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コスモスのように・・その6

コスモスのように  小説

その6

優は長谷田美津子という女性を伴って、恵子の病室を訪れたのはそれから間もなくのことだった。

その二人の熱心さがこの恋愛の深さを意味すると恵子はわかっていた。

小さな紙袋に入った見舞いの品は 黄色いバラをカービングした石鹸だった。

「美津子さんがお作りになったのね・・心のこもったお見舞いをありがとう。」

美津子の儚げな雰囲気が恵子には少し不安を感じたが、優しく大人しい性格は優の相手としてはちょうどいいとも感じていた。

「はじめまして、美津子です。」

緊張気味な美津子に椅子を勧めて、病室の冷蔵庫に入っているゼリーを優に持ってこさせよとした。

「あの、私がいたします。」

静かに立ち上がって冷蔵庫に向かう美津子を、ちょっとしっかりしすぎているのでは・・とも感じた。

だが今はそういう気遣いのできる若い女性は希少価値かもしれなかった。

少しずつその場の空気を読むように、優と恵子の親子関係中に入ってきて、優しい会話が広がっていた。

「優は優しくしていますか?そういう人になってほしくて、優という名にしたのよ。」と冗談を交えるように聞くと、

「はい!とても優しくしてくださいます。」

と、ストレートに返ってくる。

この素直さは我が家のどの子どもよりも素晴らしいと思った。

初めて、あらたに家族になるかもしれないこの女性が新しい感覚を我が家に運んでくれるのだと思えた。


さて、堀田家は舅の采配で順調に時に大変なこともありながら、キッチンと風呂場の改装が進んでいた。

長いこと自動温度調節器のついてなかった風呂の湯沸しで何度失敗したかわからない恵子の苦労を、少しずつ皆がわかってきていたのだ。

今度の風呂には自動湯張りの装置がしっかりしていて、スイッチ一つで入りたいときに入れるという新兵器が導入された、と舅も 大いに喜んでいた。

by akageno-ann | 2009-11-12 23:05 | 小説 | Trackback | Comments(5)

Commented at 2009-11-13 07:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ka-chan-anone at 2009-11-13 21:06
「ひまわり・・・」の小説では、
恵子さん・夕子さん・沙耶と3人の女性を、
そしてこの「コスモス」」」では
新たに美津子さんの登場。
annさんの描く女性達を見るたびに、
私はこんな時どんなだろう・・・と我を振り返ったり
どの人に一番似ているかしら・・・と考えたり(^^)
こんな時間が楽しい私です☆☆
Commented at 2009-11-14 20:51
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-11-17 18:16 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by akageno-ann at 2009-11-17 22:51
様々な女性像にご自分を重ねてみてくださる・・ということばにちょっと面映さを感じたり・・京都に行ってました・・女性同士で行く京都もちょっと小説にしたい場所がたくさんありました。
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