遺されたもの
この二カ月は義父の遺品の整理に時間を費やし、遺作の中で生活をしていた。
膨大な書と南画の作品は改めて掲げてみると見事なものが多いのに驚いた。
そこには努力の跡が感じられた。
しばらく部屋いっぱいに表装された作品をかけて、訪れてくださる方々に見ていただいたら
中にはもらってくださる方もあって、心楽しい思いをさせてもらった。
「大切にします」・・という言葉をいただいて大変感動させていただいた。
嫁いだ最初の正月に 元旦の朝禊をするように義父は一幅の般若心経を綺麗に仕上げていた後姿を思い出す。
元旦の膳の用意をしていた私には驚きで・・・これがこの家のしきたりなのか・・と少々恐れをいだいたことも懐かしい・・
お酒を一滴も呑まない人だったので、常にまじめで書と向かい合っていたようにも感じられた。
それから亡くなる2年前まで大きな作品をよく仕上げていたのだから、30年以上の作品が眠っているわけだ。
個展など開いたら・・・と言う誘いには全く乗らず・・ただひたすらに作品を仕上げ、生徒さんたちに指導する生活・・・
今思うと、地味だが本当の書家だったな・・と
南画は60歳少し前に師に出会い、15年ほど熱心に通っていた。
師が亡くなってからも師の作品を手本に創作していた。
その絵に関しては努力のあとが素人目にもよくわかる。
南画はもともと師の作品をまねることから入るようで、色紙に何枚も何枚も同じ絵を描いては研鑽を積むようであった。
その色紙の良い出来のものを自分で選んで、額にいれていた。
その額もいくつも出てきた。
鳥や魚の生き物や季節の風物・・掛け軸になると中国の故事に則った風景画・・
その傍らに綺麗な小筆の文字が刻まれている・・
義父の師匠がよく・・「あなたはどうも字の方が勝ってしまっている・・」と
絵の研鑽を積むように言われるのだ・・とぼやいていたこともあった。
だが最後の方の作品は見事でしたよ・・・と言ってあげたい・・
by akageno-ann | 2014-10-21 01:53 | エッセ- | Trackback | Comments(3)