アンのように その5 突然の発作・・
小説を書いています。
「かけがいえのない日本の片隅から」
第1、2章はこちらから→「ひまわりのような人」・・「コスモスのように」
アンのように 終焉の前にアンのように その5 心臓発作
その夜8時を過ぎて 夕食が終わったが、夕食時も殆ど 正一郎は無口だった。
かといって、日ごろからさほどイニシアチブをとるような会話をしていないので、家族はだれもその異変にすぐには気づかなかった。
だが、恵子は食器を洗いながら、食べ残しの多い正一郎の皿を見て、ふと気になり、居間の方を振り向いたが、そこに舅の姿はなかった。
湯飲み茶碗もそのままだったので、舅の自室に届けながら様子をみようとしたときに、その居間の方向でばたんと何かが落ちたような音がした。
夫の紘一郎も少しおどろいて腰を浮かせた。
ほぼそれと同時に 「おじいちゃん」と叫ぶ声が聞こえた。
「お父さんおじいちゃんが倒れちゃった」
叫んでいたのは娘の沙耶だった。
かろうじて 正一郎の頭を支えて 廊下にうずくまるような姿でいたのだった。
紘一郎はすぐさまクッションを持ち、その上に父親の頭を静かに置いて
「救急車を呼びなさい」と 冷静に言葉を発した。
「おじいちゃん、生きてるの?」
恐る恐る聞く沙耶に
「大丈夫息をしている。だが安静にしなくてはならない。まだ頭なのか心臓なのかわからないんだよ。」
とその言葉だけはとても不安を隠しきれるものではなかった。
ばたばたと家族中がその辺を右往左往するが、胸元を開いて呼吸が楽になるようにして毛布で体を覆って冷やさないように紘一郎の体がその病人の体を覆うようにしていた。
心臓の音と呼吸の音を確かめるようにして。
闇の中に サイレンと 赤色灯の回る様子が近づいてくるのを長男の優が家のある住宅地の角で待ち受けていた。
おそらくそこまでに時間は15分とはかかっていなかったのだが、堀田家の一人ひとりにはまるで1時間も待っているような錯覚に陥って 心は焦りを隠せなかった。
つづく
応援クリックに感謝します
これまでの作品はこちらから→「アンのように生きるインドにて」
小夏庵もよろしく!
by akageno-ann | 2010-01-22 15:15 | 小説 | Trackback | Comments(2)
Commented
by
higeji-musume at 2010-01-24 12:55
アンのように・・・
ここまで読ませていただきました。
私には経験がありませんが、
家族が倒れた現場にいるのは、息がつまりそうです。
でもこの世に生を受けた以上、
誰にでもいつかはやってくる終焉の日。
運命とは言え、怖いです。。。
ここまで読ませていただきました。
私には経験がありませんが、
家族が倒れた現場にいるのは、息がつまりそうです。
でもこの世に生を受けた以上、
誰にでもいつかはやってくる終焉の日。
運命とは言え、怖いです。。。
0
Commented
by
akageno-ann at 2010-01-25 19:53