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コスモスのように・・その4

コスモスのように

その4

子供というのは成長と共に その親の思いがそのまま彼らに通じているかと思うと 意外に子供の頃の感覚のままにあることを思い知らされるものだ、と恵子は感じていた。

が、こうして主婦としての自分が家庭に居られない状況になると、そこで子供たちは突然にやむを得ないように成長を早めることがある。

そんなときは思い切って子供たちに任せてみるのも一つの妙案で、知らず自分が楽になっていることに気づいた恵子だった。

舅との生活も離れてみるとこんなに心が楽なものなのか・・とびっくりするほど感じることができた。

自ら離れようとは思っても見ず、子供たちとの間に入って自分ひとりで苦労したような錯覚を持っていた時期もあったと、今はじめて知った。

若い頃に今の恵子の年齢にそう遠くない舅との距離はかなり遠いものだった。

恵子はなんとか自分をこの嫁ぎ先に受け入れてもらおうと、あるいはかなりの無理をしたのだ、と今、あらたに思い知ったところだった。

しかし、我が子が成人して、こうして病院のベッドに横たわると自分も随分と年をとった、と感じられてほっとしている恵子がいた。

夫の優しい心遣いは今までにないものがあり、常に無理をしなくていい、家庭の中でいつも光り輝く太陽のような母でなくていい、ひそやかにそこに佇んで可愛らしく長く咲いているコスモスのようでいてほしい、と言われて、この人はいつもよりずっと詩人のような言葉を投げかけてくれると、微笑んでしまった。

そのくらい妻の重病に動転していたのだろう。

この機会がなかったら、もしかしたら自分たち夫婦はちょっと別な路線に進んでいたのだ、とも感じた。

子供たちはなるべく苦労させないように、とばかり考えてここまできていた。

もちろん苦労はさせたくはない、だが苦労のなさすぎる生活は決して子供たちを成長させないとも知った。

娘の沙耶は中村との失恋も子どもっぽい感覚で立ち直っていた。

その時の支えも母の恵子だったのだ。

その母が直後に病に倒れて、沙耶は自分の甘さを思い知ることになった。

母があの時 命を落としていたら・・と想像するだけで震えがきた。

だが、親にいつまでも甘えてはいられないということを一番に理解したのもこの沙耶だったかもしれない。

つづく

コスモスのように・・その4_c0155326_1645919.jpg

コスモスのスケッチ画はブログの友人 CHILさんの作品を拝借しています。

 ☆ これからまた作品を書かせていただきます。

   どうぞ気楽に覗いてください。よろしくお願いします。
                                              Y.N.

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by akageno-ann | 2009-11-07 23:34 | 小説 | Trackback | Comments(3)

Commented at 2009-11-08 18:19
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ka-chan-anone at 2009-11-08 22:09
3話分まとめて読ませていただきました。
倒れてしまってから・・・とはいっても、
それでも「コスモスのようにいてほしい」という優しい旦那様の言葉かけ、
すっごくうらやましいです。
いいなあ・・・。
Commented by ann at 2009-11-10 08:20 x
いつも応援ありがとうございます。
コスモスの言葉をchilちゃんにもらったので
かけてます・・
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