その6 救命
小説を書いています。
かけがえのない日本の片隅から
第1、2章はこちらから→「ひまわりのような人」・・「コスモスのように」
アンのように その6 救命
救急隊員の処置はまことに親切で機敏だった。
幸い家族も大勢いて温めていたということが幸いして、正一郎の命は助かっていた。
隊員は先ず 大きな声で父を呼んでいた。
「堀田さん、堀田さん。わかりますか?」
「・・・・・」
無言ながら患者には何かを応えようとする様子が伺えた。
「心筋梗塞の疑いがあります。どちらかかかりつけの病院はありますか?」
隊員に聞かれて、即座に答えたのは嫁の恵子だった。
「かかりつけは近くの Tクリニックですが、そちらから一度 K大付属病院を紹介されて罹ったことがあります。」
「そうですか?あそこなら救急としてとってもらえるでしょう。」
そういうと早速 救急車にいる隊員に連絡を取らせた。
その間に病歴や名前 生年月日など聞かれて、正直鬱陶しくで 一刻も早く運んで欲しいと思うのに、病院の受け入れが決まらないとなかなかそうも行かず、酸素吸入や胸のマッサージを一通り行っていた。
幸い正一郎の様子は安定しているように思えた。
「受け入れOKが出ました。」
隊員からのGOサインで、担架に乗せられた正一郎は 二人の隊員によって、救急車に運ばれた。
隣人が3人ほど出てきてくれていて、静かに様子を見守ってくれている。
このあたりの近所付き合いは比較的上手くいっているので、何かあればすぐに手伝ってくれるようであった。
「お一人一緒に救急車に乗ってください。お帰りは遅れませんのでお車があるようですからあとからいらしていただける方がいいですよ。」
そうテキパキと伝えてくれた。
救急車には紘一郎が乗り込み、長男の優が 一足遅れで恵子を乗せて病院に向かうことになった。
「では 受診券と保険証をお持ちください。ご本人は落ち着かれましたのできっと助かると思いますが、こちらは急ぎます。」
そう言って 暗い夜の中を サイレンを鳴らして走りだした。
恵子はご近所の方たちに
「ありがとうございます。お騒がせしてすみません。」
「お大事に・・」の言葉だけ残してその人々も家に入った。
家に急いで 入って 恵子は 舅正一郎の今に入り、彼のバッグを探した。
老齢でもしっかりと片づけをしているので、そのいつものバッグは壁にかけられ、その中に受診用の一式が見つかった。
「 さすがだわ 」と 恵子は心で呟いて 自分のバッグに入れ、既に車を用意してくれている優の運転で家を出た。
こういうときに子どもたちは大変役にたってくれる、と留守番の沙耶と貴に家のことをよくよく頼んだ。
つづく

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これまでの作品はこちらから→「アンのように生きるインドにて」
小夏庵もよろしく!
by akageno-ann | 2010-01-24 14:36 | 小説 | Trackback | Comments(10)
自分が救急車で運ばれることが何回かありましたが(牡蠣にあたって)主人がそうなった時はどうなるんだろう?なんて連想しながら読みました。描写がリアルでannさんも何回かご家族の方が救急車で運ばれたご経験があるのかな?と思いました。次回め早くよみたいです。
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
本当に描写がリアルで驚きました。目に浮かぶようです。
私も一度、救急車で運ばれた経験が。。電車の中で腹痛がひどく
終点に到着早々駅員さんに救急車を呼んでもらいました。
病院にかつぎ込まれた後、暫く休んで楽になりましたが。。(苦笑)。
続編を待ってますね。
私も一度、救急車で運ばれた経験が。。電車の中で腹痛がひどく
終点に到着早々駅員さんに救急車を呼んでもらいました。
病院にかつぎ込まれた後、暫く休んで楽になりましたが。。(苦笑)。
続編を待ってますね。

正一郎さん、倒れてしまったんですね。
でも家族のいる時間帯でよかったです。
食事のときからの描写が素晴らしいので、すらすらと読んでしまいました↓。
日本ではこうやって救急隊は動くんだなっていうのが、読んでいてわかって、興味深かったです。
ちゃんと家族がいてサポートしてくれたり、ご近所の方々も心配してくださるのはありがたいですよね。
でも家族のいる時間帯でよかったです。
食事のときからの描写が素晴らしいので、すらすらと読んでしまいました↓。
日本ではこうやって救急隊は動くんだなっていうのが、読んでいてわかって、興味深かったです。
ちゃんと家族がいてサポートしてくれたり、ご近所の方々も心配してくださるのはありがたいですよね。
絵本のつづきができました。どうぞよろしく!


akkuneさん・・・どうもありがとう
お体気をつけてね・・
お体気をつけてね・・

ロビンちゃんも経験が・・自分の場合はまたちょっと趣き違いますよね
付き添いはアドレナリンが出ちゃって・・妙にテキパキしてしまいます。
付き添いはアドレナリンが出ちゃって・・妙にテキパキしてしまいます。
