小説 その5
ひまわりのような人
その5
焼き鳥屋の主人がそろそろ最後の〆に行っていいかどうか、と尋ねた。
いつの間に二人で食べた串は20本を越えて・・そうお腹はすっかり満腹になっている。
「今日はね、焼きおにぎりを椀にいれて、特性スープでお茶漬けにして召し上がっていただこうと用意してますが・・いかがですか?」
二人は一緒に・・もちろん・と頷いて・・その椀を待った。
夏にこうして食卓に載せられる柚子の香りがまた一段とさわやかで・・自宅の柚子を皮にして冷凍しておいているというマスターの心のこもった料理にいつも感心させられる恵子だった。三つ葉と海苔もふんだんに使われたその椀は完全に二人のお腹を満たしていった。
気楽に話をたくさんできたわ、と恵子と夕子は首をすくめて、一人3000円というマスターの安い提示に少し上乗せをして、礼を言ってその店を出た。
「もう一軒行ける?」
夕子は駄目もとで聞いたが、やはり恵子は
「今日は本当にまだまだおしゃべりしたいけど・・・敢えて続きは今度にしよう
私も今帰っておいた方が・・・まだ出やすいから。」
そう言って駅まで歩いて二人はそれぞれの方向に電車に乗って別れた。
夕子は一人になっても、先ほどの恵子の高校時代の話が頭の中に蘇る。
自分はある程度優秀な生徒として頑張って、大学にも行き、大手の商社にも勤めて今があるが、何か大きなことをやり忘れたような気がしてならなかった。
恵子は決して、独身であることを揶揄したりしたことはなかった。
ただ、今彼女の心配事である娘の沙耶の将来について夕子と併せて考えていることは間違いなかった。
『K君は、そういえば独身だと言っていたなあ・・』
ふとそのことが頭を過ぎった。
ここへ来る電車の中の広告用のテレビで自分の獅子座の運勢を偶然みたが
『今日出会う人とはその後結婚など運命的なことに繋がる可能性がある』
と、あって、そのときは・・ただふふ・・と笑っただけだったが、妙に今そのことも思い出していることに笑い事でない何かをかんじるのだった。
つづく

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by akageno-ann | 2009-08-06 12:11 | 小説 | Trackback | Comments(6)
annさん、面白いです。
サラッっと読めて、続きが毎回待ち遠しい。
サラッっと読めて、続きが毎回待ち遠しい。
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ロビンさん、ありがとう
ちょっと獅子座クラブを思い出して書いてみました・・
ちょっと獅子座クラブを思い出して書いてみました・・
CHILちゃん、そうそう獅子座・・恵子はうお座・・
どうして?興味もったわ・・
どうして?興味もったわ・・

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鍵さん・・・・あははあ・・わかる・・