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夢の家

第4章 その4

ふと美沙は、『間もなくこの家で翔一郎との新しい暮らしが始まる』と覚悟している自身が嫌になった。
覚悟というのはある意味拒否的な思いを封じ込めるということなのだ。

それは、本当の意味では前向きではない。

仕方なく、という思いはすぐに辛さに繋がるのだ。

だが、しかし、義母信子と娘の理子とで これまで翔一郎が受けてきたリハビリ病院のような行き届いた介助や看護ができるはずもなく、人の手を借りるように市の行政へ手続きはとっているが、全てが新しい人々との関わりかと思うと、正直心に思いおもりがぶら下がったような気分だった。

不思議なもので、病院へ通うのを大変だと思った時期もあったが、慣れてしまうと病院から帰宅して自分の時間のたっぷりあることにも気づく。

理子とて父親と病院でべったり過ごしても、あとは普通の中学生の暮らしをしている。

そして理子は高校もそのまま現在在籍してる私学にそのまま通う、という結論を出していた。

そのことは理子の祖母にあたる信子をほっとさせたのだ。

理子は少し親孝行を考えて、公立を受けて移る気持ちもあったようだが、友達と別れる辛さと、もしかしてそのままその大学の生活藝術科という自分の行きたい科への入学も諦め切れなかったのだ。

その上にそのことについて 理子が姉のように慕う平田めい子に

『理子ちゃん、無理してはだめ。親に甘えられるところは甘えて、その上で自分のできることで親孝行した方がいいわ。』という言葉にも素直に従えたのだ。

そんな理子を愛おしいと思いつつ、赤毛のアンのアン シャーリーもまた大学進学を一時諦めて養父マシューが死んで家を人手に渡そうとした養母マリラを引きとめて、学校で働きながら一緒に住むことを決意したことを思い出していた。

理子もおそらくその本を愛していたから、ここは自分の家族を大事に思うあまり考え付いたことだったはずだ。

そんなことを考えながら、美沙はその先の『アンの夢の家』を読み進めていた。

それはアンの新婚時代にギルバートと移り住んだ グレンセント村という海辺の村での生活が克明に書かれていた。

今は、その本の中の、若い頃にあまり心を砕かなかったレスリームアという美しい隣人の話に強く興味を引かれた。

レスリーは若く美しい女性だが、その背景が暗くそのままに心を閉ざしたようなところがあり、幸せな新婚のアンに哀しい目を向けるのだった。

アンは持ち前の好奇心と自然な優しさをもって彼女と接するのだがなかなか心は打ち解けないままだった。

だがアンはここで最初の子供を死産してしまう。神をも信じられなくなるアンを複雑な思いでみつめアンの深い悲しみを受け止めようとするレスリーをやがてアンの方が本当に心から受け入れるようになるのだ。

レスリーには、病気の夫がいたのだ。その夫との話に、今美沙は我がことを重ねてみるのだった。

つづく
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ブログひげじい~脳梗塞からの軌跡ひげじいさんの作品です。

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by akageno-ann | 2009-03-07 21:32 | 小説 | Trackback | Comments(2)

Commented by 55kirakira at 2009-03-08 00:58
こんばんは、きらきらです。

ひげじいさんの絵は少しの間見ているだけでも「ぐぐぐっ!」と引き込まれてしまいます。。。annさんの小説、それこそ引き込まれまくりなので実はまとめて読めるようにとってあります^^。じっくり読みたい、自分と重ねて考えたい、そんな小説です。
Commented by akageno-ann at 2009-03-08 12:03
きらきらさん、嬉しい言葉をありがとう。このひげじいさんの絵によってまた書く気持ちが高まった私です。
供に歩んでいけたら・・とも思います。
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