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老育

いつもこの「アンのように生きる・・インドにて」をおよみいただきありがとうございます。
小説は数年前のものを再録させていただいていますが、その後ライフワークとして書き綴っていた
「かけがえのない日本の片隅から」の小説風エッセーが震災以来かけないでおりました。
思いはさらに強いのに、今回の日本の被災の現状のあまりのむごさに、正直どうやって自分も力を出すことができるのか・・非力であることを痛感して、いまだつらい日々を過ごしています。

しかしこの事態収束には多くの時間が必要で、この三か月余りに感じた様々なことから目を背けることなく進んで行きたい、と思っています。

小説「アンのように・・」は友人から再録を希望していただいて、ここにリンクの形でこのまま続けさせていただきます。 →☆「アンのように生きる]

そしてここに・・新たに、日々の思いをつづらせていただきます・・・

かけがえのない日本の片隅から

「老育」
実年齢の10歳は若いといわれる壮年世代の人々の仲間入りをした。
地域の中でもやっと「あなたもそんな年になったの・・」と認められて、
さらに「でもまだまだ若いわよ。頑張って・・」と発破をかけられる日々である。

あと3年で還暦。
かつて還暦はかなりの年配者であった。
私も祖父の還暦を祝う会では「おじいちゃん」の年齢を年寄りの位置に認識していた。

赤いちゃんちゃんこ姿の祖父は土佐のいごっそうたちに囲まれて満面の笑みを浮かべて酒を酌み交わしていた半世紀前を鮮烈に思い出す。

その祖父はそれから20年元気に生きて、心不全で急逝した。

私が在外赴任の夫について行き、三年の無沙汰を詫びて帰国の挨拶をしに行くから、と電話をして一週間目のことだった。

間に合わなかった。

あの還暦のにぎやかな宴会をした2階の床の間に北枕で眠っていた祖父にすがりついたが、その体は冷たく硬くなっていた。

「おじいちゃん。あなたが一番会いたがっていた人が帰ってきましたよ。」

枕元の祖母が落ちついて語るのを聞いて、泣き崩れてしまった私だった。

                                          つづく


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小夏庵にも→☆

by akageno-ann | 2011-06-26 07:53 | 小説 | Trackback | Comments(0)

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