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郵便事情

第3章 その5

美沙は平田よう子に手紙と別に日本の和菓子を送った。

在外赴任者は米国やシンガポールなどのように日本の食品が殆ど揃うところでない限り
日本食材をてに入れることが困難であった。

インド時代にその経験をもつ美沙は中米のメキシコという国についてもそれと似たような
状態にあることは予想できた。

おそらく平田夫妻はこの二度目の赴任はインドよりも先進国であると確信しての応募だったに違いない。
インド時代に平田氏は夫に

「必ずや管理職でインドよりも楽に暮らせる国に行こうと思っている、家族のためにも・・・」

と、話したことがあった。

インドでかなり妻や娘のめい子に苦労をさせてしまった、と思い込んでいた平田氏のその言葉は大変意味深いものと翔一郎も美沙も感じていた。

しかし文科省の派遣のための選考試験では

「いずこの地へも参ります」という確約を取られる。

それでも実際は様々なコネクションによってある程度の希望地が望める、と平田は踏んでいたのだ。

「一回目は何も知らず受けたから二回目はなにかつてを使いたい。」
そうあっさりと話していた。

きっと何かのコネクションを求めたはずだろうが、やはり公的な派遣にはそのようなことはなかったのだ、と美沙はよう子を気の毒にも思っていた。

しかし先進国とはいえないその国に彼女は一人娘のめい子を置いて夫について赴任したことは美沙にとっては驚きだった。

しかも校長夫人という責任ある立場での新しい挑戦だったのだ。

美沙は様々に想像しながらよう子が生き生きと活躍する姿を夢に見た。

そこにはなんとも言えない羨望の思いが潜んでいることを美沙本人が感じていた。

そんな想いを持ちながら手紙が先方のメキシコの平田家に無事着くことを願っていた。

日本の和菓子もきっとよう子は喜んでくれるであろうと、吟味して送った。

しかし驚いたことにはアメリカ本土にありながら郵便事情はあまり良くはなかった。

美沙は手紙の投函の後に、一番早く着くというEMSで別便の和菓子を送っていた。

だが、皮肉なことにその菓子は1週間ほどで届いたが、手紙の方はずっとあとになってしまっていた。

つづく
郵便事情_c0155326_14383475.jpg

のどかな日差しを浴びる太平洋の景色
ブログひげじい~脳梗塞からの軌跡ひげじいさんの作品です。

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by akageno-ann | 2009-02-21 20:14 | 小説 | Trackback | Comments(8)

Commented by crystal_sky3 at 2009-02-21 22:59
こんばんは♪
平田さんたちのように、知っている方で、お仕事で日本からいらしていたご家族なんですが、大学生の娘さんたちをアメリカに残してご両親とまだ若い娘さんを連れて帰国された方がいます。平田さんとは逆バージョンですね^^
つい先日日本の両親から荷物が届いたのですが、今回初めて
箱に手が入るくらいの割れ目が入っていました。
5ミリくらいのつなぎ目でなんとかもっていた箱。
家に運びいれてまもなくその5ミリのつなぎ目も切れてしまいました。両親はいつも紙に何を送ったか書き残しておくそうなので、電話で聞き比べてみたら何も紛失したものがなかったので、安心しましたが、今回はほんとにラッキーでした。

素敵な週末をお過ごし下さいね♪
Commented by ann at 2009-02-22 13:35 x
クリスタルさん、アメリカでもそういうことがあるんですね。
郵便・・そういえばかつて一度だけ小包が行方不明になったことがあります。残念で、でもEMSは高いし・・ある意味挑戦
でもインドはひどかったです・・仕方ないんでしょうか・・今は大分いいようですが・・お嬢さんをアメリカに・・わかります。私の知人は奥さんも残ってます・・
Commented by panipopo at 2009-02-23 08:59 x
手紙があとになってしまうなんて。。。
皮肉ですよね。

平田さんご夫妻がきちんと美沙さんたちの心を汲んでくださることを願ってます。

美沙さんがうらやましく一瞬思う気持ち、とっても自然だと思います。人は人ですが、やはり翔一郎さんがリハビリを受けている境遇だからそれはごく普通の気持ちですよね。でも、それが一瞬であとはサラリと受け流せるのが、私は好きです。やはり彼女は前向きなのがいいですね^-^
Commented by ann at 2009-02-23 13:30 x
世界中の郵便事情って本当に異なりますね。
そのことでいろいろな行き違いがどうしても起こる。
わかっていてもきちんと届かないと心が分散することがあるようです。
でも日本からの手紙も荷物もうれしいものですね。
そこできっと昔の思いが良い時間を経て加味していくと
感じます。
Commented by ka-chan-anone at 2009-02-23 15:07
世界の郵便事情っていろいろなんですね。
あまり国際便を利用したことがないのですが、
ちゃんと届いているのか確認しないといけないですね。

手紙や小包って、届くと本当に心がワクワクしますよね。
心のある贈り物って大切にしたい文化です(^^)
Commented by ann at 2009-02-23 18:28 x
CHILちゃん、日本の郵便事情が素晴らしくて・・外国のが本当は普通なんだって聞いたとき・・信じられなかったのですが・・
この安穏のした平穏・・を当たり前ではないと、言い聞かせるのです。でも届くってうれしいですよね
Commented by cacaopon at 2009-03-09 23:11 x
そうですかあ。お手紙が届くのが遅れてしまったのですね。
でも 和菓子が遅れること無くて本当に良かった。

貴重な和の味 きっと よろこばれたでしょうね。

そこのところ 気になるので 先に読み進みます。
ではでは♪(今日は ゆっくりと 読めそうです)
Commented by ann at 2009-03-09 23:24 x
リアルタイムかな?
ありがとう・・そうそう和菓子はEMSという
しっかりした速配便にしたと思うの・・
郵便事情って本当に場所によってみがいますね・・
cacaoponちゃんゆっくりしていって。。
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