その先のこと
第5章 その2
日常生活というのは、1週間もすればある程度の形ができてくる。
翔一郎はよく眠れているようだった。
4人部屋だった病院生活は自分より年配の人々と一緒で唸り声や泣き声が夜中に響くこともあり
安眠剤を使わないと眠れないことがあった。
しかし自分の寝室で隣に妻の美沙と供に眠るようになって熟睡できる夜が戻ってきた。
もともとよく眠れる方で、結局彼の病気は飲酒の多さと食事のアンバランスが要因になったのかもしれない、と思うと、美沙は自分の力のなさを感じずにはいられなかった。
今の状態を呼び込んでしまったことに改めて辛さが募った。
翔一郎は穏やかな性格になったが、その分何かにやる気を失っていた。
穏やかにこのままの時間が過ぎていけば、と思えたのはほんの最初だけであった。
リハビリは続けなければこれ以上の好転は望めないのだ。
どうしても日常に敢えて行うリハビリがそれまでよりも多くすることが困難だった。
週に2度、在宅リハビリに若い訓練士が来てくれるが、翔一郎はお茶を濁すような態度があった。
大きな病院のシステムの中で時間に区切られた生活の方がやはりやらねばならない、という使命感ができるのだと、思い知らされた。
だが、そんなことを思ってみても決して前には進めない。
とにかくここで何かを行おうとする意欲を湧き上がらせる必要があった。
家族4人の新生活はまだほんの序の口にあった。
翔一郎の母信子は、ひたすら幼い翔一郎を思うような気持ちで接していた。
最初から意見の相違を話し合うことを避けたが、美沙はこの状況はあきらかに翔一郎の気持ちの後退を感じていた。
母がこうして命をつないで戻ってきた息子を、それだけで喜び、迎えている姿は決していけないものではないのだ。
新しい局面はすぐに顕著になり、美沙は何かの打開策を考えていた。
つづく
注 「ここに使われる絵や文章の無断転載は固くお断りいたします。
よろしくお願いします。」
「小夏庵」ものぞいてくださいね。

この小説の冒頭は・・こちらへ
by akageno-ann | 2009-03-17 07:41 | 小説 | Trackback | Comments(3)
家に戻ると安堵感はありますが、病院にいた頃のように規則正しくリハビリに挑むのはなかなか難しいですよね。他人がここにいたらきっとまた違うのかもしれませんが、家族だとそれなりに甘えも出てきますものね。
うちの母は足が弱く、スイミングに行ったり、毎朝散歩したり、マシーン歩行したりして筋肉をつけるように努力しているようです。
歩けなくなってしまったら困るっていう思いでとにかく何でもいいから身体にいいことはしたいという願いで頑張っているようです。
そんな母の姿が頼もしく感じます^^
翔一郎さんが意欲をもってリハビリを続けていける、打開策が見つかりますように・・・。
うちの母は足が弱く、スイミングに行ったり、毎朝散歩したり、マシーン歩行したりして筋肉をつけるように努力しているようです。
歩けなくなってしまったら困るっていう思いでとにかく何でもいいから身体にいいことはしたいという願いで頑張っているようです。
そんな母の姿が頼もしく感じます^^
翔一郎さんが意欲をもってリハビリを続けていける、打開策が見つかりますように・・・。
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
クリスタルさん・・人それぞれのリハビリや訓練は本人がやる気になるというのが大事ですね。お母様素晴らしいです。家族も最初はおっかなびっくりですが・・次第に慣れてペースを掴むと思います。
私も様々な形を見てきていますが・・正解やこれという決定打は知らないのです。
私も様々な形を見てきていますが・・正解やこれという決定打は知らないのです。