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ひまわりのような人 終章

ひまわりのような人

終章

堀田恵子は生きられることがわかった。

それほど体力が損なわれ、内蔵の出血がみられ、一時は相当に衰弱した。

恵子自身が自分の命はここまでではないか・・と悟った時期もあったのだ。

病院側から夫紘一郎に病状が伝えられた。
原因不明・・・・腸壁から出血が見られ、そのために強度の貧血になっているという所見。

内蔵の検査を細かく行うので1ヶ月の入院をすることを言い渡された。

その間の点滴による治療はその時の恵子の体によい影響を与えたようだった。

ビタミンCの不足による壊血病が昔はままあったようだが、今は栄養も十分な食生活が営まれ、それを守る家庭の主婦の力も大きく評価を受けるようになっていた。

医学的には先進医療にあてはまらないような恵子の病状だったが、入院は彼女に大きな休息を与えた。

長い間の舅との暮らしも知らず緊張感に包まれ、気遣いが思うように相手の心に届かず互いにストレスを感じているようなこともあったはずだ。

恵子はいつも比較的辛そうな顔を見せなかったから、夫も子供たちも、ましてや舅には全く彼女のことを思いやることが少なくなっていた。

恵子は自分でその答を出した。

病は結局恵子自身の出した休養宣言だった。


「思えば、親父の体は自然こちらが気にして無理しないように、またさせないように気をつけて、随分肩代わりすることも多いのに、この年になて身体がきつくなった自分たちの代わりは取りあえずなかったね。悪かったな・・家庭の事をそのまま君に頼みっぱなして・・」

紘一郎は早く恵子が入院することになってほっとしている。
あのまま家庭にいたら、またすぐに動き出してもっと重症になっていたのかもしれない。

「貴方にいつもひまわりのようでなくて良い・・と言ってもらって・・すごくほっとしたわ!
泣き言も愚痴も素直に言えるし、何より今いくらでも横になっていたいのよ。」

そう恵子は微笑んで紘一郎に話していた。

病院では個室を頼んで、二人は静かに過ごす時間を大切にしていた。

ふとドアがノックされた。

「どうぞ・・」

紘一郎が答えると看護士ではなくだれか見舞い客のようだった。
ドアは静かにゆっくりと開けられた。

「こんにちは・・田部です。」

夕子だった。

「まあ、タコちゃん、来てくれたの。どうしてわかった?」


「今朝ねちょっとお宅へお電話したら沙耶ちゃんが出てくれてね。最初は母がだれにも言わないで、っていうけれど・・といいつつ、私がむりむりどうしてもお母さんにお礼を言いたいからって頼んだら、ここを教えてくれたのよ。知らなくて、ゴメンナサイ・・お世話になったまま連絡しなくて。」

ゆっくりだけれども、夕子はそんな風に少しの間の無沙汰を詫びた。

紘一郎は見舞いの礼を言って、ゆっくりしてください・・と言ってその病室を出た。


「タコ・・ありがとう。最初は本当に誰にも会いたくなかったけど、回復して今は退屈してたのよ。そして貴方のことも気になっていたわ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この項つづきます

by akageno-ann | 2009-10-13 23:27 | 小説 | Trackback | Comments(2)

Commented by panipopo at 2009-10-15 21:14 x
そんな重い症状が出てたんですね。。。
こうやっての休養は、恵子さんにとってもギフトだったのかと思うと、ちょっと複雑ですが(旅行とか楽しいことでの休養の方がいいという意味で)、でも体の芯からゆっくりと出来るのはいいことですものね。
家族のきずなもきっとこうやって強まって行くんだと思います。

この続き、どうなるのかしら!?
楽しみですよ~!

無事に田舎について初日の今日、片付けをしたり洗濯をしたり。。。
祖母に顔を見せに行ったり。
ゆっくりと過ごしてます。久しぶりで。。。これまた、戸惑いながらの休養日です^-^
Commented by akageno-ann at 2009-10-17 15:02
panipopoちゃん、女の人の病気ってその時の環境で
命にかかわるということを随分と見ました。
でも休養をしっかり取ることが大事だ思うの
ここで出会う人々も皆頑張りやさんだから、良い休養や
旅をしてほしいなあ・・って考えています。
しっかり貴方も休養してね!
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