人気ブログランキング | 話題のタグを見る

その15 囚われてはいけない

小説を書いています。

かけがえのない日本の片隅から

アンのように その15 囚われてはいけない

紘一郎 恵子の長男 優は 結婚を約束した女性がいた。
長谷田美津子は最近様々な家庭内の事情に変化のある堀田家を知って、少しでも何かの役に立ちたいと切に願ってるような女性だった。

恵子はもちろん彼女のことをよく承知していて、いつまでも待たせていてはいけないと考えてもいた。

「優、美津子さんはその後どうしていらっしゃるの?」

恵子は舅の入院している病院から優の車で二人での帰途 さりげなく聞いていた。

「彼女はどんなときも僕に協力的なんだ。」

優は運転しながら表情は変えずに応えた。

「貴方ももう26歳よね。自分の家庭を持つのに不安がなければ、そろそろ結婚のことを決めないといけないわね。私の病気でも随分心配かけたし・・」

恵子がそういうと、

「いや、母さんの体を心配するとまだ、そんなに急がなくても、とは思うけど、彼女は役に立ってくれる人だよ。」

その優の言葉に、少し恵子は苛立ってしまっていた。

「優、その辺でちょっとお茶を飲んでいきましょう。」

恵子のその申し出に少しおどろきながらも優はファミリーレストランの駐車場に車を止めた。

店に入り、奥の角の落ち着いた場所に座って二人はコーヒーとケーキのセットを頼んだ。

恵子はすぐに話を切り出した。

「優、我が家のお手伝いに美津子さんをお嫁さんにもらってはいけませんよ。
貴方は二人の生活をしっかり立ち上げなさいね。
この時代女性もしっかり仕事を持つべきだと思うし、子育てだってきちんと二人で考えてやっていきなさいよ。あなたの優しい気持ちは有り難いけれど、親と共存することは私はちょっと賛成できないの。」

そこまで息も切らずに一挙に語る母親恵子を優は初めて、ある強さを感じた。

それまでののんびりと優しいと思った母とは違っていた。

つづく
その15 囚われてはいけない_c0155326_223992.jpg


絵は「ひげじい脳梗塞からの軌跡」より拝借しています。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
応援クリックに感謝します

これまでの作品はこちらから「アンのように生きるインドにて」

小夏庵もよろしく。

by akageno-ann | 2010-02-15 22:35 | 小説 | Trackback | Comments(8)

Commented by nanako-729 at 2010-02-16 09:28
おはようございます!
あぁ~やっぱり、この絵は奈良公園の浮御堂だったのですね!
水のない季節にここ散歩したことあります!
ひげじいさんの絵、いつも素敵です!
Commented by ka-chan-anone at 2010-02-16 11:23
ちょううど我が家も兄の結婚が決まったあとに
父が倒れました。
兄の結婚は延期されましたが、
母も自分たちのことで子どもの幸せを縛りたくなかったと
思います。
Commented by akageno-ann at 2010-02-16 16:03
nanakoさん、いらしたことがあるのね・・素敵な場所なのね
私の行きたい場所が増えました。
Commented by akageno-ann at 2010-02-16 16:04
CHILちゃん、絵をコラボさせていただいて本当に感謝してます。
貴方の思いもここにあるような気がします。
Commented at 2010-02-16 16:30 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by panipopo at 2010-02-17 00:22 x
恵子さんのように素晴らしいお母様がいて優さんは大変幸せですね。
息子の嫁になるかもしれない女性を大切に思ってくれる母がいるって、ありがたいと思います。
そして、そんな母親を気遣う息子も素晴らしいと思います。
恵子さん、病気してから、一本筋が通った強さを感じます。
Commented at 2010-02-18 02:16
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by akageno-ann at 2010-02-18 07:23
家族のあり方夫婦のあり方について率直に、また鍵コメにての感想をいただいて、こうして書かせていただいていることに感謝しています。今の日本の家族、夫婦のあり方は随分変化していますし、また逆にかつての日本の家のように何世代での生活も新しい感覚で行うことによって良い方向を見出すこともできると感じるこの頃です。皆様の感想を踏まえてまた続かせていた着ます。どうぞよろしく!オリンピックもなかなか面白くなってきましたね・・
名前
URL
削除用パスワード