アンのように生きる・・・(老育)

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かけがえのない日本の片隅からの発信をライフワークとして、今は老いていくにも楽しい時間を作り出すことを考えています。

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天国へ旅立つ犬

小説を書いています。

「かけがえのない日本の片隅から」part2
第3章 人と犬の関係 その8 天国へ旅立つ犬
由紀子はこの土地に移り住んで二年が過ぎようとしていた。

最初の一年は仕事で往復しているだけで、ここでの家庭生活をさして楽しめるように思えなかった。

子どももいないので、同年代の女性と親しくなることもなく、職場や学生時代の友人と食事したり旅行したりすることを楽しみとしていた。

夫は夜勤のある仕事なので、すれ違うことも多く、しかしそれもまた生活上は良い距離になっていて一緒にいるときは互いに労わりあう心も深くあった。

だが、チャチャや今度引き取った、トトと一緒に散歩することで、随分と犬を通した友達がができた。おどろいたことにはここに長く住む若い人々の中には子どものいない人も多くて、犬のいる生活を楽しんでいるようだった。

そんな中で一つだけ大きな哀しい出来事があった。

コーギー犬のコウちゃんの死に遭遇したことだ。

少し足の短いコーギーは顔は柴系で可愛らしく穏やかな性格のようで、チャチャとも随分親しかった。
コウちゃんのお母さんは年配の人だったが、息子さんがいて結婚したてのようだった。

彼はコウちゃんをことのほか可愛がりよく散歩していた。

ある日、公園の東屋であまりに長い時間佇んでいるので、由紀子は声をかけた。

「コウちゃんどうかしたの?」

そんな風に親しく話をするようになっていたのだ。

「癌になってしまったんです。」

由紀子より少し若いその若者は小さな声でそういった。

「え?それはまたなんということなの・・」

由紀子は言葉を失った。まだ若いコウちゃんがそのような病に冒されているとは思いもよらないことだった。

「今、抗がん剤を打ってはいますが、気休めなんです。

こうして随分歩くのが大変になっているんですよ。

薬を打ったあとはやはり苦しそうで、ぐったりしてますし、様子を見ながら看取ってやらねばならないと覚悟はしてます。しかし、なんでこんなことになるのか、わからない。母もがっくりしてるんですよ。」

彼はそう言って、肩を落とした。

由紀子はまだ犬を飼いはじめたばかりで、犬の死というものは全く遠い話だったのだ。

犬は亡くなると虹の橋を渡り、そこから天国に行けるのだ、という物語を読んだことがある程度で、家族として愛おしく思っていたものの死を覚悟している様子にふいに胸を衝かれた。

確かに、コウちゃんの腰は重くなり、前よりも歩みが遅くなっていた。

コーギーはもともとがゆっくり歩くので発見が遅れたのだという。

しかし、小さな体は病魔に侵されるのも早く、病気発覚から二ヶ月で癌は進行してしまっていたのだという。


最後の日までしっかりと面倒をみてやりたい、というその家族に、由紀子は感動した。


あまりかける言葉も見つからず、それからしばらくは散歩中も遠巻きに挨拶するだけだったが、コウちゃんの最後に近くなった時期は乳母車に乗せて、家族が散歩していた。

そしてある雨の夕刻、黒塗りのワゴン車がその家の前に止まり、小さな柩が運び込まれていた。

傘をさして偶然通りかかろうとした由紀子だったが、その異変に気づき、立ち止まると、家族と犬友だちのニ、三人が佇んで手を併せていた。

由紀子もすぐに事情を察してその柩の前に用意された祭壇に向かって手を併せた。


皆黙っていたが、静かに降る雨の音にかき消されるように、小さな嗚咽がそこに聞こえた。

                                   この章 終わる


登場人物 出来事は架空の物語です。次回は第4章 終章に入ります。
いつもご声援ありがとうございます。
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この顔に癒されています。9月だけのダッキーのブログは→We love Ducky

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ぱにぽぽちゃんの素敵なレストランとお菓子のお店は
10月10日に茨城県のつくば市にオープンしました。

その開店のお店の様子を素晴らしいブログの記事にしてくださったブログの
友人がいらっしゃいます。

是非ご覧になってください。→tutoさんのつぶろぐ
そしてこちらのブログもコラボしてアップしてくださってます。まねきねこさんのブログ
写真を楽しみにご覧くださいね!

