人気ブログランキング | 話題のタグを見る

終章へ 土佐のもつエネルギー

いつもこの「アンのように生きる」の小説にお立ち寄りいただきまして
ありがとうございます。

この小説もいよいよ終章に入ります。
北川の車で片山翔一郎とその一行は初夏の土佐の風景を堪能します。

ちょうどこの時期に土佐の旅をしてきました。

その写真と共に終章のその1をお楽しみいただけたら嬉しいです。
終章へ 土佐のもつエネルギー_c0155326_9555347.jpg


終章 その1
「どうかな、片山先生、ここは元気がでるじゃろう?」

運転しながら北川はしきりに翔一郎に語りかける。

「高知の5月は私は一番好きじゃきに、この時期においでてもろうてほんによかった!」

北川の土佐弁も懐かしくて後ろに座った美沙は少し心が締め付けられるような思いがした。

デリー時代ほんの少しではあったが、この北川に思いを寄せたことがあった。

パリの旅の途中に偶然二人で出会った日に短い時間ではあったが

二人でサントシャペルを訪れて、ステンドグラスの薔薇窓をタ黙って二人で見た日のことが急に思い出されて目を閉じていた。

そのことを北川も覚えているだろうか?とふと聞いてみたくなったが、あの日のことは互いに誰にも、つまり互いのつれあいに言わないでおこうと約束したことまで思い出した。

「美沙さん、どうかな・・この土佐はとてもいいエネルギーを発していると思うんだ。
本当によく来てくれました。お母さんもお疲れでしょう・・」

北川はそんな美沙の感傷を吹き消すように明るく話しかけてきた。
だが、かつてのデリー時代と同じように、美沙には標準語を使う。

そのことが美沙を心から優しく明るくした。
終章へ 土佐のもつエネルギー_c0155326_1094143.jpg

土佐の風景はまたあまりにも雄大で美しかった。

「本当にあなた、ここに住みたくなってきましたね。お姑さん、ここへ戻ってきたいですか?」

はしゃいで話す美沙を、少し驚いてみている理子と平田めい子がそこに大人しくいた。

そしてこれからまたこの家族は大きな変化をしていくことを感じ始めていた。
平田めい子はちょうど大学生になったときに両親が再び在外派遣教員として海外で暮らすことを望んでいることを知ったときの複雑さを思い出していた。

そして今隣にいる美沙達の娘理子がその同じ思いをしていることを痛切に感じることができた。

自分は理子を心から支えていこう。

娘は必ずやその家からいずれ出ていく運命を背負っているものだ。

そしてそれもまた自分を解放し新しい人生を歩めることになることを知らせたいと願った。

車は道の駅という看板のある大きな駐車場に入っていた。

「ちょっとここで休憩しよう。ここのアマゴの塩焼きとおでんがおいしいよ!」

そう北川が皆を茶店に促した。

その茶店の軒先に女主人が佇んでいる。
終章へ 土佐のもつエネルギー_c0155326_10215633.jpg


「いらっしゃい、おや北川先生。まあお客さん連れてきてくれたがかね・・ありがとう
ほうら見てみて、ツバメがおるよ」

そう指差す先に巣立つツバメの子供の顔がいくつも見えた。
                                           つづく

小夏庵も土佐の旅です。覗いてくださいね。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ

by akageno-ann | 2009-05-17 10:11 | 小説 | Trackback | Comments(7)

Commented at 2009-05-17 16:03
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cacaopon at 2009-05-18 09:40 x
♪ 5月は一年で一番好きな季節なのに 今年は雨降りが多くて少し残念でした。
今日は 雨上がりの澄んだ空がきれいで 今から 散り咲きのバラのガーデンを愛でに出かけてきます。

理子ちゃんにとっては 家族がいる場所こそがふるさとなので
確かに 土佐への愛着は皆ほどにはないでしょうね。

でも きっと 年を重ねる事に両親や祖母が愛した土佐を
同じような思いで愛する日がやってくると思います。

さあ 本当にこれからの展開にドキドキです。

久しぶりに吸う郷里の空気。 
翔一郎さんの脳にも身体にも心にも
新しい良い風が入り込んでくれますように。

そして 美紗さんにも ♪
Commented by ann at 2009-05-18 12:21 x
cacaoponさん、おかげさまでこの小説も終章を迎えられました。
高知で終わりたいと思っていたので、今回の旅は
良いきっかけになりました。
ここは本当にエネルギーが沸きます。

長いご購読に心から感謝をします。
嬉しい感想をたくさんいただけました。
良い風・・・本当にそういう風を吹かせたいです。
感謝をこめて
Commented by panipopo at 2009-05-18 20:43 x
こんなふうにつばめの赤ちゃんが顔をのぞかせていたんですね!
とってもかわいいです^-^

北川先生とのドライブは皆めいめいにいろんな思いを抱きながらのものとなったみたいですね。
やはり美沙さんと信子さんや翔一郎さんは土佐に戻りたいのでしょうか。
お話も佳境に入ったみたいですが、どうなるのか興味津々です。

Commented by ann at 2009-05-18 22:54 x
ぱにぽぽちゃん、こんなに可愛く撮れてることに喜んだ私なの。
結構高い軒先だったの・・そして親鳥の飛ぶ姿が素敵でした。
ドライブでいつもと違う風景をみると、ふっと人生を重ねることがありませんか?
土佐に生まれた翔一郎は多分戻りたいのだと思うけど。
美沙はどうなんだろう・・と考えています。
今日もありがとう。
Commented by crystal_sky3 at 2009-05-19 02:36
annさん、こんにちは♪
翔一郎さんのために車椅子も入るレンタカーをしてくれた北川先生のお心遣い、ありがたいですね。
どんなに年月を経ても、一緒に色んな時間を過ごしてきた、いわば
戦友なのかな・・・そんな存在とはふっとタイムスリップしたように
元のようにお付き合い出来るものですね^^
理子さんのことを心から想い、支えてくれようとしているめい子さん。
インドでの出会いはこうして何十年後にも繋がっている・・・。
人と人の繋がりってちゃんと意味があるんだな・・・ってしみじみ感じます。

フクロウさんの作品、素敵に完成しましたね!
きっと叔父様も叔母様も喜ばれたことでしょう☆

ツバメの赤ちゃんといえば、偶然ですが、昨日裏庭でブラックベリーを収穫していましたら、主人が小鳥の巣を見つけました。
からっぽかな?と覗いてみたら、なんとまだ目の開かないヒナが
3羽、母鳥の帰りを今か今かと待っているようでした。
昨日、今日と雨脚も強いので、巣が落ちないかな・・・・とちょっと
心配しています。でも、自然の生き物は人間が思うほどヤワでは
ないですね、きっと^^

Commented by akageno-ann at 2009-05-19 07:37
クリスタルさん、この写真を撮るとき貴方のことを思いました。
う~~ん上手く撮れるといいなあと・・呆けても表情が
かわいくて・・貴方にみていただけてとても感激!
自然の素晴らしさをあなたのブログでいつも拝見しているので
この写真も撮る気がしたのです・・
そして小説への感想をありがとうございます。
戦友・・本当にそう言い合います。在外で苦労の多い場所で
過ごした仲間は本当に一生心の支えになると思います。
フクロウびっくりしてくれました。
このキットに感謝してます・・笑
名前
URL
削除用パスワード