小説 その10
ひまわりのような人

その10
堀田沙耶は中村宏を愛していると感じていた。
初めて大人の恋をしていると心は浮き立ち、四六時中 宏のことが頭から離れなかった。文学部なので授業中もそういう恋愛の妄想に浸ることは容易だった。
ましてや彼女の卒業論文は中世の能の中でも鬘物(かずらもの)という女ものを取り上げていることが多かったのだ。
縁起の良い「羽衣」などもその一つだが、美しい女性を描く内容のものだ。
恋愛は時としてやる気に拍車をかけるが・・ひとつ間違えると邪魔になってしまうこともある。
恵子の時代は比較的恋愛が地味だったから先ずは学業優先という雰囲気の中で過ごせたが、今は自由な時代 学生生活も上手に単位をとってしまっていると、暇な時間が随分あるようだった。
しかし、沙耶の付き合い始めた中村宏が年上の社会人のせいなのか、先ず沙耶に学業優先を唱えているらしい。
自分とつきあうことで学業が疎かになった・・などということになれば即刻この付き合いは消滅することをさすがに本人が一番知っているようなのは助かる。
日を追うごとに綺麗に成長しているような娘の様子が眩しくなってきた。
「沙耶ちゃん、どんな将来を考えているの?」
と、ある夕食の片付けのときに手伝っている沙耶に恵子は尋ねた。
「どんなって、しっかり就職するわよ。教職もしっかりとるし、来年は公務員試験を受けます。」
そう沙耶はきっぱりと答えた。
沙耶のこの成長振りはまさしく中村宏の存在のせいだった。
「結婚のことはどう思ってるの?中村さんと結婚を考えるにあたって貴方は年の差はどう思ってるの?」
「お母さんは反対?年の差は気になるの?」
「う~~ん、世間一般のように反対ではないけど、ただね今は気にならない年の差は貴方が年をとる時に感じるものであるから・・それは言っておきたいの。」
恵子は続けた。
「だって貴方が50才のときにお相手は65歳よね・・それはどういう感じなのかわかる?」
しかしその問いに意外にも沙耶は考えたことがあると答えてきた。
「中村さんは今私と結婚しなくたって、だれかと結婚して子供を持つときやはり高齢での子育てよね。でも私が若い分その若さと言う点で役にたつと思うわ。そして私が無知な部分をたくさん補ってくれるのよ。」
その即答には恵子はちょっと驚いて見せた。
娘沙耶の成長を喜んでやりたくなったのだ。
つづく
写真は友人の三歳のお子さんが私の為に描いてくださった「ひまわり」

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by akageno-ann | 2009-08-14 12:32 | 小説 | Trackback | Comments(7)
お友達のお子さんが描いたというひまわり、まさに大輪の花。
力強いエネルギーを感じさせてくれます。
この小説はannさんのことだからハッピーエンドであると
信じています。是非そうなりますように(笑)!
力強いエネルギーを感じさせてくれます。
この小説はannさんのことだからハッピーエンドであると
信じています。是非そうなりますように(笑)!
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

若い頃の、常に恋の相手に夢中になる時、
あの頃を思い出すと甘酸っぱい気持ちになります。
沙耶の言動を思い浮かべるだけで
私までドキドキ・わくわく・切なくなっていきそうです。
そして夕子さんのほうは・・・??
大人の女性になったら・・・そんな対比を
これから楽しみにしています(^^)
あの頃を思い出すと甘酸っぱい気持ちになります。
沙耶の言動を思い浮かべるだけで
私までドキドキ・わくわく・切なくなっていきそうです。
そして夕子さんのほうは・・・??
大人の女性になったら・・・そんな対比を
これから楽しみにしています(^^)
ひまわりのような人って、どの人のことをさすのかしら?と
考えながら、楽しく読ませていただいています。
恵子、夕子、沙耶、それぞれの気持ちが
十分歳を取った私^^;には分かるようです。
なんだか甘酸っぱい気持ちになったり、ドキッとしたり・・・
今後の展開が楽しみです。
考えながら、楽しく読ませていただいています。
恵子、夕子、沙耶、それぞれの気持ちが
十分歳を取った私^^;には分かるようです。
なんだか甘酸っぱい気持ちになったり、ドキッとしたり・・・
今後の展開が楽しみです。

