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no.9 愛と哀しみの狭間

小説「かけがえのない日本の片隅から」第3部です。
ご高覧に感謝いたします。
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LIVE 第3章 no.9 愛と哀しみの狭間

悦子の姉 佐藤牧子が脳内出血で倒れてリハビリを始めて6カ月が過ぎた。
始めの頃の皆が常軌を逸したような動きは少しずつ諦めるという心情と共に冷静さを取り戻していた。
特に牧子の姑みち子はこの牧子の体が元に戻るならばどんなに費用がかかろうとまたどんなに遠い病院でも自分が付き添って連れて行くつもりがあった。

そのくらいの財力は夫と共に盛りたててきた印刷会社の隆盛のお陰でなんとかなった。
もちろん家族にしっかりと保険も入っていたので、治療費は充分に出るはずだ。

しかし現実にはそのほかの家族が普通の暮らしを続けていくことも優先に考えていくべき時期に入ってきた。

特に孫の直子の生活をしっかりと支えなくてはならないと思っていた。
まだ直子は音大付属の高校の三年生だった。

母親が重篤な病に陥ったときが二年生の文化祭前で、そのときに弾くピアノコンサートのためのドレスを調達に行った日に牧子の脳の血管が切れたのであった。

そのことを胸に重く捉えながらも直子は健気にピアノと学業を頑張って続けていた。

時には傍目にはなんとマイペースな子供と思われていたかもしれないが、直子は母の想いがわかっていたのだ。

周りの賛成でない気持ちを感じながらも直子の好きな道 直子の才能を少しでも生かしてやりたいと言う心でここまで育ててきたことを一番肌で感じていたのは直子だったのだ。

幸いにピアノはかなりな成績を修めることができ、最後の文化祭でも独奏者に選ばれていた。
衣装のことなど母はどんなにか楽しんで選んでくれたであろう・・と思うと、直子もふと寂しさがあったが、自分で全てやっていこう、という独立心も生まれ始めていた。

                                   つづく

by akageno-ann | 2011-02-15 11:13 | 小説 | Trackback | Comments(2)

Commented by akageno-ann at 2011-02-16 07:21
承認制にさせていただいてます・・どうぞよろしく!
Commented at 2011-02-16 07:44
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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