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アンのように 3 

小説を書いています。

かけがえのない日本の片隅から
第1、2章はこちらから→「ひまわりのような人」・・「コスモスのように

アンのように 3  哀しみの中に

正一郎は孤独の中にいた。

妻に先立たれてからも 長男の家族は増え、孫も共に住んでいる今の家に、自分の過去を本当に理解するものはいないのだ、と心寂しく感じていた。

自分の歩んできた人生を少しでも感動して讃えてくれるものに出会いたかった。

妻の墓参が増えたのは ふと心の内を彼女に話たかったのだ。

J航空社が破綻するなど、だれが想像しただろう。

おそらくはその会社の人々とて 信じられないことだと思う。

人間はどこかで安穏としてしまい、今ある幸せに気づかず、そこに胡坐をかくようなことがあると、必ずやそのしっぺ返しに遭う事になる、とは大きな戦争や災害に遭遇しながらもここまで生きながらえた自分に何か運のよさと、地道な努力が実ったのだという自負がない交ぜになって心に押し寄せるこの頃だった。

だが、そんなことを理解するような静かな会話をできる友人も少しずつ減ってきている。

少しまた無口になっている 舅正一郎を 嫁としての恵子はほんの少し彼の体調の心配を始めていた。

年もいつの間にか80歳を越えて老いはしずかに確実に忍びよってきていた。

つづく

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これまでの作品はこちらから「アンのように生きるインドにて」

小夏庵もよろしく!

by akageno-ann | 2010-01-20 17:51 | 小説 | Trackback | Comments(2)

Commented by panipopo at 2010-01-20 23:04 x
お舅さんの弱って来たことを心配するのは、家族だったら当然ですよね。
でも、人間は理解してもらえないと、無口になるんだなって私も思い始めていたのです。
まさしくうちの夫の祖父はそんなふうになってます。あれほど饒舌だったのに、とっても静かになってしまったんですよ。
そして、よ~く根掘り葉掘り聞くと、少しずつ話し始めるけれどそんな気力もないという感じなんです。だから、心配しています。
正一郎さんの老いは、息子さんにとっても、義理の娘さんの恵子さんにとっても心配になりますよね。
Commented by akageno-ann at 2010-01-22 07:28
ぱにぽぽちゃん
貴方にいつもコメントいただけてとても光栄です
フランスの方のお話にも新たな興味をもって
伺いました。
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