小説 その11
ひまわりのような人
その11
田部夕子は日々の煩雑な中でほんの少し湧き上がったロマンスを忘れ去ろうとしていた。
結局同期生Kからのアプローチは三ヶ月たっても何もなかった。
会社の中でもすっかり大御所扱いされているので、体よく若い者たちに驕らされるのがおち・・という たまの会食で気分転換するくらいが関の山だった。
しかし一人暮らしもこのままにしておけない事情が次第に濃くなってきた。
夕子の両親は二人で暮らしていたが、五年前に軽い脳卒中を起こした母親の手助けはさすがに共に老いている父親だけでは心もとなくなってきていた。
父親は「大丈夫だよ」
とは言うが、実際実家に行って、その様子をみていると、台所の散らかりようなど日を追うごとにひどくなっていたのだ。
毎回の食事の管理もこれはかなり大変だと、もう見て見ぬふりはできなかった。
一緒に暮らすにはその子供たちの中では、今のところ夕子が一番問題は少なかった。
職場も地下鉄1本でいけるし、最近は残業も減っている。
この時勢を見れば、マンションの家賃もばかにならず、そろそろ夕子自身の老後を考えても親と一緒に住むことが良さそうだった。
兄弟もきちんと話をしようということで、夕子が親の面倒をみてくれれば、財産分与は放棄すると言ってきていた。
財産・・だがこのとき漠然とだが、この両親もまだまだ長生きで、自分たちの生活にその財産も少しずつ切り崩していかねばならないのだ、ということも夕子は気づいていた。
また、親の面倒を見られるというのは意外に嬉しいことなのだとも思えた。
だれに気兼ねするでもない、自分と両親との歴史というものは長く貴重なもだったのだから、親の余生を共に暮らし介添えできることは幸せだと気づいていた。
しかしそんな頃、夕子の運命が変わるような出来事が起ころうとしていた。
そのK君が堀田恵子に電話をかけてきたのだ。
「ちょっと相談に乗ってもらえないかなあ?タコのことなんだけど・・」
率直にでも遠慮っぽく電話の向こうで話すK・・黒田保夫。
40を過ぎた独身の男が恋愛話を持ってくる。
恵子は自然に心が昂ってくるのを感じていた。
「何・・会わせてほしいのね・・いいわよ!お安いご用!」
きっぱりと請合った。
つづく
写真は友人の三歳のお子さんが私の為に描いてくださった「ひまわり」

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by akageno-ann | 2009-08-17 17:45 | 小説 | Trackback | Comments(6)
う~ん、益々面白くなってきましたね!
年老いた親の介護など、身近な問題として
直面したことがない私ですが、そういったことも織り交ぜて
これから興味深い展開になりそう。。
早く続きを書いてくださ~い(笑)。
年老いた親の介護など、身近な問題として
直面したことがない私ですが、そういったことも織り交ぜて
これから興味深い展開になりそう。。
早く続きを書いてくださ~い(笑)。
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こんにちは♪
なんだか目が離せない展開になってきましたね。^^
親を介護することは幸せな事なんですよね。
忘れがちなことだと思います。
だって自分をこの世に送り出し、色んな経験をさせてくれたのも
親あってのことですもんね。
日本に両親をおいてきている私としては、色々考えることがあります。
続きが楽しみです♪♪
なんだか目が離せない展開になってきましたね。^^
親を介護することは幸せな事なんですよね。
忘れがちなことだと思います。
だって自分をこの世に送り出し、色んな経験をさせてくれたのも
親あってのことですもんね。
日本に両親をおいてきている私としては、色々考えることがあります。
続きが楽しみです♪♪



クリスタルさん、あなたの言葉に感謝を・・
>だって自分をこの世に送り出し、色んな経験をさせてくれたのも
親あってのことですもんね。<
そうなんですよ・・今つくづくそう思いつつ書いています。
じっくり書いていきたいです!よろしく!
>だって自分をこの世に送り出し、色んな経験をさせてくれたのも
親あってのことですもんね。<
そうなんですよ・・今つくづくそう思いつつ書いています。
じっくり書いていきたいです!よろしく!