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アンのように その16  親の力

小説を書いています。

かけがえのない日本の片隅から

アンのように その16

静かな夕暮れ時はあたりの風景にオレンジ色のフィルターをかけられたようで、恵子の一番好きな時間だった。

日々の生活の中にも大きな起伏があって家族が多いほどその内容も様々にあり、その中心になって動くのは主婦なのだと、実感するのだった。

舅の正一郎の心臓の手術はそのまま行われることになり、検査のために先ず一週間の入院が必要ということになった。

大手術を行うのであるから、先ず余病の検査、更に詳しい心臓と血管の検査が行われた。

一々と本人と家族への説明があって、その都度に承諾書をとる方式にいささか長男の紘一郎はうんざりするような思いを重ねながらも、長男としての責任を果たすべく従わざるを得なかった。

恵子はこのひと時を大切にしていた。

まだ舅は何事もなく元気に過ごしている。
病の宣告を受けていても病院で静かな日々を過ごせている。

そのことで大きな平安を心に感じていた。
取り越し苦労をせずに、今そのときを大切に生きる。

その大切さを共にいる人々とも共有する。

舅のことは最後の日まで丁寧に世話をしよう。

そのことがきっと自分の納得のいく人生の形成につながるのだ、と感じていた。

子どもたちの教育も終盤にさしかっているが、まだまだこれからの自分たち親の姿はしっかりと見せてやらねばならない、と考えていた。

つづく

by akageno-ann | 2010-02-20 22:32 | 小説 | Trackback | Comments(5)

Commented by ぱにぽぽ at 2010-02-22 03:16 x
やはりインフォームドコンセプトで、いろんな承諾書を取り付ける必要があるんでしょうね。
私も日本で今回歯医者さんに行ったら、どんな治療をするか、その予後も含めて丁寧に説明されたので、ビックリしました。
アメリカだったら慣れているけれど、日本の田舎でもそんなふうになって来ているんだなって感心しましたよ。

恵子さんの決心、潔くて素晴らしいです。
今、ここのおばあちゃんが転んで、金曜日の夜に手術してあと4週間ぐらい入院します。
幸い手なので、歩けるのがいいんですが。
だから、お義母さんの大変さが恵子さんのそれと重なりあいました。
Commented by flyrobin at 2010-02-22 06:21
annちゃん。。。
私ね、どうしてもこの小説の主人公をannちゃんと重ねて
しまうんです。annちゃんもお義父さまを最後の日まで丁寧に
お世話することでご自分の納得いく人生の形成に繋がると
感じていらっしゃるのではないですか。
ご結婚なさった時はお義父さまのお世話をなさると思っていらっしゃった
かどうかはわかりませんが、インドでの海外生活などを経て、
現在では身近な方に必要とされ、その方との関わりあいの中で
女性としてだけではなく、人としても益々深みのあるすてきな方と
なっていらっしゃるんだろうな。。なんて思っています。

今日も勝手なことばかり書いてしまいました^^。
Commented at 2010-02-22 07:30
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ann at 2010-02-22 13:45 x
ぱにぽぽちゃん、ご自身の体験を書いてくださると本当にこちらも参考になって、しかもフランスのお年寄りの暮らし方やその周りの方の暖かいとりなしについて知ると嬉しくなります。
おばあちゃま早く良くなりますように。
可愛い孫の貴方たちご夫妻がいることが大きな励ましだと思います。
Commented by ann at 2010-02-22 13:48 x
ロビンさん・・私と重なるなんて言ってくださってありがとう!
私はなかなかそうはいかないです・・ただ理想を追っかけているわけでないけれど、こういう現代の日本で家族の中の一人ひとりの役割がある程度均衡が保てるように考える人が家庭にいると全然違うなあと思うのです。最近は皆なるべく大変なことを避けて通る人が増えていて、自分はそうなりたくない、と感じてはいます・・
感想にいつもいつも励まされます!
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