小説 その7
ひまわりのような人
その7
堀田沙耶は20歳になったばかりの大学三年生である。
男の兄弟に挟まれているせいか女らしさよりも男勝りな性格がある、と母親の恵子は感じている。
兄弟の面倒もよく見る代わりにミニ母の立場も取得していて、時には元祖母の恵子に対して手厳しい批判もする娘だった。
だが最近妙に優しさが出てきた、と母の直感で感じている。
沙耶は恋をしている。
しかも相手は夫の部下だ。
夫 堀田紘一郎は大手エレベーター会社の営業で部長になって三年がたった。
管理職になってからは久しくて、仕事は忙しいのに残業手当はつかない、という状況は本来かなり厳しい生活を強いられるはずだが、父親と同居であることが随分と家計を援けられている。
しかし長男の大らかさか、そんなことで実の父親に負い目など感じることもなく、一緒に住んでやっている、という姿勢は最初から崩れていない。
だから、会社の同僚 部下なども年に何度も招いては妻恵子の手料理を食べさせることを一つの管理職としての面目を立てる機会にしているようだった。
そんな中に30代半ばの中村宏がいた。
中村は独身で気さくな人柄で、客の中で自分が年下と言う立場にあると、自ら配膳や酒の調達など進んで行い、恵子の立ち働くキッチンに気安く入って手伝った。
堀田の家は来客は家族総出でもてなすと言う風にしているせいか、家にいる子供たちも良く手伝わされた。
大きくなった男の子たちはさすがに照れて、あまり客の前には出なかったが、娘の沙耶は進んで客の接待をするようなところがあった。
料理にも興味があって、前菜やデザートなどは最近では沙耶の担当と決まっていた。
あるとき、彼女の作ったゼリーが美味しいと、その中村が一人で三人分も平らげたことがあった。
最初は冷やかしのように
「沙耶ちゃんのような人がお嫁にほしい・・」などと言っていた中村だったが、
年はかなり上でも独身であることは間違いなく、結婚相手を物色中であったのだ。
親の立場の夫も、最初冗句ととっていたのだが、意外にも沙耶の気持ちが動いているのにある日恵子が気づかされた。
それは、沙耶が大学の帰り道、池袋の大きな本屋に立ち寄った時、ちょうどエレベーターの修理の問題でそのビルに派遣されていた中村が沙耶を見つけて、声をかけたことがきっかけになったのだった。
その日、帰宅してすぐに沙耶は
「中村さんに会って、お茶をご馳走になった。」
と、報告があったのだ。
つづく

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by akageno-ann | 2009-08-09 01:17 | 小説 | Trackback | Comments(4)
娘を持つ親って、思春期以降結婚するまで、
きっといろんな心配が沸き続けるのでしょうね。
人の数だけ、恋愛の形がある。
年によっても、形も変わる。
私も19歳から22歳くらいまでが
一番恋愛だけに生きていたように思います(^^;)
annさんの小説の中の恋愛的要素を
いつもとても楽しみに読んでいます(^^)
きっといろんな心配が沸き続けるのでしょうね。
人の数だけ、恋愛の形がある。
年によっても、形も変わる。
私も19歳から22歳くらいまでが
一番恋愛だけに生きていたように思います(^^;)
annさんの小説の中の恋愛的要素を
いつもとても楽しみに読んでいます(^^)
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annさん、皆既日食の記事で恋愛小説を書きたくなったって
仰ってましたものね。この小説がどのように発展していくのか
とても楽しみです。ヒトを好きになった時の様々な感情を
annさんによって素敵に描かれるのでしょうね。
わくわく!!
仰ってましたものね。この小説がどのように発展していくのか
とても楽しみです。ヒトを好きになった時の様々な感情を
annさんによって素敵に描かれるのでしょうね。
わくわく!!
CHILちゃん、19から22まで・・なるほどそうかもね~~
恋愛要素・・ありがとう
楽しんで書かせていただきます。
娘を持つ親御さん・・ほんと心配だと思います
息子さんの場合もやはり同じじゃない?
恋愛要素・・ありがとう
楽しんで書かせていただきます。
娘を持つ親御さん・・ほんと心配だと思います
息子さんの場合もやはり同じじゃない?