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no.10 永遠に続いていくこと

小説「かけがえのない日本の片隅から」第3部です。
ご高覧に感謝いたします。
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LIVE 第3章 no.10 永遠に続いていくこと

家族の一人が病に倒れた時に、それがもしも自分であったら・・と想像できると、不思議と自然に手を貸すことができるらしい。

病が自分の心の中に全く存在していない場合、無理に手を差し延べようとして苦しむことはない。
ただ、その時に関わっている人たちのことを想像することは誰にもできるのだ、と悦子は思っていた。

悦子の両親は健康体であったから、年をとっているとはいえ、病気になった娘牧子の気持ちが本当にはわかっていなかった。

どう助けていけばいいのかも、わからないままだった。

時として真剣に介護する嫁ぎ先の姑みち子の姿に

「病院に任せておけばいいのですよ。」

と、言い放ち、周囲のものをびっくりさせることがあった。

「だって牧子はもう元にはもどらない」

そうかもしれない、そうかもしれないが、奇跡が起こる可能性はゼロではない、そう思いたい人々の心が瞬時にへし折れて行く音が聞こえるようであった。

だからといって、両親の考えが間違っているのではない。

ただ果てしない看病や介護に皆ひとすじの光明を持ちたいだけだった。

悦子が

「お母さん、お母さんがどう思おうとそれはお母さんの自由だけど、一般的にお姉ちゃんの回復をみな少しでも待っているわけだから、それをぺちゃんこにするのだけは辞めてほしい。」

そう悦子が嘆願しても

「実の親は気休めを考えたくないの。どうみたって牧子は普通には戻ってこられない。
医学の現場にいる貴方は、それを一番わかっているはずよ。」

この言い争いを何度してきたことか、その度に周りのものは一喜一憂していることを母は知る由もなかった。

被害者的な意識で、この現状からなんとか這い上がって行かねば一族が不幸になる、と
思えてしかたなかったのだ。

by akageno-ann | 2011-02-16 16:24 | 小説 | Trackback | Comments(0)

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