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コスモスのように・・その20

いよいよ年の瀬です。
この小説もここまで続けてこられました。
読んでくださって本当にありがとうございます。
コスモスのように・・その20_c0155326_23223959.jpg

初作「アンのように生きる」から丸二年・・自分のライフワークになっています。
コスモスのように・・の堀田恵子はいよいよ来年は「アンのように」というタイトルの中で精一杯の人生を再出発させます。

どうぞまたお立ち寄りください。
今年最後の小説です!

小説 コスモスのように

その20 最終話

三田紀子への感謝の会を堀田家は盛大に行うことにした。

恵子と娘の沙耶、そして男たちも手伝って、三田紀子にご馳走しようという計画を立てた。
会は1週間後のことだった。

その日が紀子の家政婦として最後の仕事の日だった。

紀子はいつも午前中から来てもらっていたが、最後の一週間は彼女がいなくなる生活に恵子が慣れる様に、午後からにしてもらっていた。

土曜日の午後・・その日 紘一郎も 長男の優も仕事は休みで、家にいた。
もちろん次男の貴も 舅も。

皆それぞれに三田紀子への思いは違っていたが、共通するのは彼女への大きな感謝だった。

主婦の恵子が長い入院生活にいる間も、家庭生活が殆ど滞ることなく送れたのは、紛れもなく紀子のお陰だった。

決して派手ではないが、毎日味の良い食事つくりときちんとした掃除。

洗濯は皆それぞれに洗濯機で行っていたが、取り込みは彼女に委ねていた。

次第に崩れる緊張感とは裏腹に親しみが湧き、次第に甘えも出かけていたところだった。

家族の絆は主婦が病に伏せることで深まることはなかった。

それを一番に感じたのは恵子だった。

自分の代わりはいるのだ・・と痛感した。

そしてそのことは決して哀しいことではなかった。

もっと自分のための人生を考えなくてはいけない、といういいきっかけになった。

そう思えるようになったのも、恵子の健康が戻ってきた証拠のようだった。

家族の絆は、また新しく築いていこう、恵子はそう一人思っていた。

病で得たものは、主婦としてマンネリな生活に慣れ親しんで年をとっていくことは、ある種の危険があるという教訓だった。

自分はこれだけ頑張ったのだから、という自負は持ってはいけない、ということだった。

それよりも、これから今までのように活動的ではない、自分ができることはかつて好きだった手芸や園芸を復活させることだと、気づけた。

子どもたちが小さな頃は家に閉じこもっていたから、よく手芸に打ち込んでいた。
しかしそのときに作ったものは子供の喜ぶようなデザインや、学校からの指定のもだった。

いつか自分らしいものを・・と思いながらここまで過ぎてしまったら、ミシンも編み棒も自分の目の届かない場所にあった。

幼い頃から憧れていた、少女小説「赤毛のアン」の世界にあるようなハンドメイドの世界を自分なりに展開することだった。

それがきっとできるような気持ちなった。

家事はもっと家族に手伝ってもらおう。

何もかも完全を目指して行うのはやめよう。

そう夫の紘一郎は促してくれているのだ。


素直に、自分のしたいことを遠慮なくやっていこう。

そう思ったとき、恵子は大きな呼吸ができた。

三田紀子に感謝をして、彼女が整理整頓してくれた家庭を維持して、自分もまたここで行きなおしていこう、と恵子は心元気に思うことができていた。

しかし、家族はまだ恵子の決心には気づいていなかった。


小説「コスモスのように」                             了

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これまでの作品はこちらから「アンのように生きるインドにて」

by akageno-ann | 2009-12-30 00:13 | 小説 | Trackback | Comments(6)

Commented by panipopo at 2009-12-30 22:46 x
恵子さんも家族も、それぞれの思いを持っての三田さんのお別れ会だったんですね。
一時的でも、仮の主婦として助けてくれた三田さんへの思い。
読んでいて、恵子さんの心の移り変わり、よくわかりました。
これからは、もっと自分の人生を楽しく豊かにしてもらいたいですよね。

annさん、今年はお世話になりました!いろいろとありがとうございます。
また来年もよろしくお願いします☆ 良いお年をお迎えくださいね。
Commented by nanako-729 at 2009-12-31 05:19
おはようございます!
これから恵子さんの新しい世界がひろがっていくのでしょうか?
来年もマイペースでがんばってください、続きを楽しみにしています!

よいお年を~~(〃⌒∇⌒)ゞ
Commented at 2009-12-31 20:13
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by akkunne at 2009-12-31 20:16
今年も大変お世話になり
ましたー来年もよろひこ哀愁でお願い致します。
Commented by daikanyamamaria at 2010-01-01 01:26
        ●
      _(__)_
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    ( ________ )
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         ̄  ̄

今年もよろしくお願いします☆☆*:.。.☆*†

美しい物語。。。今年も楽しみにしています^^☆*:.。.☆*

    daikanyamamaria☆*:.。.☆*†
Commented at 2010-01-01 16:07
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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