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いよいよ退院

第4章 その6

翔一郎の退院は2週間後、と決定された。

最近の病状も安定し、発熱することもなく、血圧は降下剤を服用しているが
平常の血圧を保っていた。

これで再び高血圧を起こすと大変に危険な状況になるとも言われ、この薬の服用は大切なことであった。

日ごろの生活はとにかく自分のことを自分でする、という積極性を持たせるべく家族を介助するようにという課題をもって主に美沙と理子を中心にした介助の訓練がリハビリ病院で行われた。

翔一郎の母信子は家の改装のためにいつも家にいてその成り行きを見守っていた。

こちらもまもなく完成であった。

一番力を入れたのは風呂場と トイレの改装だった。

翔一郎は立てるようになっていたので全く力の入らない左半身を庇うにはどちらも支え棒が必要であった。

体は筋肉こそ落ちてはいるが、身長170センチ 体重60キロの体躯を女手で支えるのは大変なことだった。

しかし良く観察しているとリハビリ病院での介護士の女性は上手に介助して無駄な力を使っているように見えなかった。

「全部を支えようとするのではなくて、ご主人の出せる力を引き出すような支え方を工夫してきましたのそれを教えますね。理子ちゃんも結構手伝ってくれてますから、大丈夫。お父さんも理子ちゃんに手伝われるときっとやる気が出てくると思いますよ。」

とその介護士に助言されて二人は笑いながら

「頑張ります」

と、特に理子は元気よく応えた。

理子は家庭生活の復活を楽しみにいていた。

大変であるということもおそらく大人のようには考えていなかった。

ただ父翔一郎がこの家に戻ってくることをひたすらに楽しみにしていた。

この家は 父がいて初めて安定した家族なのだ、と高校生になる理子は思っていた。

父は今までのような父ではないが、それは身体的なことで、父は今までよりももっと優しく理子を愛してくれていると感じていた。

これからくる大変なことを普通のことと思える日が来る、と理子は漠然とではあったが感じられたのである。

つづく

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ブログひげじい~脳梗塞からの軌跡ひげじいさんの作品です。

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by akageno-ann | 2009-03-10 08:21 | 小説 | Trackback | Comments(7)

Commented at 2009-03-10 15:25 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by panipopo at 2009-03-10 21:14 x
いよいよ翔一郎さんが退院してくるんですね。
てこの原理のように体を支えるのかしら、って思いました。
そうすれば女性でも体を痛めることもなく介助ができるんですね。
理子ちゃんのお父さん思いの気持ちが伝わってきました^-^
Commented by akageno-ann at 2009-03-11 07:42
鍵さん・・・素敵な感想を本当にありがとうございます。
Commented by akageno-ann at 2009-03-11 07:44
panipopoちゃん
いよいよでこちらもドキドキです・・そうです
てこの原理・・まさにそうだわ
こちらも頑張って続けるために無駄な力は禁物だものね
でもなかなか大変です
理子の気持ち・・書きたいです。
Commented at 2009-03-11 07:57
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cacaopon at 2009-03-24 22:25 x
♪ どの世界でも プロのノウハウってやはりすごいですね。

にしても理子ちゃん 本当にたのもしい。
家族が結束してるって 何よりも強みだなあ。

私の家族は 父も母も私も妹も みんな 家族のことを思っていないわけじゃないんだけど
どうしても それぞれが目の前の問題への克服に精一杯で 
家族皆で力を合わせ!って 結束を感じられたことは
とうとう父のお葬式の日にまでも 叶うことはありませんでした。

だから なお 家族の必要 わかります。
(ごめんなさいね へんてこなコメント・・・)
Commented by akageno-ann at 2009-03-26 22:54
それぞれの家族のあり方はそれがやはり最善なのだと思います。
事実は小説より・・です。家族が本当にまとまるっていうのは実際どういうことなのか・・私も全くわかってないんです・・多分・・
コメントすごくありがたいです。ありがとう!cacoponさん
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