アンのように その25
小説を書いています。
かけがえのない日本の片隅から
アンのように その25 白い花たち
堀田家の長女沙耶は 書籍出版業の事務系の派遣社員の面接を受けていた。
そして5月の半ばに意外な派遣場所が決まった。
それは書籍出版を主に展開する企業が実は老人のためのケアハウスも経営していて、その受付事務を言い渡されたのだ。
その結果を聞いて、沙耶の母親の恵子が驚いた。
「沙耶ちゃん、こういうお話は最初からあったの?」
「ううん・・知らなかったの。でも私 おじいちゃんの病気のことやお母さんが病気から回復したことは話したから、それでかも・・良かったわ・・決まって。」
沙耶の屈託のないその応えに恵子は敢えて感想を述べるたい気持ちを押し留めたが、沙耶の感覚が家族の為になろうという思いが強すぎるような気がしてならなかった。
娘が自分の心と寄り添って生きようとしてくれていることは、とても有り難かったが、まだ二十代前半の彼女に何か重い家族の足かせのようなものを履かせたくはなかったのだ。
だが、沙耶本人の純粋な気持ちを尊いと想わざるを得なかった。
この就職難でどんな職種でも自分の役に立つことをしたい、と言っていた沙耶の健気さは純粋無垢な白い花が凛と咲くようなイメージがあって、感動すると共に、不安にもなった恵子の心があった。
「沙耶ちゃん、頑張るのは素敵なことよ。でもあまり凝り固まらずに、少しでも広い世界をみてね。」
などと、つい抽象的なことを言って終わってしまったことも悔いていた。
しかしどんな職種でもお金を稼ぐということがどれほど大変なことかだけは知らせたかった。
その採用が決まった書店の介護施設はネットで検索した結果 比較的近隣にもあって、有り難いことなのかもしれないと・・も感じていた。
何も知らずに新しい職種に入って行こうとする我が子を もうそこまできたら、何も手伝ってはやれないのだ、と健気な沙耶を案じながら、一抹の寂しさも感じる恵子がいた。
プラムの花をみつけて・・
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これまでの作品はこちらから→「アンのように生きるインドにて」
by akageno-ann | 2010-03-29 00:13 | 小説 | Trackback | Comments(6)
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at 2010-03-31 06:19
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at 2010-04-02 05:45
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at 2010-04-02 21:12
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at 2010-04-03 08:49
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at 2010-04-03 09:34
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at 2010-04-04 00:20
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