アンのように 4 終焉の前に
小説を書いています。
かけがえのない日本の片隅から
第1、2章はこちらから→「ひまわりのような人」・・「コスモスのように」
アンのように4 終焉の前に
人間の生への執着はまことに個人差がある・・・
そのことを恵子は自分の重篤な病の床で知った。
同じ病棟で親しく話をするようになった白井という女性がいたが、子宮癌から癌の進行が止まらずに入退院を繰り返していた患者だった。
上品で物静かだが、病棟に医師や看護士とは殆どの人と知り合いで、馴れ馴れしくはないが、こころやすく話をしているところが見てとれた。
恵子はどんな病院でも、退院の際には何かしらお礼の気持ちを表したいと思っていたが、あまり派手なこともしたくないのでその白井に尋ねてみた。
そういうこちらの真面目な内容についてきちんと応えてくれる人だとわかったからだ。
彼女は大仰なことでなければ 例えば手紙と品物など心から気持ちは大抵の場合受け取ってくれるのではないか・・と あっさりと応えてくれた。
その白井本人はおそらく見えないところでそういう気持ちを表していると感じた。
もう2年にわたる入退院を含めた闘病生活の中で 医師と看護士たちが常に温かい心の通った言葉かけをしてくれることが、どんなに病気と闘っていける糧になるかを教えてくれた。
長く孤独な戦いなのだ。
舅正一郎の中にどれほどの生への執着があるのか?と
恵子はふと考えた。
かつて一度 胃潰瘍で入院加療した時はその気持ちがひしひしと伝わって、そのことがどれほど病気からの回復を早めたかを恵子は知っている。
それに比べて、最近の正一郎は 先に進み 自分の人生を畳もうとしているように見えてきた。
つづく

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これまでの作品はこちらから→「アンのように生きるインドにて」
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by akageno-ann | 2010-01-21 18:37 | 小説 | Trackback | Comments(2)