小説 その4
ひまわりのような人
その4
田部夕子は学生時代に真剣につきあった男性がいた。
というより夕子が一方的にいとし過ぎてしまったのであって、その相手は夕子をもて余してしまい、離れていったことに気づかされてしまった、という悲恋だった。
しかしその真意は未だ夕子もわかってはいない。
二つ年上の大学のゼミの先輩だったが、ある日突然婚約者が現れたのだった。
まさか・・とは思っていた夕子だったが、二年後間違いなく二人は結婚したと友人を通して聞かされていた。
その衝撃的な別れのせいで夕子は恋愛に対して消極的になってしまったことは否めない。
その焼き鳥屋の夜も恵子に過去を聞かれて、このことだけはあっさりと話した。
「タコは純粋培養だったのかもしれないわね。」
恵子はそう言った。
「純粋培養?要するに男を知らなすぎるってこと?」
夕子の切り返しに恵子は真面目にうなづいて
「うちの2番目の沙耶がもしかしたら貴方に似てるかもしれないの。」
「沙耶ちゃん大学生よね。恋愛中なの?」
「そうらしい、と言うよりまずいな・・って思ってるのよ。
今主人の会社の部下に思いを寄せちゃって・・恋愛経験この時代に生きてる女子としては全く無垢で、なんであのようなのか・・私にはわからないけど、自分だけを見てくれる人を求めてるわね。だから同年代の男の子より、あの子を確実にちやほやしてくれる大分年上のその人を恋愛の妄想のように好きらしいの。」
恵子はちょっと困った・・という風に話した。
「私も恋愛の妄想だというの?」
夕子はちょっと不服だった。
「だってその話はまあいわば貴方の最初の恋愛でしょう?貴方は高校時代ももててたのに気づかぬ振りして、結構男子を可愛そうな目に合わせてたと、思うわよ。
私K君からあなたのことが好きなんだけど、あいつは高値の花だなあって話きいたことあるのよ。それを貴方に伝えなかったのはちょっとしゃくだったからかもしれない。」
夕子はびっくりした。もう何十年も前の話だが全く自分の気づかぬことだった。
「ええ?それは教えてほしかったなあ」
「そうかなあ・・あの頃もしそのことを私が貴方に言ったとしても、大して取り合わなかったと思うのよ。K君人気あったけど、貴方が気づいてあげなかったし、同い年は眼中になかったと思うのよ。違う?」
そう言われて、このお嬢さんぽい当時の恵子は人生においてはずっと長けていたのだと思い知らされた。
「私は短大を出て、少しだけ会社に勤めて、そこで夫に出会って、軽く恋愛して結婚したけど、でもね、高校でも短大時代でも結構デートはしたわね。あの頃だからそれはまあ結構真面目につきあったけど、結婚を考えるまでに一人だけの男性としか付き合わなかったわけではないのよ。でもね二股かけたことはないのよ。」
「いやあだ・・恵子からそんな言葉を聞くなんて・・貴方お嬢さんだとばかり思ってたわよ。もっと貴方を見習うべきだったのね。」
50近い二人だから笑い話になっても、おそらくその当時は夕子は全く恵子の恋愛話などに興味を持たなかったであろうことは二人とも容易に想像がついた。
つづく

いつも応援クリックに感謝しています。
「小夏庵」ものぞいてくださいね
by akageno-ann | 2009-08-05 00:06 | 小説 | Trackback | Comments(4)

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
楽しみに読ませていただいてますヨ♪
ありがとうございます。
ありがとうございます。
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

素敵なコメントをたくさんあありがとうございます。
喜怒哀楽の共感をもしもここでしていただけるのなら
それはとっても幸せ・・
そして私にとっては皆さんの人生も大いに共感させて
いただくことが多いです。
いただいたコメントの言葉は大切にさせていただきます。
いつもありがとう!
喜怒哀楽の共感をもしもここでしていただけるのなら
それはとっても幸せ・・
そして私にとっては皆さんの人生も大いに共感させて
いただくことが多いです。
いただいたコメントの言葉は大切にさせていただきます。
いつもありがとう!