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カシミール オベロイホテル

旅行社からチャーターしておいてもらったタクシーはきちんとこちらの名前をローマ字で書いて男が二人到着ロビーで待っていたから・・
『あ!!予定通りだ・・インドも大したものだ・・』とそれぞれにほっとしてタクシーに向かった。
1台目に山下家の4人が乗り、2台目に平田家、片山家が乗ることにして先を急ごうとすると
山下家の奥方の文子が血相を変えてこちらに来る。

「ねえ、この運転手たちとんでもないこと言ってます。」

「え?なに?」とのんびり片山翔一郎が近づいて行くと、山下氏は少し厳しい口調で

「ホテルの名前が違うんですよ。オベロイが混んでいるから変わったって言ってるんです。」

「なに言ってるんだ・・そんなはずはないよ。だめだオベロイに行け!」

と、英語で厳命するが、運転手は

「ダメだ。こちらのホテルもファイブスターだ・・心配ない!」と言い張る。

三組の日本人家族は一緒に集まって話し合った。

「これがインドの試練じゃないのかしら?」と文子は言った。

「いやよ、オベロイじゃなくちゃ・・」と平田よう子が顔をしかめた。

「行ってみて、本当に混んでたら、その人の言うとおりにするしかないのじゃない?」
と いう美沙の言葉を受けて平田久雄は

「そうだ、とにかくオベロイに行かせよう。」

と、決定して、運転手に面差しは柔らかいがキッパリと告げた。

「アッチャ ティーケ」 

デリーに来てからここまで何度聞いたかわからないこの極めて軽い相槌

「OK」という承諾の言葉だった。

その軽い響きははじめのうちこそ、面白いと思っていたが、あまりに軽く使うので
次第にその信憑性は薄れ、自分の家のサーバントにはきちんと
「イエス、サー」
「イエス、マダム」を他にならって使うようになっていた。

さて、とにもかくにもそのタクシー2台は怪しげながら、三組の日本人家族を乗せて
オベロイホテルを目指した。
時間は空港についてから1時間が過ぎランチタイムを過ぎてしまっていた。

ほぼ40分ほどで目指すホテルに到着した。
オベロイ系はデリーの住宅のすぐ近くにあって、なかなか重厚で雰囲気の良い
ホテルだったので、安心していたが、入り口からのアプローチのなんと緑の多い
美しい庭園が広がっていて・・三組の家族はそれぞれに

『何が何でもここへ宿泊したい』と決心して車を降りた。

先ほどの男性陣の応戦のあとは夫人3人でホテルのフロントに赴いた。

名前を告げて、本日の予約をしてある旨を伝えると、黒いサリーで身を包んだ美しい
女性スタッフが、にこやかに応対して間もなく戻り、

『お待ちしていました』という感じに、ウエルカムを告げてくれた。

ほっとしながらも、その新人家族は先ほどのタクシーにもどり、
「どういうことなのだ・・・」と詰問するが、彼らはニヤニヤするばかりであった。

それどころかそこでまたチップをよけいに要求する。
「我々は他のホテルに頼まれていただけだ。」といとも簡単に言い訳し、詫びることはない。

これもインドなのだ・・・と諦めて、また新しい処世術を得たような気持ちになった。

タクシーが去った後、先ほどの女性スタッフがホテルの案内をしてくれるという、あまりの美しさ品の良さに感動して、写真撮影を一緒にした。

そしてホテルの広々とした庭の薔薇の咲き誇る庭で皆で記念写真をさっそく撮ってもらった。

全員で勝ち取った、このホテル滞在を祝福するように。

by akageno-ann | 2011-06-16 13:31 | 小説 | Trackback | Comments(3)

Commented by reikopep0510 at 2011-06-17 04:55
こんにちは!ボンベイでの常宿がオベロイでした。もう一つのタージマハルのほうが高級と言われてましたが、私は欧米系のオベロイのほうが安心して過ごせました。タージマハルはハエがロビーに飛んでいたんです。日本人の私達を見て、他の外資の日本人クルーが嬉しそうに、日本人に久しぶりに会えたと喜んで話しかけてきたのを覚えてます。デリーは滞在も短く、思い出も少ないのですが、ボンベイは何泊もできるゆったりとしたスケジュールでした。オベロイ、懐かしいな。
Commented by reikopep0510 at 2011-06-17 05:09
懐かしくて前の記事にもコメント。A社で使っていたロッキードのトライスター、エアインディアが使ってましたよ~。お客さんで移動したとき、エアインディアの機体のドアにA社のシールが!そのシールにむかってフラッシュライトの光を当てて地上係員に機内から合図を送るんです。飛行機の墓場に行ったと思った退役した機種が使われているのにビックリ!インドでの出来事は、今振り返ればかな~り笑える話しばかりだったなと思いました。食べ物では嗜好が合うのか、ここでなら暮らしていけると思った私はどうやら甘かったみたいですね。みんながあたっても、私だけ大丈夫だったんです。。
Commented by ann at 2011-06-17 10:26 x
reikoさん・・・他をよく知らない私は
ここは楽しさいっぱい・・大変さもいっぱい・・・
でも魅惑の国だな・・コメントありがとう!
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