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第5章 その5

帰宅して間もなくは、桜が咲き誇る季節だった。

家の前の小さな公園の桜が見事な花をつけていた。

美沙と理子は思い切って、日中翔一郎を公園に連れ出した。

美しい桜の花びらが舞い降りる東屋のそばに車椅子の翔一郎を囲んで

親子3人で写真を撮った。

桜の頃はいつもここで家族で写真を撮っていたのだった。

翔一郎の母の信子は加わらなかったが、美沙は親子三人での写真撮影が何故か嬉しかった。

なんの気兼ねもなく、親子三人になれたような気がしていた。

翔一郎は桜の花をこんなに身近にゆっくりと見たことなどなかったのかもしれない。

静かな笑顔で自分の今の不自由な体のことを悲観することもなく、通り過ぎる近隣の人々とも挨拶を交わしていた。

「そうなのだ、こうしてまた新しい気持ちで社会と繋がっていけばいいのだ。」

日本の春は桜によって、皆 心機一転できる季節なのだ。

どんなに大変なことがあっても、また喜びを迎えることもできる。

桜の花びらのうっすらとした香りの中に3人は包まれて、幸せな感覚を味わっていた。

理子がその花をみながら言った。

「お父さん、一緒にまた絵を描こうよ!」

その思いがけない言葉に翔一郎は

「うん!」 と はっきりと応えた。

娘は確実に成長し、心は大人になっている。

その大事な時期の父親のこのような病をも、自然に受け止める。

子供であるということが、二人の間をとても近くしているように美沙には感じられた。

美沙自身は父親は未だ健在で、学生時代も苦労と感じるものはなかった。

我が子ながら、理子のこのような成長に大きく期待をしてしまいそうであった。

「この子の心の中を覗いてやらなくていいのだろうか?」

ふと美沙は不安になったが、今しばらく理子の若さに支えられていたい、と

桜の木の下でひとときの幸福感を感じていた。

つづく


今日は素敵なお人形を頂戴しましたのでここに掲載します。
私の拙いこの小説にいつも感想を寄せてくださるアメリカにお住まいのBa-chamaさんが
アメリカで人気のWillow tree というブランドの清楚な少女のお人形を贈ってくださいました。
感謝して、この少女に「理子」と名づけて飾らせていただいてます。

春_c0155326_203257.jpg

Ba-chamaさんとお人形についての解説を↓のmoreに書かせていただきました。

 「ここに使われる絵や文章の無断転載は固くお断りいたします。
    よろしくお願いします。」

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Ba-chamaさんは私と同世代で、偶然にも生まれは土佐です。

でも早くからアメリカに渡られてお子さんやお孫さんに囲まれて
様々な活動をされています。

その中で二つのブログとホームページをご紹介します。

ブログBa-chamaの軌跡がわかるKei's Corner

可愛いお孫さんやご親戚のフォスターペアレントの子育ての様子にはいつも心打たれます。


そしてこちららはBa-chamaのお仕事ケーキ・デコレーションのブログです

お人形のWillow tree のホームページを覗いてみました。優しいお人形たちに出会えます。
http://www.willowtree.info/index.html

by akageno-ann | 2009-03-22 20:33 | 小説 | Trackback | Comments(10)

Commented at 2009-03-23 07:44
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-03-23 10:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by panipopo at 2009-03-23 17:34 x
桜の力って素晴らしいものがあると思います。
韓国では、こういった力のある花木を山に植えて、それを山に登って見に行くのは、気のためにとっても大切だと言われてます。
つまり風水的に桜を見に行くのはいいみたいですよ~!
理子ちゃんの優しさ、若いしなやかな心持ちに美沙さんも母親として頼りたいような、そして頼もしく思うんでしょうね☆

Willow Treeの優しげなお人形、とっても素敵です!
心のこもったプレゼントでしたね☆
Commented by CHIL at 2009-03-23 22:51 x
春・・桜・・
そのキーワードだけで心弾みます♪
暖かい陽気の中で、父と娘の時間が紡がれるといいなぁ。

お人形から溢れるぬくもり、写真からすごく感じます。
実際に手にされたらもっと優しい気持ちになってしまいそうな
お人形ですね☆
Commented by fmutu at 2009-03-24 09:32
素敵なご家族ですね^v^
読んでいてほっとさせられます♪

お人形さんも素敵ですね。。。。
温かいぬくもりが感じられます!
Commented by ann at 2009-03-24 12:45 x
panipopoちゃん、桜って韓国でもそうなのね・・
桜の花見はそう気をもらえるのかもしれません。
私も毎年必ずみる桜があるのですが、四月は心も
あらたになりますね。
理子の成長が大きいと思います。
Commented by ann at 2009-03-24 12:47 x
CHILちゃん、桜のキーワード・・そうありますね
父と娘・・なかなか難しいけど理子は一人っ子というのが
この場合良いようです。
そうです手触りはまるで木のぬくもりのようです
Commented by ann at 2009-03-24 12:48 x
fmutuさん、このお人形を見ていたらあなたの絵を思い出したのです。いらしてくださってありがとう。
Commented by daikanyamamaria at 2009-03-24 16:37
annさん、こんにちは。☆・:*:・゚`✛

さくらの美しさは、大いなるものからの贈り物なのかもしれませんね。
そして、海を渡して届いたもう一つの贈り物。。。

心のありかは 時を超え 海を超え 繋がってゆくものなのでしょう☆・:*:・゚`✛
Commented by ann at 2009-03-24 20:29 x
まあ・・mariaさん、貴方に桜のコメントいただいて
さらに花が咲いたように感じます。
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