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no.12 一杯のコーヒーから

小説をつづけています。

かけがえのない日本の片隅から
第三部 LIVE 第4章 no.12 一杯のコーヒーから

あつ子と悦子は高校時代に机をわかちあって一緒に学んだ頃からの友情が続いていた。

もちろん長い間に心の行き違いもあったが、いつも自然に二人は下の仲良しに戻っていた。
おそらく心のセンスが似ているのだろう。

あつ子は幸せな結婚をしたが、常の姑と一緒の生活に次第に疲れていたのだった。

どんなに幸せな暮らしにも暗い影はある。そのことをつくづくと感じる日々があった。

だが年月は次第に頑なになった心を氷解するだけのエネルギーが沸くものだともこの頃感じている。

悦子がこれから新しい幸せを掴もうとしているときに、一瞬たりとも嫉妬を覚えたことに、あつ子自身がショックを受けていた。

しかし、悦子はいつもの通りの優しさであつ子を思いやり、自分にある到らなさを感じ取っていた。
長い看護士としての学びは人の心を読み取ることは敏感だったかもしれなかった。

悦子はあつ子が少し疲れているのも職業柄感じ取っていた。

あれだけのペンションの全ての仕事に心を配ることなど、自分には到底できる業ではなかった。

「コーヒーもこうしていい空気の中でゆったりと飲めると本当の美味しさが伝わるわ。」

「私もよ、いつもバタバタしていて、自分でコーヒーをついでも少しも味わうことをしてなかったわ。」

悦子とあつ子はそれからは自然や気候の話に終始した。

何も本題を突き詰める必要はなかった・・

悦子は向井のことは少しじっくりと考えてからメールを返そうと思った。

いつも性急に返信したりその返事を待ったりする自分の愚かさを感じていた。

by akageno-ann | 2011-03-08 21:18 | 小説 | Trackback | Comments(3)

Commented at 2011-03-08 22:01 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by higeji-musume at 2011-03-09 22:42
「コーヒーもこうしていい空気の中でゆったりと飲めると本当の美味しさが伝わるわ。」

この一文に、そうなんだな~ととても感慨にふけってしまいました。
何気ないいつものお茶でも、おやつでも、
場所や空気や気持ちだけで味が変わる。

今回の悦子は、忙しい毎日から解き放たれ
山梨の自然の中で、コーヒーの美味しさに気づいた。
これって人の生活の中でリセットする大切な時間ですよね。

私も、気持ちだけでもふっと落ち着かせて飲んだら
いつものお茶もおいしくなるんだろうな・・・と(^^)


悦子の大人の恋愛模様、楽しみにしています☆
Commented by akageno-ann at 2011-03-10 07:45
コメントありがとうございます!
言葉を取り上げていただくととても
力になります・・
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