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コスモスのように・・その5

コスモスのように  小説

その5

紘一郎と恵子の長男優(すぐる)が生まれた時に、一番優を可愛がってくれたのが亡き紘一郎の母だった。

いとおしそうに抱いては優しい声で子守唄を歌うと初孫の優は気持ち良さそうに眠っていた。

その母は60歳を前にして心筋梗塞であっという間に亡くなったのだった。

そのあまりに突然な出来事にそれまで家庭を妻に預けて、気ままを通してきた舅は魂が抜けたようだった。

仕事も定年を迎えて、嘱託で働いていた時期で何もかもやる気が失せてしまっていたのだった。

その父親をほってはおけないと 紘一郎はすぐに同居を決めた。

家も大きく同居にも無理はなかったので 恵子もそれに応じた。

こんなことなら、姑が元気な頃からそうしておけばよかった、と その後も何度思ったかしれなかった。

孫への慈しみも女親の方がより強いものがあったのだ。

家庭にいることになれない舅と恵子は見えない壁が薄くあって、恵子は心が重かったようだ。

それでもその後子供たちが3人になって、その子育てと家事に追われて年月は瞬く間に過ぎていったのだった。

その長男優は適齢期になって、つきあっている女性がいることを恵子はうすうす感じていた。

男の子を持つと、相手の女性に対して我が息子が優しい心遣いができているのかとても心配だった。

恵子はある日 一人で病院を訪れた優に しっかりと聞いてみた。

「貴方はお付き合いしている人とはこれからどうするの?」

優は唐突な母親の質問に笑顔で応えた。

「結婚したいと思ってるよ。良い子なんだ、母さんのこともとても心配してるしさ、彼女お母さんが小さい頃になくなっているんだよ。」

その最後の言葉に心を捉えられた恵子は

「会いたいな、お母さん、その方に」

そう自然に申し出た。

「つれて来ていいのかな?」

「来てくれるの?」

「うん、お見舞いしたいって言ってるんだ。」

そう話はスムーズに流れたので、恵子はこの恋愛はかなりすすんでいるのだ、と感じた。

「そう、では入院中に紹介してちょうだい。」

優はほっとしたように久し振りの笑顔になっていた。

つづく

コスモスのように・・その5_c0155326_1645919.jpg

コスモスのスケッチ画はブログの友人 CHILさんの作品を拝借しています。

 ☆ これからまた作品を書かせていただきます。

   どうぞ気楽に覗いてください。よろしくお願いします。

小夏庵ものぞいてくださいね。

                                              Y.N.

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by akageno-ann | 2009-11-10 12:11 | 小説 | Trackback | Comments(5)

Commented at 2009-11-10 13:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-11-10 15:14
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-11-12 17:16
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by akageno-ann at 2009-11-12 18:04
鍵コメさま
温かいメッセージをありがとうございます!
Commented at 2009-11-12 23:13 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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