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理学療法士

第3章 その6

 翔一郎のリハビリは自宅に帰ることを目標にプログラムが組まれ、先ずは立ち上がる練習を何度も何度も日を置いて行っていた。

理子美沙も、まもなく自分たちが中心になって行う介助を始め不安に思いつつその訓練に付き添っていた。

リハビリ病院では屈強な若者が理学療法士としてついていてくれるので、安心して見ていられたが、自分たちだけで体の大きな翔一郎をきちんと補佐できるのか、など見れば見るほど心配になっていた。

介護に関する仕事にはいろいろなジャンルがあり、理子はスタッフの名札を見ながらその職種を学んでいた。
今、父親翔一郎に一番大きな影響を与えていたのが、作業療法士理学療法士だった。

翔一郎の病状はすでに脳の機能回復については一つの安定を見ていた。

脳梗塞によって失われた機能を少しでも精神的に励まし、あとは機能回復のリハビリによって呼び覚まそうとするもので、時間と根気が必要であった。

作業療法士は、医師の指導のもとに、手工芸、園芸、ゲーム、など本人の好みにしたがって様々な作業を行わせ、患者の意識付け、精神の安定を図ることに力を注いでいる。

また理学療法士は実際に立ったり座ったりから始まって、日常生活の自立を促すための訓練とマッサージを行ってくれていた。

この様々な分野の細分化のお陰で、一つ一つ患者の家族はこれからの家庭での生活状況の中に組み入れることをじっくり考えることができた。

『あまり畏れることはない、』といつもスタッフに励まされ、理子も積極的に父翔一郎の介助を行ってきた。

美沙よりも時には乱暴なほど、『ひょい』と翔一郎を抱えて洗面の手助けができていた。

女の子なのでトイレの介助だけはどうしようか?と美沙は考えたが、この一番自然な生理現象のことこそやらせておかねばならないと思っていた。

つづく

 「ここに使われる絵や文章の無断転載は固くお断りいたします。
    よろしくお願いします。」

小夏庵ものぞいてくださいね。

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by akageno-ann | 2009-02-23 14:56 | 小説 | Trackback | Comments(7)

Commented by fmutu at 2009-02-23 18:39
時間と根気。。。本当にそうですね。。。
以前勤めていた病院な内で理学療法士の方と患者さんが何時間もかけて階段を登る様子が、今でも忘れられません。
Commented by ann at 2009-02-23 23:02 x
fmutuさん、いつもありがとうございます。
病院にお勤めだったのですね。いろいろなご経験を
お持ちだと思います。こうして書いていただけてとても
心強いです。
Commented by さりすけ at 2009-02-24 01:21 x
そう、本当に介護する側にとっても介護される側にとっても何もかもが初めてで、不安なものですよね。「あまりおそれることはない」とのスタッフからの励ましは、本当にありがたいですね。

自分の親の下のお世話をするようになるなんて、私も昔は想像もつきませんでした!でもね、結婚してから、朝起きたすぐの自分の顔やだんなの顔とか見てたら、そっか生きてると目くそもよだれもでるし、そういう汚い事も生きてる証拠なんだって思えてきました。

介護って本当に大変で、だからこそ一人で潰れそうになってるみんなが集って励まし合える場が、いろんなところにできればいいのに!!!って思います。
Commented by ann at 2009-02-24 07:48 x
さりちゃん、そうなんですよ!畏れることも必要以上に神経質にならないでできることをやっていけばいい・・ってすごく思います。
自分も今のように介護に携われるかはどちらかというと無理だと思っていたこともありました。でもこれは自然の流れでできるようになるみたいだし、できないことはそのままできなくても無理しなくていい、と思っているのです。職業としてと家族としてではまたちょっと違う感覚があるように思います。一人で潰れない・・大事なことですね。ありがとう!
Commented by CHIL at 2009-02-24 16:29 x
作業療法士、こういうお仕事もあるんですね!
私は父が倒れた頃はもう働いてまして、土日休みで、
土日には毎週病院に行っていたのですが、
土日は病院のリハビリ室はおやすみで、
あまり療法士さんとの関わりを見ていないんです。
作業療法士さん、うちの父に所にもいたのかな??

トイレの介助は実は私していません。お風呂も。
「したくない」というわけではなく、
寝たきりでもないし意思もあるから娘に下の世話をされるのは
父親のプライドとして嫌なのかな?と勝手に私が思ったからです。
でも。。。今倒れたときの事を聞くと、
倒れて1・2年くらいの記憶がまだらで曖昧だそうです。
それじゃあ、ちょっとくらい介助してあげても良かったのかしら?
なんて・・・今になって思います(^^;)
Commented by akageno-ann at 2009-02-24 17:52
CHILちゃんに答をもらったように思います。
そうなの・・無理にやることはないし、本人のプライドも
刺激する必要もあるしで、ケースバイケースですね。
そして年月によって変化することも大きくて、しかし何もわからない
模索する時期って家族にはありますね。
今では懐かしいほどに・・
Commented by cacaopon at 2009-03-09 23:28 x
とても細やかにリハビリセンターでの様子を描写していただいて
本当に参考になります。

そうなんですね。
当人も家族も
はじめから気負い過ぎないように 無理をしないように
そして周りでサポートしてくださるスタッフの方と少しずつ
力を合わせて ゆっくりと リハビリを進めれば良いのですね。

心の問題もあるから とても敏感な問題に考えてしまうけど
こちらでは そんな色々な事が知れて とても勉強になりました。

「介護」 これからは 誰もが 介護されること 介護する事
どちらの立場にもなり得る事 知っておく方が良いかもですね。
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