そして近くにいらっしゃる機会のある方は寄ってみてください。

私も早く伺いたいと思っているところなんです。
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Commented by akkunne at 2010-10-12 19:10
お今晩はー
何時も物語を書くのは大変なのに凄いと何時も
思うあっくんですよーこれからも頑張ってくらさいねー
ポチ君ですよー
Commented by CHIL at 2010-10-12 23:02 x
犬にも癌があるのですね。
動物の死は最後の言葉を聞けない分、本当に心が痛みます。
Commented by marimari at 2010-10-13 00:30 x
ワンちゃんとのお別れは とても辛いですね。
病気がわかって辛い様子を見ても
最後の最後まで
目をそらさずに面倒みなくっちゃですもんね。
お別れ、何年経ってもやっぱり辛いですね・・
Commented by kinnnikumans at 2010-10-13 00:30
annさんこんばんは。
犬も人と同じように生きているのですね。じーん。
annさんの綴る文、とてもあたたかいです。
乳母車にのせて・・・
家族の温かさが伝わってきます。
せつなくなってきました。
最終章も是非読ませて下さい。

応援は元気よく(^^)/ ポチ☆
Commented by mahos-table at 2010-10-13 06:45
我が家も犬を飼っているので
とても人ごととは思えません。。。。
今を大切にしないといけませんね。

Commented by ann at 2010-10-13 21:45 x
akkuneさん、忙しい中いらしてくださり
いつもどうもありがとう!北海道の自然にいつも癒されてます。
Commented by ann at 2010-10-13 21:47 x
CHILちゃん、そうなの最近多いのよ。しこりができてわかる場合もあるようなの・・本当に辛いことだわ・・
Commented by ann at 2010-10-13 21:51 x
marimaeriちゃん、動物はしゃべらないから余計に哀しい・・
じっと耐えるしね。そして呆けもあるからそういうときは本当に心してみてやらないとならないし、それが飼い主としての責任だものね・・
Commented by ann at 2010-10-13 21:53 x
ジャックさん、乳母車に乗せての姿は犬も猫も見たことがあるのです。本当に頭が下がります。犬との別れを書くのは辛いのだけれど、飼うということは最後まで・・という覚悟は必要だと思うのです。遊びに来てくださってほんと嬉しい・・ありがとう!
Commented by ann at 2010-10-13 21:55 x
mahoさん、私も三匹目の今の小夏と過しながらこれまでの犬との暮らし方に反省する点もあるのですが、そうおっしゃるとおり
今を大事に・・という感じ・・それですね!
Commented by chanmie526 at 2010-10-13 22:11
こんばんは(*^。^*)
ぱにぽぽちゃんの素敵なレストランとお菓子のお店
先日 伺っていたお店  すてきですね(*^。^*)
リンク先も拝見し ステキなレポを共有しました
「ann部長」の交友関係の広さと深さと
そして いつもの「優しさ」を感じる記事でした!
 私からも「おめでとうございます!」
Commented by ann at 2010-10-13 22:16 x
ま!ミンミン師匠・・今伺ってたところですよ・・
ぱにちゃんのお店行きませんか?
ここにいるのが歯がゆい感じです・・笑
フランさん tutoさん、まりまりさんのお陰で
とてもよくわかり・・見てくださって本当に
ありがとうございます!
by akageno-ann | 2010-10-11 23:56 | 小説 | Trackback | Comments(12)