人気ブログランキング | 話題のタグを見る

アンのように その17 見舞いの客

小説を書いています。

かけがえのない日本の片隅から

アンのように  その17 見舞いの客

病人を持っていると様々な見舞いの言葉や訪問を受けるが、その見舞いの言葉に励まされたり、時には傷つくこともあったりするようである。

正一郎は病気見舞いを大変喜ぶ。

特に自分の兄弟姉妹を始めとする肉親との会話を心から楽しむ姿が 恵子が嫁いでからよくみられた。

妻に先立たれ、心を打ち割って話す相手はやはり兄弟姉妹であろう。

4人兄弟の次男で芋妹が一人あった。

その子どもたち、つまり正一郎の甥 姪も 伯父としての正一郎を慕っていた。

この関係は恵子にはほほえましく、また羨ましいものだった。

間もなく手術というある日、妹とその娘の二人で入院中の病床を見舞ってくれた。

偶然同じ時間に病室を訪れた恵子がカーテン越しに声をかけようとすると、和やかな談笑の声が聞こえた。

一瞬ためらいはしたが、その妹親子には親しみを感じていたので、そのまま入室した。

正一郎はいきなり不機嫌な声で言った。

「今日は来ないのかと、思ったよ。克子たちは早くからきてくれたんだ。」

克子の娘は素直な優しい大学生だった。

「伯父さん元気そうで 安心してたところよ。」

と、あっさり恵子の側にたってくれたので、その場は和やかな空気に変わった。

恵子も明るく

「克子叔母様、わざわざお越しくださってありがとうございます。まだお時間ありますか?」

「ええ、今日はゆっくりできます。恵子さんいつも兄のお世話をありがとうございます。」

克子は丁寧に頭を下げた。

それを見ながら少しばつの悪そうな顔をして

「帰りに何か美味しいものを食べて行きなさい。」

と、正一郎はすすめていた。

その空気に恵子はほっとする思いがあった。

つづく
アンのように その17 見舞いの客_c0155326_223992.jpg


絵は「ひげじい脳梗塞からの軌跡」より拝借しています。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
応援クリックに感謝します

これまでの作品はこちらから「アンのように生きるインドにて」

小夏庵もよろしく。

by akageno-ann | 2010-02-25 11:54 | 小説 | Trackback | Comments(4)

Commented by panipopo at 2010-02-26 06:27 x
正一郎さん、どうしてそんな言い方をしたんでしょう!?
気質が外国人の私にはさっぱり心の機微が読めないです^-^;
やはりこれは日本人特有のものなのかしら?って思います。
私が恵子さんだったら、ムっとして出て行くなって思っちゃいました。爆!
でもお義父さんだからガマンしなくてはいけないでしょうか?笑
血がつながった関係は、血のつながらない関係よりも強いということなのかなって考えてます。
でも、正一郎さんも言った後で後悔してますね^m^ 照れ隠しに言ったのかなとは思いますが^-^
Commented by flyrobin at 2010-02-26 21:19
日頃顔をあわせない兄弟姉妹よりも身近な存在になっている、血縁関係のない恵子に対して甘えが出るのでしょうねぇ(苦笑)。
恵子もそういった舅の気性をよくわきまえている所が舅との同居を通して培われた所以でしょうか。。
結婚は、当人同士だけの事柄ではなく、あくまでも家と家のことなんだな。。ということを、こういう日本の家庭の在り方や関わりの中で感じずにはいられませんね。「嫁ぐ」とはどういうことなのかを考えさせられます。
Commented by ann at 2010-03-01 19:18 x
ぱにぽぽちゃん、フランスのお義父様の場合そんな言い方は
ないですよね・・日本のちょっと古い考え方が残っているのを
私もいろいろなところで垣間見ることがあります。
血が繋がっていないことで、遠慮がかえってない場合があることも不思議なんですよね・・
Commented by ann at 2010-03-01 19:21 x
ロビンちゃん、甘え・・その通りですね
やはり毎日一緒というのは甘えの何者でもないと
思います。培われる精神というのはどんな場合も
ありますね・・日本の家庭の形は見直されるべき時代に
はいっています。
自分勝手でないそんな精神が必要だと感じています。
いつもありがとう!
名前
URL
削除用パスワード