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アンのように生きる インドにて

第7章 その7

北川怜子(さとこ)を鮮烈に思い出すことが 片山美沙にはしばしばあった。

夢に出てくることも時あった。

懐かしい、忘れられない人になってしまっていた。

友人を失うというのは人生の中で当たり前のようにあることなのだが、

しかし美沙にとって怜子の出会いと別れはあまりに短い期間に訪れた運命的な出来事だと思えた。

デリーでの出会いは偶然なのであろうか?

デリーの住宅街の一角で隣人になれたこと、毎日のように会って、親交を深め、酒を酌み交わしたこと。

その一つ一つがインドのデリーという、日本人が生活をしていくには何かと大変だった場所でのことであったので、それはまるで映画のシーンを見るように今も思い出される。

その北川夫妻がこの高知出身であることは美沙にとっての大きなメリットになっていた。

美沙の嫁いだ片山家は土佐出身だったのだ。

夫の翔一郎も幼い頃を土佐で過ごしていたので、土佐弁はしっかり身についていた。

さすがに関東が長いので日ごろはそれを話すことは少なかったが、デリーの両家はよく土佐弁で会話をしていた。

土佐弁は郷愁を慕うためでなく、エネルギッシュで、インドのヒンドゥ語に負けないものがあった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆☆☆☆☆☆・・・・・・・

そんなことを思っていると、宿に北川氏が車で現れた。

東京の病院に翔一郎がいたときに、わざわざ見舞いに来てくれて以来の再会だった。

「いやああ・・ようきたねえ~~」

ラフなポロシャツにGパン姿で現れた彼は前回の出会いより若い、と美沙は思った。

翔一郎を見つけてすぐに近寄り、車椅子を押して、車へ誘った。

彼の車は大きなワゴン車で車椅子ごと乗車できるものだった。

「レンタカーだよ。今はこういう車があるんだね。」

そう照れながら説明してくれたが、さすがの接待に美沙の心はその気持ちに深く打たれていた。

平田めい子が近寄って

「北川先生、私も来てしまいました。」と
お茶目に挨拶したので、美沙はほっとした。

理子も素直に従ってその車に乗った。

美しい初夏の緑の映える川筋を車はゆっくり走り出した。

つづく

P.S.
そして2日だけで、土佐へ行って参ります。

久しぶりの初夏の土佐へ帰れるのは、法事と叔父叔母の金婚式の祝いがあります。

従妹と二人で記念品を仕上げました。
アンのように生きる インドにて_c0155326_04767.jpg


小夏庵ものぞいてくださいね。

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by akageno-ann | 2009-05-15 00:04 | 小説 | Trackback | Comments(6)

Commented by CHIL at 2009-05-15 12:48 x
北川先生との再会、怜子さんとの思い出、インドでの思い出話が
高知の自然の中で、
翔一郎さんの脳により良い刺激になってくれそうですね。

ジル博士についてのエッセー、
私のコメントが載っていてお恥ずかしいです・・・(^^;)
私は母から話を聞いただけで、
実際にテレビなどでは見ていないのです。
脳の魅力に取り付かれているジル博士が脳卒中になったことが
「脳の奇跡」について人々に伝える説得力になっているのでしょうか。
未然に防ぐ、大事なことですね。

今、高知に行かれているのでしょうか。
先日テレビで色鮮やかなたくさんの和紙が川の中で揺れているのを見ました♪

Commented by panipopo at 2009-05-15 18:47 x
そうですよね、理子ちゃんにとったら迷惑な話ですよね。↓
私も彼女の立場だったら、同じように考えます。
でも、翔一郎さんにとったら、いいお話かなとは思いますよ。

親戚の人たちと会う事は、あんまり機会がなくても、楽しいものがありますよね。
私も、そういった集まりは好きです。

そして北川先生との再会、みんなそれぞれにうれしくて喜ばしく思っているんだなって思いました。

今頃、土佐で従妹さんと楽しく過ごしているかしら?
このお祝いの作品、とっても素敵です。
Commented by ann at 2009-05-17 12:25 x
CHILちゃんにコメントを書いていただいたことをあとから知って
とても驚きそしてその偶然に感動しました。
この本にはまっています。
考え方もまた少し変わりました。
やはり奇跡も信じたいです。
脳科学者の脳卒中を起こし再起する
これも奇跡だと思うのです。
Commented by ann at 2009-05-17 12:27 x
ぱにぽぽちゃん、この祝いを本人たちが大変驚いて喜んでくれました。手作り品はいいですね。素敵なカフェもみつけました。
高知は本当にカフェが多くてそこのケーキもなかなかおいしいんです。ご案内したくなりました。
北川先生との再会、そして土佐のエネルギーに片山家もちょっと
復活ができそうです・・そしていよいよ終章に入ります
いつも応援ありがとう!
Commented by cacaopon at 2009-05-18 09:32 x
♪ 仲良く並んだふくろうの貼り絵 どちらもとても優しい穏やかな表情 それと共に力強さも感じられます。

家族の力 信じる力 大きいですね。

北川先生 あい変わらずダンディーで素敵ですね。
土佐の男は 素敵な方が多いのね。
ちょっと 周りを探してみようかしら・・・ なあんて 思っちゃいました。んふふ♪

怜子さん インド 土佐 この不思議な縁にも必ず意味はあるのでしょうね。
北川先生は あれからずっと お一人だったのですね。
Commented by ann at 2009-05-18 12:25 x
cacaoponさん、北川氏についてはもう少し書きたいと思っています。地方での暮らしの中で一人でいるというのは難しいかもしれません。そして美沙へのほのかな思いもあると思います。
しかしこうして家族ぐるみの感じって・・またいいですね
平田めい子がいることも私には心強いことです。
貼り絵も誉めてくださってありがとう!
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