小説 その24
ひまわりのような人

タイトル画 M.N
その24
黒田保夫と田部夕子は改めて恵子に引き寄せてもらってから、二度ほど二人で会っていた。
一度目は渋谷のオーチャードホールのブロードウエーミュージカル 「ウエストサイドストーリー」に黒田が夕子を誘ってきた。
幼い頃にアメリカ映画で見ていたものだったが、今は本場のミュージカルを日本にいながら見られる時代になったのだと・・時の流れを感じながらも、高校時代の友人であった黒田と恋人のように そのホールで待ち合わせすることに、ほんの少しの照れと緊張感が沸いてきている夕子がいた。
渋谷は地の利もよく、昼間の部への誘いだったので、そのまま夕食も一緒にということになった。
銀座線で久し振りに銀座に出た。原宿も渋谷も今は若者の町でやはり中年以上は銀座の落ち着いた雰囲気を好むのだ。
二人はコアビルの地下にある気取らないしゃぶしゃぶの店を選んだ。
焼肉よりもしゃぶしゃぶというのも・・ちょっと年齢のいっている二人ならではの選択だと
互いに笑った。
かつて高校生時代はラーメン屋で大盛りをいつも食べていた黒田だったが、酒と一緒の食事の席はすっかり様変わりしていたのだ。
「黒田君、今日はどうもありがとう。チケットはあり難く奢っていただくけど、夕食は私にお返しさせてね。」
そんな律儀な夕子を見て
「わかったよ・・素直にそうします。互いに気楽にやっていこうよ。」
しゃぶしゃぶここは一人ひとりの鍋で気ままに楽しめるカウンターにしていた。
横並びの席は面と向かう必要がないだけ、気楽だった。
かつて高校のクラスで隣通しの席になったことがあることを二人は思い出して懐かしんだ。
「あの頃、僕は君を大いに意識していたけれど、君は本当に自分の夢に向かって勉強してたなあ。」
夕子も笑いながら
「ほんとにねえ・・なんであんなにむきになっていたのかしら・・・負けず嫌いでね・・」
「男に対しても相当な競争心あった?失礼だけど・・」
謙虚に聞く黒田のことを夕子は快く受け入れることができた。
「そうよ・・私あの頃結婚なんて考えてなかったもの・・」
「ふうん・・で、今はどう?」
「これがねえ・・なかなか・・今日のミュージカルもそうだけど恋は悲恋がやはり素敵だと思うし・・結婚はなんか現実的で私は思い切れないのね。」
「今さら結婚を前提になんていわないから・・まあ美味しいものを食べたり、いいものを見たり一緒にたまにしてもらえばいいさ」
そんな黒田がその夜は夕子にとても爽やかな印象を与えていた。


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右の絵は間もなく4歳のりょん君の作品です。
by akageno-ann | 2009-09-22 23:29 | 小説 | Trackback | Comments(7)
お今晩はー
頑張ってくらさいねー応援してますよー
ポチ君とねー(笑)
頑張ってくらさいねー応援してますよー
ポチ君とねー(笑)
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なんだか大人のデートって素敵・・・☆
ため息が出てしまいます(^^)
ため息が出てしまいます(^^)

お互いにこなれて、ステキに年を重ねてこうやって出会わせてもらったから、自然にこうやって気持ちの良いスタンスで付き合って行けるみたいですね。
無理強いしない、気さくな関係って長く付き合っていこうと思ったら、大切ですよね☆
大人の男女の付き合い方って感じでステキです。
無理強いしない、気さくな関係って長く付き合っていこうと思ったら、大切ですよね☆
大人の男女の付き合い方って感じでステキです。
ドキドキします。続きが早く読みたいです。ワクワク♬

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