コスモスのように・・その19
いよいよ年末・・2009年が暮れていきます。

友人からのハンドメイドのプレゼントに心癒されています。
年末の煩瑣な生活の中にほっとする一時でした。
小説 コスモスのように
その19
恵子はこの度の病によって一番衰えたのは口元だと思えた。
歯茎が弱まったせいか、頬が痩せて哀しかった。
若い頃はそれなりに魅力ある顔立ちで、そこそこに男子陣からも人気もあり、ちやほやされるという経験もあったのだが、そんな事実さえ、もう誰も認めてはくれないだろうとちょっと落ち込む思いを夫の前では無理して隠していた。
三田紀子の清楚な美しさを正直に誉める夫や舅に 体が嫉妬心をあらわすように緊張する癖が出ていた。
しかしそんなことを強めていると折角良くなってきている体調にも悪い。
しかも紀子は全くそんな気配も見せない、気丈さがあった。
きっと亡くなった彼女の夫との夫婦生活は充実していたのであろう。
夫婦の時間はそのどちらかが命を無事終えたときに、残された者に充足感が少しでもあれば、人間は一人で暮らしていけるのかもしれない、と思えた。
恵子と紘一郎の夫婦はどうなのだろうか?
その努力はしてきたつもりだが、こうして体の弱まった者からするとそれは心もとない事実になっていた。
例えばこうして旅をして思い出を作っておくこと、美味しいものを食べたり 二人でお酒を飲んだりして心地のよい時間を共有しておくこと、それが必要な気もしてくる。
そして空元気でもいいから幸せな感覚を互いに知らせておく必要があると思えた。
家庭の中で互いの必要性をやはりしっかりと表すときがあり、認め合うことがあれば、家族はほんの少しそこで幸せになれそうだ。
子どもたち、舅の関係においてもそれはいえることなのかもしれない。
そう恵子がふと気づくと・・素直に生きていこうと思えるのだった。
それは創り上げるというよりも自然に行う心の作業だと思うのだった。
つづく

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これまでの作品はこちらから→「アンのように生きるインドにて」
by akageno-ann | 2009-12-26 22:51 | 小説 | Trackback | Comments(3)

確かに若い人はまぶしいですよね。
私も20代の女の子たちを見ると、うらやましくなるから、恵子さんの気持ちも分かるような気がします。
でも、恵子さんの中でもそうやって物事を割り切って、自分なりに消化しようという前向きな気持ちが伝わってきました。いいことですよね。
私も20代の女の子たちを見ると、うらやましくなるから、恵子さんの気持ちも分かるような気がします。
でも、恵子さんの中でもそうやって物事を割り切って、自分なりに消化しようという前向きな気持ちが伝わってきました。いいことですよね。
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ぱにぽぽちゃん、ひとまずこの小説がまた区切りになります
いつも本当にありがとう!次の題名はまた「アンのように・・」です!
いつも本当にありがとう!次の題名はまた「アンのように・・」です!

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