドの頭脳・・・、素晴らしいのですね(^^)
Commented by ba-chama at 2009-02-16 15:02 x
長女が生まれたとき 私はさまざまな問題を抱えていました。長女の子守をしてくれた義妹と乳児の長女と 母親である私の間に 何かしら 不自然なおもいが 流れていた事を思い出しました。
Commented by ann at 2009-02-16 21:37 x
CHILちゃん、インドのことわくわくします。昨日はNHKの特集でシンガポールの頭脳開発の話題にも驚きました。
子供がいてミサもデリーにいることができたら本当に違ったであろうと思っているようです。
でも授かったときがその人生ですものね・・こういう出会いであってまた気づくことも多いのだと思います。
Commented by ann at 2009-02-16 21:39 x
ba-chama
う~~ん・・ちょっといいヒントをありがとう・・そういう関係ありますね。私たちの年代では特に様々な人間の関わりがありましたよね。
私に子供がいたら、義父との関係できっと難しいことがおこっていたと思います。
Commented by cacaopon at 2009-02-20 17:23 x
その時がその人生・・・ 深い言葉だなあと思います。

インドでは守りに徹していたよう子さん その母の元で育てられ
華やかにピアノを弾く社交的な美沙さんの姿をみていためい子ちゃんは
幼いながらにも そこに大人の女性への憧れを抱いてたのかもしれないですね。
Commented by ann at 2009-02-21 10:47 x
コメントも読んでくださったのね・・・感激!
子供の印象はどうしても親よりもその周辺で可愛がってくださったり素敵な人を憧れますよね・・本当に親のよさに気づくのは大分あとになって・・の場合があるように思います。
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